私は苦しそうに座っている里依子の額にそっと手をあてた。彼女は上目づかいに私を見たが、そのまま身を動かさなかった。里依子の額は火照るように暖かく、熱があるのだと思われた。私はこれ以上里依子を引きまわしてはいけないと、もう一度考えた。
それに今夜、会社の上司の送別会があると言っていた。その会に彼女がどうしても出席しなければならないのであれば、今日これ以上彼女に無理をさせてはならない。
それでも、その一方で私は里依子といつまでもこうしていたいという誘惑に抗することができなかった。里依子の横で絵を見ながら、葛藤が心を揺さぶるのだ。
出来れば今日は夜まで一緒にいたいと思った。だが彼女の様子を目の当たりにしてそれを言い出すことができなかった。言えば彼女がその選択に苦しむだろう。淋しいを押して今日はこれで打ち切りにしようと私はようやく決心した。するとまた心が鉛のように重くなっていくのをどうすることも出来なかった。
いつの間にか昼時が過ぎていた。私たちは美術館の2階にあるレストランで質素な昼食をとった。
HPのしてんてん
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