二風谷アイヌのKさんからアオトラをわけてもらった。アオトラはヌカビラ川に産出するシマ模様の緑色岩の通称で、北海道・北東北の縄文遺跡で磨製石器がつくられてきた石。
ちなみにKさんはアイヌ文化研究家でアイヌ初の国会議員となった萱野茂さんの従弟で、6年前の初対面の時など、うちで二週間ほどバイトしないか?といわれて面食らったが、萱野さんのご子息と酒席を設けてくれたり、アオトラ拾いに連れていってくれたりと、叔父のように思える優しい方。民映研のアイヌ文化の記録映画を観なおすと、若き日のKさんも写っていて和む。
最初に横ジマ模様の勾玉をつくってみたら、濃い緑色の部分がやわらかく、黄緑色の部分がかたいために滑らかな曲線にするのは困難ということが判明。
それならとやわらかい部分を掘り窪めて強調した石笛をつくったら、いい味わいになった。
その次は縦ジマで小型の磨製石器ペンダントとヤジリ形ペンダントをつくったらシンメトリックに仕上がった。
ヤジリ形や磨製石器のミニチュアのような石製装身具が出土することがあるが、かたいモノには霊力が宿る、鋭いモノは魔除けになるという民俗例があるので魔除けのペンダントであったのか?ミニチュアでなくとも実用のヤジリや磨製石器が土壙墓から出土することもあり、愛用品を死者と共にあの世に送ったものか、それとも魔除けの意味合いであったのか。ついでながらアイヌの民俗例では、あの世にモノを送る時はわざと傷つけたり壊したりする。
出土品も縦ジマ方向に原石を磨り切って磨製石器をつくっているようだ。アオトラは縦ジマ方向で加工せよという学び。横ジマの石斧を実際につかうと折れやすいだろう。
弱い部分と強い部分の組合せの妙で、加工しやすくも強靭な石斧をつくっていた縄文人の知恵に畏敬の念を抱く。