ノートの中の二人のやり取りがそんな風に続くうちに、男の方が女性の気持ちを受けて示すいたわりの気持ちが、相変わらずの文面の中に表れはじめた。そして女性の方も、男の放埓さの中にある確かなものを感じたのだろう。彼の明朗闊達な文面にすがるような様相を見せはじめ、その度に彼女の文章は明るくなっていった。
二人のやり取りが、他の学生の雑文の合間にうずもれるようになりながら細々と続けられた。やがて、
「私はこのノートのおかげで明るくなり、この店に来ることが大変好きになってしまった。」という文章があって、それを最後に女性はノートから姿を消してしまった。
私は出された量のある飯を、先客の学生のようにノートを読み続けながら口に運んだ。何冊かのノートを手にし、食事を終えると私は店を出た。その時ちょうど私と入れ替わりに、学生風の男女が身を寄せ合うようにして店に入って行った。
私は夜の札幌の街を歩いて見ようと思っていたのだが、思い直して、道路の向い側にある北大のキャンパスに誘われるように足を向けた。
HPのしてんてん
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