のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

スケール号の冒険14

2008-06-06 | 童話 スケール号の冒険(第3話)

もこりんは博士に答えて、おばあさんの話をし始めた。その話の内容は大体次のような事だった。
 このおばあさんは長い間一人暮らしをしていると言うこと。
 家の窓はいつも古びたカーテンが引かれていていて薄気味悪く、おばあさんはほとんど外に出ることがないと言うこと。
 家も庭も荒れ放題で、子供達はここをお化け屋敷と呼んで怖がって近づかないと言うこと。
 そんなある日、野球をしていた子供達がボールを逃がして、おばあさんの家の庭に入れてしまった。
 子供達がおばあさんに声をかけたが、家の中はシーンと不気味に静まり返って、なんの返事もなかった。
 子供達は仕方なく、こわごわ庭に入ってボールを探したが、雑草がのび放題で、こわれた椅子やバケツなどがあちこちに転がっていて、なかなかボールを見つけることが出来なかった。   
すると、窓のカーテンが少し動いて、まるで魔女のようなおばあさんの顔がのぞいた。
子供達はびっくりしてその場に立ちすくんでしまった。
「この悪ガキども、こんな所で何をしているんだ。」おばあさんがドアを開けて走り出て来た。手には包丁を持っているのだ。
子供達はいっせいに逃げ出した。柵を乗り越え、滑って転んで仰向けになって、それでも必死で命からがら逃げ出して来た。
路地の角まで逃げて、もう追っかけて来ないと分かると、子供達はやっと安心して、おばあさんの家の庭に入ったボールのことを思い出した。
しばらくして子供達はおそるおそる戻って行った。庭にはもうおばあさんはいなかった。家の中に入って行ったんだ。
子供達はそっと柵のすきまから庭の中をのぞいた。
 「ひえーっ」一人の子供が声を上げて、震える手で庭の向こうを指さした。見るとそこには、子供達のボールが真っ二つに切り裂かれて、崩れかけた椅子の上に置かれていたのだ。
子供達は自分の後ろに魔女が包丁を持って立っているような気がして、冷や汗を流し、「うわー」と声を上げて一目散に逃げ出した。
それから子供達の間では、おばあさんは魔女で、子供達を捕らえては包丁で体をきざんで食べているといううわさが広まったのだ。


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