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その橋は『烏柵舞橋』という名が付いており、同じ名前のバスストップもその橋のたもとにあった。
私はそれをどう読むのか分からなかった。誰か人が通りかかったら訊ねてみようと一瞬思ったが、口をきくのが疎ましく、会話が辛い事のように思えて結局その呼び名を知らぬまま佇んでいた。
私は橋の中央の欄干にもたれて川の流れを上から眺めた。その流れをさらに上流へと追って行けば、その視野に尽きる彼方の山並に今太陽が土色にほてって沈むところであった。そしてそこから流れ来る川の面に最後の光線を反映させていた。
私は自然に自分の視線を川の流れに任せていた。流れと共に橋の袂まで来た視線はさらに下流を求めて、橋を横切り私を向い側の欄干に連れて行き、しばらくその川の細かに輝く波頭を眺めていた。キラキラと踊る光が私の心を魅了してしばらく私は自分を忘れていた。
私はここで引き返そうと思った。ちょうど最終のバスがまだ残っていた。私はそれに乗って千歳のホテルまで行こうと考えた。
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