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「ちょっとお客さんがありましてな」
御住職は電話に向かって言い訳をしているようだった。
私が足止めしているために違いなかった。
心の中で手を合わせた。
あと日取りさえ決まれば動ける。寺の法要、永代経と重なる日程をどう切り抜けたらいいのか。
「永代経の法要の時は、一般の人は入場を遠慮していただくということでいいですか?」
電話を終えて、すまなさそうな表情の御住職に、一番気にかかっていることを聞いた。
「永代経は誰でも入ってもらってよろしい。」
御住職はこともなげに言った。寺はすべての人に開かれているということだ。
ありがたい。
私の心の障害はこれですべてなくなった。
これで私は、全力で「浄土」と向き合える。
「日取りは、永代経と同時に初めて、そのあと何日でもということにしてはどうかな。」
「では永代経の5月6日から初めて、5月9日までとさせていただいてよろしいですか」
「そうですな」
「ありがとうございます」
私は心から礼を言って合掌した。
しかし後に私はこの自分の行為の奥にある嘘に気付くことになる。御住職の「純粋な方ですな」という言葉とともに。
ともあれ私はこれ以上お邪魔をしてはいけないという思いに駆られて、話を切り上げることにした。
資料だけを御住職に渡して立ちあがった。
「ちょっと待ちなされや」
御住職がそう言い置いて奥に入っていき、すぐに取って返してきた。
短い法話の書かれた浄光寺のカレンダーを渡してくれた。
玄関で靴を履いていると、
「そうそう」と言って御住職はもう一度奥に入って白いタオルをもってきた。
「寺のタオルやがの」
私はそれもいただいて、ようやく玄関を出た。
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