![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/ac/d6cf47a6c20e34fcb8d3230f1dd29151.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/29/fa2809995416e9e7a62d86810ff1303a.jpg)
当ブログを始めた頃に一度取り上げたことのある箱根・二ノ平温泉の公衆浴場「亀の湯」へ、今年の6月に再訪しました。5年前の前回記事ではあまりに淡白で素っ気ないな内容だったので、再訪してお湯を再確認しつつ、記事としてもう少し掘り下げてみようと思い立ったのです。二ノ平エリアは彫刻の森美術館以外に目立った観光名所が無く、周辺地域が繁忙期で賑わっていても、ここだけは妙に落ち着きを保っていることが屡々。そんな環境の中で営業しているこの「亀の湯」は、関東の代表的な観光地である箱根にあって、華やかさとは逆ベクトルの、昔ながらの鄙びた風情が味わい深く、その佇まいに心惹かれてわざわざ湯浴みにやって来るファンも多いんだとか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/4f/a356b585dfa321ad5d1dfe4d6a3923df.jpg)
裏手の源泉櫓は今でもしっかり活躍しており、ここで汲み上げられた温泉がお風呂へとが引かれているわけですね。
私の訪問時、番台には誰もいなかったため、玄関にて声をかけ、奥から姿を現したおばちゃんに湯銭を支払いました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/39/1880afa0bc0502a035dca58723ec63c7.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/bf/7dd03993399940760c466c0f89390788.jpg)
民家のような建物の1階には男湯・女湯・家族風呂の3つの浴室が並んでおり、生物学上も精神的にもオスである私は、当然ながら一番奥の男湯へと通されるのですが、訪問時は私以外にお客さんがいらっしゃらなかったので、手前側の「家族風呂」をちょこっと覗かせていただきました(さすがに女湯見学は憚られました)。タイル張りの室内には1~2人サイズの浴槽が一つ据えられ、シャワー付き混合水栓が1基取り付けられています。浴槽が小さいので大人2人が同時に入れるかどうか微妙なところですが、淡いパープル系の色合いと、浴槽角のRが、ささやかな非日常的な雰囲気を生み出しているとともに、どことなく穏やかで優しい感じも伝わってきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/f0/cf679ab0e4930c16ca6bf3acfe5990ed.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/68/7dc98007a30a036323a62c37e68b77a3.jpg)
さて男湯へと入りましょう。こぢんまりした脱衣室には、プラ籠が小さな棚に置かれているだけで、入浴者に迎合するような余計な備品類や装飾は無く、至って簡素です。この箱根らしくない慎ましさが「亀の湯」の魅力でもありますね。隅っこの小さな台には石鹸が置かれていたのですが、これって使ってよいのかしら?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/96/db9ba926121e4a3766045ff806f3c3cf.jpg)
脱衣室内には上画像のような「お願い」と題する張り紙が掲示されているのですが、ここには「亀の湯」の非常に重要なローカルルールが説明されていますので、ここで抜粋致します。
「お願い 浴槽内に蛇口より水を入れないでください。温泉が熱い時は桶で数杯水を入れ、体を馴らしお入り下さい。ぬるい時は湯を沢山出してお入り下さい。最後の方入口の戸を開けておいて下さい」
つまり、このお風呂で加水は禁忌なのであります。熱くてもお湯を薄めるな、熱けりゃまず体を慣らせ、ということなんですね。後述するように、こちらのお湯はデリケートですから、下手に加水しすぎちゃうと、お湯本来の持ち味が消えてしまう可能性があるんです。![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/34/059b6ffe7f5ef4113606882de990ceb2.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/a1/95669e57120a14a7a2cfec124fdf86bb.jpg)
男湯の浴室は、さすがに「家族風呂」より広いのですが、それでも一般的な公衆浴場よりははるかにコンパクト。浴槽を含め、4~5人が同時に入ったら窮屈に感じられそうです。また全体的にかなり年季が入っており、モルタルが白色塗装がくすんでいるほか、床に敷き詰められたベージュ色のタイルも、ところどころで変色していました。でも浴槽の縁や壁など、室内の随所に曲線が採用されており、建設された当時の、昭和的な瀟洒さが伝わってきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/1a/37589ec54dab10f450ad3564e0eb5180.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/69/fc580a01a3ccc7efc74ddd4c24226491.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/27/9c64cc25862677a914bbdd5c75cadc10.jpg)
洗い場は浴室の左右に分かれて配置されており、カランは計3基取り付けられています。うち1つはシャワー付き混合栓です。各カランの下には、腰掛けと桶が同じ傾け方でセッティングされていました。カランから吐出されるお湯は源泉であり、篦棒に熱いので、使用時は火傷に注意。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/3c/c24ee10ee0afa12db8a0a036dc785bbd.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/72/b436e9ffc0086d23f131ea9848cc8151.jpg)
手前側が弓状の弧を描いている浴槽は3人サイズで、槽内に貼られたタイルのコバルトブルー色がお湯の清らかさを際立たせています。手ぬぐいを巻いた蛇口からアツアツの温泉が注がれていますが、熱いために投入量は絞り気味です。それでもかなり熱い湯加減であり、熱いお風呂に慣れていない人は、入浴を躊躇してしまうかも。
お湯は無色透明でほぼ無臭、僅かな塩気を含んでいます。泉質名は「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩温泉」と長ったらしく仰々しいのですが、溶存物質1003mgと辛うじて単純泉の軛から抜け出ているような状態ですから、お湯としては非常に繊細であり、水で薄めすぎちゃうと、お湯本来の個性が失われてしまう可能性があります。そもそも湯船の容量も小さいので、水を出しっぱなしにすると、忽ち湯船の温度が下がっちゃって、ただの水風呂と化してしまい、それゆえこのお風呂では加水をNGとしているのかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/f7/834b01a4435b1380b898a9a1a71fc345.jpg)
底に排湯用の穴があいているのですが、窓外の壁際には湯面より僅かに高い位置まで立ち上がっているオーバーフロー管が設置されており、底の穴はその管に接続されていますので、これによって常時排湯が行われているものと想像されます。実際に誰も入っていない湯船では、常にお湯が投入されているにもかかわらず、縁からの溢れ出しは見られません。でも私が湯船に入ると、ザバーっと音を立てて勢い良く溢れ出ていきました。湯使いは文句なしの完全掛け流しです。
目の前に立つ源泉櫓から僅かな距離しかありませんから、お湯の鮮度は非常に良好で、熱い湯船に浸かると身も心も鞭を打たれたような感覚によってシャキっと蘇り、体の芯までよく温まって、湯上がりはなかなか汗が止まりませんでした。
亀の湯源泉(宮城野第28号)
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩温泉 64.2℃ pH8.5 蒸発残留物839mg/kg 溶存物質1003mg/kg 成分総計1003mg/kg
Na+:216mg, Ca++:25.4mg,
Cl-:165mg, SO4--:137mg, HCO3-:180mg, CO33-:24.0mg,
H2SiO3:218mg,
箱根登山鉄道・彫刻の森駅より徒歩6分(450m)
神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1080 地図
11:00~21:00
550円(家族風呂750円)
備品類なし
私の好み:★★