不等辺三角錐状に割れたヒスイ原石でペンダントを作って欲しいと頼まれた。
石にも天地と前、後ろはあると教えてくれたのは若い頃にバイトしていた植木屋の親方で、これが分別できないと庭石は据えられないし、私のヒスイ加工も最初にするのはこの見極め。
原石の持つ姿を活かして、身に付けた時にピッタリするように不要な部分を削り、孔を開ける。
今回は注文主の意向で研磨はせず、削った部分と孔周囲だけ原石表面に合わせて研磨。紐孔は凹んだ部分を狙って開けて成形したが、このことで何時でも正面を向いた状態にできる訳で、ただ孔を開けりゃいいというもんじゃないのですわ。
野趣溢れる縄文前期に倣った現代版大珠のつもり。
人の手が加わっているのに、人為を感じさせない自然物のように感じられたら幸いで、これぞ芭蕉の言う処の造化。