西日本で最も高い霊峰石鎚山の山腹には一風変わったお風呂があると聞いたので、それを自分の目で確かめるべく実際に行ってみることにしました。
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伊予西条駅前から石鎚山ロープウェイ方面の路線バスに乗車。日曜だというのに客は私の他、地元の爺さん婆さんがそれぞれひとりずつ。
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バスは途中、黒瀬湖(ダム湖)の湖畔をぐるっと周ります。見晴らしが良くて気持ちよい車窓です。
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車窓からダム湖が消えるあたりになると、道は俄然狭隘になり、車一台通るのがやっとの幅員に。そんな狭い道をバスは物怖じせずにどんどん走って山を登っていきます。
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ロープウェイ前バス停で下車。3月下旬の四国だというのに、彼方に聳える石鎚山の頂はまだ雪に覆われているではありませんか。まだ登山シーズンでもなく、かといってスキー場が開いているわけでもないため、辺りはひっそりと静まりかえり、どうしようもなく寂しい空気が一帯を覆っています。
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ロープウェイ乗り場の真下の道路にはアーチが掛けられており、その脇に口を開けて構えているのが今回訪問する京屋旅館です。道路に面した店舗部分はシャッターが閉まっているので営業しているのかどうか不安でしたが…
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奥へ進んでお土産屋兼食堂の方を覗いてみると、店内ではご主人と思しき男性とその息子さんらしき男の子が談笑中でした。入浴をお願いすると笑顔でどうぞどうぞと迎えてくださいました。
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館内はまるで東北の山奥の湯治宿を髣髴とさせるような、鄙びて草臥れた雰囲気。お手洗いを借りたらボットン便所でした。経験則から言えば、こういう施設のお風呂って大抵記憶に残るような特徴的なお湯だったりするんですよね。
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脱衣所です。浴室入口のドア上には天狗の絵が。修験道の信仰の山たる石鎚山の最高部は天狗岳ですから、その天狗に因んでいるのかしら。先客ゼロ。お風呂を独占できるぞ!
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お風呂は男女別で内湯がひとつずつ。4~5人サイズの浴槽に張られているお湯は綺麗に真っ白く濁っています。硫黄泉にありがちな青白さでも黄色っぽい白さでもない、シルキーホワイトと表現したくなるような色です。浴槽の底にはジェットバスの装置が仕込まれているらしく、常時ブクブクと泡がでています。
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白濁したお湯ですが、上述のように硫黄らしさはゼロ。おそらくカルシウムによって濁っているのでしょう。マイルドながらはっきりとした塩辛さ+強い炭酸味+えぐみ+土気味+酸っぱさが渾然とした複雑な味覚で、はっきり言って不味いのです。特に湯口付近では炭酸味が強く、シュワシュワ感にパワーがあって、舌が痺れるほどでした。匂いに関しては土気感が少々といったところでしょうか、表現の難しい不思議な臭いでした。
お湯に入ってみると、ツルツルスベスベ感が非常に強くて肌触りがとっても滑らか。トロトロでクリーミーです。ギシギシ浴感をもたらしやすいカルシウムが多いのにそれを感じさせません。
湯口や浴槽側面には白っぽい橙色の石灰析出が鱗状に付着しています。でも浴槽の脱衣所側や浴槽縁の上面、そして洗い場一帯には付着があまり見られません。
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冷鉱泉を沸かして循環せずに湯船へ供給しているため、常時お湯が出ているわけではありません。湯口からお湯が出たり出なかったりを繰り返しています。どういう仕組み(タイミング)で源泉が投入されるのかよくわかりませんが、どうやら浴槽の水位に応じて瞬間的に源泉の弁が開くらしく、湯口付近のお湯を意図的に掻き混ぜて水位を変化させると、湯口の奥でカチッと弁が作動する音が鳴り、それと同時に冷たい鉱泉が湯船へ供給され、連動して加温用スチームも出ていました。
完全な掛け流しではなく、その都度源泉が補充される溜め置きタイプですが、循環や加水はなされていないため、掛け流しに近い状態でお湯を楽しむことが出来るかと思います。
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浴室は川に面しており、谷を見下ろす眺望に恵まれたロケーションなのですが、窓サッシにシャワーホルダーを取り付けているために窓は開きません。なおカランはシャワー付き混合栓が6基にスパウトのみの蛇口が3基ほど。鄙びた建物ですがお湯の出は良好でした。
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浴槽脇にはなぜかシャンプー類が大量放置。この雑然とした感じが、鄙びた宿のお風呂にはなぜかしっくりくるんですよね。
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(↑画像はクリックで拡大)
脱衣所内には新旧の分析表が掲示されていました。左が平成18年10月23日分析の新しい方で、右は平成4年4月8日分析の旧版です。遊離炭酸ガスが1702mg/kg(新分析表)って凄い数値ですね。
両者を比較すると、旧は成分総計が約22g/kgであるのに対し、新では約8g/kgと、14年で3分の1ほどに薄まっています。これって、泉質が大きく変化したのか、あるいは旧分析表の数値が誤っているのか、どちらなんでしょう?
いずれにせよ濃い鉱泉であることには違いなく、配管の管理など、宿の方はメンテナンスに相当ご苦労されているのではないでしょうか。
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お風呂から上がった後、橋で対岸へ渡ってみました。そこには荒涼とした駐車スペースが広がっていましたが、橋のたもとには「権現湯」と書かれた額がかけられた小さな建物がたっており、温泉スタンド設けられていました。
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建物はどうやら無人のようですが、このスタンドは営業中でした。200円で20L出るそうです。
私が独り占めして湯浴みした後には、石鎚山から下山してきた山男二人がこのお風呂に入り、ゆっくり体を温めて疲れを癒していました。この二人こそ、この鉱泉宿の本来の使い方を実践しているんでしょうね。一般人にはあまりおすすめできませんが、下山後の汗を流したい方は勿論のこと、変わりダネの鉱泉を追い求める温泉マニアの御仁にも是非訪れていただきたいお風呂です。
ちなみに帰りのバスを待つ間、空からはハラハラと雪が降ってきました。春先の四国でも雪は降るんですね。
含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 16.4℃ pH6.2 溶存物質6.365g/kg 成分総計8.067g/kg
(加温・消毒)
伊予西条駅より
せとうちバスの西之川行でロープウェイ前下車すぐ(所要1時間弱・970円)
愛媛県西条市西之川甲106
地図
0897-59-0335
10:00~17:00 土・日・祝のみ受付
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー無し
私の好み:★★★