
庄内地方きっての温泉地でありながら、なぜか今まで行く機会が無かった湯野浜温泉へ先日行ってまいりました。温泉街の中心部には足湯が設けられ、その周りがロータリーとなっているんですね。


足湯の脇には飲泉場もあり、チョロチョロとお湯が落とされています。試しに手でこのお湯を受けてみようと思ったら、かなり熱くてビックリしちゃいました。


足湯のロータリー前にそびえるビルは集会所や観光協会などを擁する地域のコミュニティーセンター「コスパ」。名前の由来はよくわかりませんが、少なくともコストパフォーマンスの略ではなく、何かしらの言葉とスパ(SPA)をくっつけているのでしょう。このビルの1階には鶴岡駅へ向かう路線バスの乗り場も内包されています。

当地では次回記事で取り上げるお宿に宿泊したのですが(委細は次回記事にて)、お宿で夕食をいただいた後、日がとっぷり暮れてから温泉街や砂浜を散歩し、一通りぐるっと回った後にコスパへ向かって、このビル1階にある「下区公衆浴場」で汗を流すことにしました。公衆浴場の場所は、コスパ1階のバス乗り場右手から建物の裏側へ入っていった先です。


券売機で湯銭を支払い、愛想の良い受付のおばちゃんに券を手渡します。浴室入口の手前には畳敷きの小上がりが設けられていますから、ちょっとした休憩もできますね。


脱衣室はそこそこ広く、きちんと清掃が行き届いており、大きな鏡が取り付けられており、洗面台も2台設けられているので、使い勝手は問題ありません。室内にはロッカーがあるのですが、鍵はささっておらず、張り紙によれば、ロッカーを利用したい場合は管理人へ申し出てほしいとのこと。てことは、申し出の際には張り紙の横にあるインターホンを使えば良いのかな?


公衆浴場ですから浴室は実用的な造りであり、大きな浴槽が一つと、シャワー付き混合水栓6基がL字形に並ぶ洗い場があるばかりですが、足元には十和田石が敷かれており、歩くたびに快適な感触が足裏へ伝わってきます。浴槽は潰れた台形のような形状で、大体6~7人サイズ。槽内は石板タイル張りで、縁は黒御影石です。常に浴槽縁からお湯が十和田石の床へオーバーフローしており、人が湯船に入ると勢い良く溢れ出て、洗い場をすすぎ流していました。
洗い場の上に掲示されているプレートには「浴槽のお湯の適温は38から40℃です」と記されているのですが、私が訪問した時間帯の湯船は44~45℃という熱めの湯加減で、さすがにこれでは地元の方でも熱いのか、常連のお客さんは水道の蛇口を全開にしてお湯を薄めていました。なお館内表示によれば、源泉温度が高いため加水しているものの、加温循環消毒は行われておらず、放流式の湯使いを実践しているんだそうでして、槽内に吸い込み口らしきものは無く、上述のようにしっかりお湯が溢れ出ていましたので、その説明に偽りはないものと思われます。


浴室の窓下から耐熱塩ビ管が、浴槽中央上部にある乳鉢を半分にしたような湯口へ伸びており、パイプに開けられている穴から半円形のお皿にお湯が注がれ、そこから浴槽へと落とされています。パイプにはタオルが巻かれているのですが、これはお湯の中の固形物を濾し取るためのものでしょう。
お湯は基本的には無色透明ですが、夜の混雑時間帯が過ぎた直後(つまりお湯が鈍っていたタイミング)に伺ったためか、あるいは塩化土類を含む泉質由来か、僅かに白く濁って靄が掛かっているように見えました。湯口のお湯をテイスティングしてみますと、塩味と弱ニガリ味、そして弱芒硝味が感じられました。匂いはあまり嗅ぎ取れなかったように記憶しています。
さて、この「下区公衆浴場」をネットで色々と調べてみますと、温泉ファンの多くはあまり良い評価をしていないようです。お湯はしっかり放流式ですし、塩気と塩化土類感を帯びるれっきとした温泉であるにもかかわらず、どうして評価が芳しくないのか考察してみますと、以下のような要因が推測されます。
・いかにも公的施設らしく、無機的で情緒が無い。
・泉質としては珍しくない食塩泉であり、特に面白いお湯ではなく、しかも配湯されている混合泉であって、加水もされている。
・中途半端に古い。10年落ちの中古車は二束三文ですが、20~30年前の車になればヴィンテージカーとしての価値が生まれてくるように、温泉施設も、中途半端に古いといまいち風情が感じられませんが、極端に古かったりぼろかったすると、却ってそれが味や情緒を生み出します。コスパという鉄筋の建物は、まだ味わいを醸し出す段階には至っておらず、実用的な部分ばかりが目立ってしまっている。
・同じ鶴岡の湯田川温泉と比較すると、伝統的な温泉風情は湯田川に軍配が上がってしまうため、相対的に評価が低くなる。
・そもそも湯野浜温泉は日帰り入浴不可の宿が多いため、湯野浜に興味を示す温泉ファンが少ない。
あくまで私個人の印象論にすぎませんので、異論があってもどうか見逃していただきたいのですが、そんな私の愚見や温泉ファンの評価はさておき、この浴場が地元の方に愛されていることは間違いなく、私が利用した夜8時半すぎという遅い時間帯でも、入れ替わりながら常時3~4人の入浴客で湯あみなさっていました。
湯野浜1号・2号・3号・4号及び5号並びに厚生有限会社・滝乃湯新2号
(南配湯所より配湯)
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 57.2℃ pH8.1 溶存物質5005mg/kg 成分総計5006mg/kg
Na+:1303mg(69.76mval%), Ca++:475.9mg(29.33mval%),
Cl-:2792mg(91.58mval%), Br-:12.4mg, I-:1.8mg, SO4--:318.1mg(7.70mval%),
H2SiO3:43.6mg, HBO2:11.6mg,
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし
JR羽越本線・鶴岡駅より庄内交通バスの湯野浜温泉行で湯野浜温泉バス停(終点)下車すぐ
山形県鶴岡市湯野浜1-1-7
0235-75-2258(湯野浜温泉観光協会)
6:00~7:00、10:00~21:30 第2・4木曜定休
300円
ロッカーあり(利用の際は受付へ申し出)、他備品類なし(タオル・石鹸など販売あり)
私の好み:★★