日替わりで「ヒトと翡翠の物語」が繰り広げられた「糸魚川翡翠展2021」が終わって、ほっとしたと同時に淋しくもある。
準備に2か月を要し、在京期間11日の個展の撤収・宅急便を送り返してから帰宅。祭りの後片付けは余韻に浸る期間でもありますナ。
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爺ちゃんが海でひろったヒスイでつくった指輪をしてきてくれた幼馴染。先輩や同級生、考古学の先生も激励にきてくれた。ヒスイがつなぐヒトの縁。
ヒスイのペンダントを購入して個展会場をあとにしたはずの男性が再び個展会場に現れ、「スイカを入れても新幹線の切符がどういう訳か買えず、購入したペンダントを触っていたら展示されていた大麻飾りと勾玉のコラボ作品が頭に浮かんで、あれをどうしても買えという啓示だと思ったので」とわざわざ引き返して購入してくれた。大阪の大きな病院の心臓外科部長さんだそうだが、心臓の手術をうけるならこんな人に手術して欲しい(笑)
あぶら汗を流しながら高価な作品をじっと見入り、涙ぐみながら購入を決意した女性の姿をみた時は「俺なんかの作品をそこまでして惚れこむなんて・・・無理しないでよ」と、いたたまれなくなった。
会場が気持ちいいと何時間も滞在した女性もいたが、私の作品がプロデューサーの天川彩さんが育んだ場を得て、喧々諤々とセッションしながら展示したのだから、普段とはちがう輝きをしていたし、神域のような厳かで居心地のいい空気感を醸し出していたと、他のお客さんも言っていたし、私もそう感じた。
希少鉱物のヒスイが、ヒトを介してモノに生まれ変わり、ヒトと時、場を得て創り上げた空間、すなわち「糸魚川翡翠展2021」は「ヒトと翡翠の物語」を共有するための場であった。
私と主催者、来場者のみなさんととヒスイの物語、それらが紡ぎ出した「ヒトと翡翠の物語」の数々は宝物。
糸魚川ツアーの話も出ているし、来年の個展の話も出ているのが幸い。
ヒスイの物売りから物語の発信への転換が、ぬなかわヒスイ工房の主旨だし、私のライフワーク。
フォッサマグナの恩恵を受けた人々が長者ヶ原遺跡の縄文人だし、それはヌナカワ姫伝説にも繋がっている。
バラバラの点を線で繋いで面として考える。面はチカラとなるし、面は文化と言え、物語として伝えることができる。
糸魚川の外からジワジワとこの流れを広げ、やがて糸魚川でも当たり前になってくれたらと切に願う。