「すみませんな」
御住職がそういって戻ってきた。
私は、テーブルの上に広げたポスターの試案を指さして言った。
「私の絵の世界を奉納してみていただくという意味で、個展ではなく奉納会としたいのですがどうでしょうか。」
「奉納は・・・絵を寺に納めるということですのでな・・・」
「何かいい言葉があるでしょうか」
「そうですな、奉讃でしょうな・・・、ちょっとお待ちなされや」
御住職はそう言ったまま、奥へ立って行った。しばらくして辞書を両手に開いて返ってくる。
「社寺などの仕事につつしんで賛助すること。やはりこれがいいですやろ。」
御住職は開いた辞書の「奉讃」という文字を指さして私に見せた。
私の心に描いている「浄土」のイメージが、奉讃に値するのならありがたいことだ。
「ではその言葉をいただいて、奉讃会(ほうさんえ)とさせていただきます。ありがとうございます。」
私は思わず合掌していた。
すると今度は電話が鳴った。
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