ヒスイ加工の中でもっとも工業製品化されているのは、丸玉加工機やバレル研磨機で加工できる丸玉ブレスレットだろう。
バレル研磨だと機械にヒスイを放り込んでおくだけで勝手にが艶がついてくれるが、微細な凸凹が残っているためか、私にはその光沢は研磨剤の「光の被膜」として感じられ、深みがないように思える。
手成形・研磨・孔の傷取り研磨で真ん丸にできるようになった丸玉。三脚に固定したカメラが倒れて単焦点レンズに衝撃をうけて以来、ピントが甘くなってしまった・・・個展期間中に修理に出しますわ。
きちんと手研磨した上で最終仕上げでバレル研磨をすれば光沢に磨きがかかるが、不均一なヒスイで丸玉を手研磨すると綺麗な球体になってくれないのが問題なのだ。
かって異業種の巨匠からヒスイの丸玉を注文され、バレル研磨機で光沢を出した量産品と私が手作りした丸玉を比較して見せ、どっちがいいですか?と聞いたら、巨匠は一瞥しただけで私の手作り品の方が品格があって佳いと評価した。お茶人の審美眼を持つ人は、作品の作り方まで見抜いてしまうから恐ろしい。
これまで量産品には値段の上で太刀打ちできないからと注文がないと作らなかった丸玉やナツメ玉だが、今年の個展では用意することにした。
昨年の個展では、私の作品は市販品とはなにかが違うと、高価な勾玉を買ってくださるお客様が多かったのだ。つまりはお茶人の審美眼を持つ方々。
緑・白・青・紫・黒と糸魚川ヒスイの色見本のようなブレスレット。
一般的な丸玉の孔は、超音波穿孔機で孔あけして拡幅しただけの直径1㎜前後のサイズで、孔内部はギザギザのままなのでブレスレットを連結するオペロンゴムも切れやすいだろうし、傷が残っていたらヒスイだってかわいそうだ。
私のは孔内部の傷取りと縁を面取りをした、かなり太い2㎜の孔にしている。
こちらは孔直径3㎜のナツメ玉。大麻飾り職人とコラボする機会が増えてきたし、お客さんが木綿紐、麻紐、革紐、チェーンと好みでカスタマイズできる工夫だ。
それにきちんと傷取りと縁の面取り処理をした孔をのぞくと、孔の向こうに吸い込まれる感じがするから不思議。穿孔傷がギザギザ残っている孔を覗いても、こんな感じはしないのですヨ。
工房に籠ること1週間、ついに手研磨でも綺麗な球体をつくるコツを会得できた。自分で言うのもなんだがブドウのような瑞々しい質感で、手研磨に拘っている大先輩のN名人に近づたかな?
また一般的に丸玉ブレスレットは、サイズと色をそろえるのだが、あえてバラバラのブレスレットを作った。そもそも均質さを求めるのはなぜだ?と、私の縄文センサーが抵抗する。
野菜や果物もサイズや姿のよしあしで売らずに、外国のように量り売りすれば農家だって楽でしょうに・・・。
「くじらびと」でも、ラマレラの人々は鯨のどこの部分が旨いということはなく、どこでも旨いと言っていた。部位別の味をとやかく言ってしまうと分配が不公平になる知恵もあるのかも知れないけども、自然の恵みをありがたく頂くという姿が好ましかった。
それに単結晶鉱物の宝石と違い、ヒスイは多結晶鉱物だからバラバラであることこそヒスイらしさではないか?
日頃は辛口の同業者に見せたら「これバレルなしの手研磨なの?真ん丸じゃん!どうやって研磨したの!?」と驚かれて、疲れが吹き飛んだ。ちょっとは上達したボクで~す( ´艸`)