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「十五少年漂流記」の実録版「十六漁師漂流記」が面白い・・・「無人島に生きる十六人」

2022年02月01日 07時24分36秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画

酒好きなら大仕事を終えたら秘蔵の一本を開けて祝杯をあげるだろうが、断酒20年超えの私は秘蔵の一冊を再読(笑)

無人島に生きる十六人」は、明治期にミッドウェー近海で難破して、5ケ月間の無人島サバイバルから生還した日本人漁師たちの実話が昭和初期に出版され、いつしか埋もれてしまった児童文学。すなわち「十五少年漂流記」の向こうを張った実録「十六漁師漂流記」が本作である。

古今東西の漂流記収集家でもある作家の椎名誠さんが本作を発見し、自身が編集長をつとめる「本の雑誌」で絶賛したことが縁で20年ほど前に装いも新たに再出版され、現在まで出版され続けるロングセラーとなっている。
「本の雑誌」は、椎名誠さんの高校時代からの仲間たちが「この本のここが面白い!」という手書きのミニコミ誌からスタートした書評誌。不定期刊行、季刊、月刊と成長し続けて今も売られている。この雑誌の事務員だった群ようこさんを始め、常連投稿者の中からもメジャー作家が排出した。いわば読書好きの梁山泊。私も20代の頃は定期購読していた。
 
「本の雑誌」のロゴマーク。最初は居酒屋で酒を飲みながらの読書談義から始まり、やがて「本の雑誌」を出版するための「本の雑誌社」まで作ってしまった。社章デザイン、表紙、挿絵は椎名さんの高校の同級生だった沢野ひとしさん。沢野さんのつぶやきが書かれたイラストも人気となった。懐かしい。
 
明治の日本人は楽観的な冒険主義者であったと司馬遼太郎は書いているが、その時代の冒険譚を子供向けに平明な文章で書いていることと、表紙絵と挿絵を担当しているカミガキヒロフミさんのシンプルで伸びやかな画風と相まって、全編がおおらかで明るいトーンに満ちている。
 
明治期の遠洋漁船はスクーナー型帆船だから、漁師は大工仕事や繕い物なんでも器用にこなせたので、樹が1本も生えておらず、水もない小さな無人島でサバイバルできた。
 
生きるために必要な物は廃材や漂流物で自作するのは無論のこと、「ウミガメ牧場」まで作ってしまう生活力に脱帽する。
 
サバイバル開始5ケ月目に偶然に通りがかった日本船に救助された時点では、向こう1~2年の自給自足が見込めるまでになっていたというから驚く他ない。
 
摩擦式発火法の知識もないはずなのに、文章から察するに「火溝式発火法」まで成功させている知恵と体力、団結力を武器として、各自が得意な仕事を見つけては嬉々と取り組む様子が実に愉しそうなのだ。
 
海面下40mまで透けて見えたという、微に入り細に入りるサンゴ礁の海の描写はお伽噺の世界。最初は食料にするつもりだったアザラシの群れと「親友」になり、漁師の姿をみつけたアザラシが遊んで欲しいと寄ってきて、一緒に泳ぐようになるなど微笑ましいエピソードが満載。
 
挿絵もかわいいので幼児への読み聞かせにもいい本。くたびれ気味のオジサン、オバサンにとっては、元気が出る読む処方箋。
 
読んでみたい方、ネット通販ではなく、地元の本屋さんで注文して、地域にお金をまわしてあげてくださ~い!
 
 
 

 



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