温泉不毛と言われる宮崎県でも、霧島連山の北麓にあたるえびの・小林エリアは地熱の恵みを受けており、のどかな田園風景の中に温泉浴場が点在しています。今回はそんな温泉の中でも湧出量が多いことで知られる「神の郷(かんのごう)温泉」へ立ち寄ってみました。こちらは比較的規模の大きな温泉旅館ですが、日帰り入浴も積極的に受け入れており、また大衆演劇の公演も行われているので、中高年の憩いの場として大いに賑わっているようです。私が訪れた時も、駐車場にはたくさんの車が止まっていました。
玄関の右側には飲泉所が設けられており、石灯籠から筧が伸びてお湯が落とされています。石灯籠や筧の周りには結晶化した温泉成分がビッシリとこびりついており、お湯が触れるところはオレンジ色に染まっていました。このお湯は自由に汲んで良いんだとか。お湯の味などに関しては後ほど。
広い敷地には大きな本棟のほか、浴場棟、ログハウス、野菜直売所など様々な建物が分かれていました。
本棟からちょっと離れたところには貸切風呂があったのですが、今回私は利用しておりません。
一般の日帰り入浴利用の場合は、正面玄関から入り、目の前にあるフロントを通り過ぎ左手に進んで、日帰り入浴専用の受付へと向かい、券売機で料金を支払って小さなカウンターへ券を手渡します。男女別の入口手前には小さな休憩スペースが設けられ、マッサージチェアが備え付けられていました。まるで体育館みたいに広くて天井の高い脱衣室を抜けて浴場へ。
明るく広々とした大浴場。大きな窓に面して主浴槽と副浴槽が据えられているほか、サウナや水風呂もあります。地域を問わず一般的に、サウナを備え付けている浴場では、湯船よりもサウナに人気が集まる傾向があるのですが、ご多聞に漏れずこちらでも同様であり、私が観察していた限りでは、せっかくの広い温泉浴槽はカラスの行水でサッと済ませ、サウナでじっくり長時間粘るお客さんが多かったようでした。
なお、窓と反対側に洗い場が配置され、計16基のシャワー付きカランが設置されていました。カランから出てくるお湯は真湯です。
窓に面した浴槽は、適温(41℃前後)の主浴槽と、ちょっと熱め(43℃前後)の副浴槽の2つ。主浴槽(大きな方)はおおよそ3.5m×6.5m、副浴槽(小さな方)はおおよそ3.5m×3mで、両者が接する部分は大きな円形が食い込んで欠けているような形状になっています。そしてその境界線上に両浴槽共通の湯口があり、下から噴き上がったお湯は左右へと流れ落ちていました。この湯口は飲泉所を兼ねていますので、試しにコップ半分ほどのお湯を飲んでみますと、石灰を思わせる味とほろ苦み、そして炭酸味が口の中に広がりました。
飲泉できるということは、とてもフレッシュな状態であり、実際に湯口に噴き上がってくるお湯は無色透明なのですが、まるでプールのように広い湯船へ落ちたお湯は、モスグリーンを帯びた山吹色(ベージュとアイボリーの中間のような色合い)に淡く濁っています。そして浴槽の縁や浴場床など、温泉と常に触れている箇所は炭酸カルシウムがこんもりと付着してベージュ色に染まっていました。湯使いは放流式です。
ドアから屋外に出ると露天風呂。出てすぐのところに据えられている7〜8人サイズの楕円浴槽には、内湯と同じような色合いに濁った温泉が張られていました。湯加減は41℃前後という長湯仕様。お風呂の周囲に岩を並べて庭園風にあしらわれていますが、浴槽自体はコンクリ造であり、温泉成分の付着により全体がベージュ色に染まっていました。岩を穿って作られた湯口では、下からお湯が噴き上がっており、豊富な湯量を活かしてふんだんに投入されています。内湯同様に、配管から出てきた瞬間のお湯は無色透明ですが、外気に触れた瞬間濁り始め、内湯よりも外気や温度変化の影響を受けやすいためか、この露天の方が強く濁っているように見えました。
日本庭園のような誂えの露天ゾーンには、ステップを下った先にもL字型の浴槽があり、そちらでも温泉が張られていました。こちらは造りが浅く、実際に入浴してみますと、浴槽の形が腰にフィットして、いい塩梅の半身浴になりました。わかりやすい塩化土類泉ですから、お湯に浸かるとギシギシと引っかかる浴感が肌にしっとりと染み込んできます。湯船によって様々な湯加減ですが、熱かろうとぬるめであろうと、湯上がりはしっかりと温まり、汗がなかなか引きませんでした。湯量豊富な温泉を活かす大きな施設で、掛け流しの温泉を存分に楽しめる素敵なお風呂でした。
第1源泉
マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉 40.1℃ pH6.5 486.9L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質2.553g/kg 成分総計3.028g/kg
Na+:239.7mg(33.45mval%), NH4+:14.0mg, Mg++:128.2mg(33.84mval%), Ca++:149.7mg(23.96mval%), Fe++:1.6mg,
Cl-:113.9mg(10.00mval%), SO4--:148.8mg, HCO3-:1574mg(80.29mval%),
H2SiO3:113.0mg, CO2:475.1mg,
(平成21年10月16日)
小林バスセンター(もしくは小林駅から徒歩5分弱の「本町」バス停)から小林市コミュニティバス「種畜牧場循環線」で「竹山入口」下車。なお「種畜牧場循環線」は月・木・土曜運転(祝日運休)で1日3便。時刻などは小林市公式サイト内の案内ページをご覧ください。
宮崎県小林市細野5373-19 地図
0984-23-1526
立ち寄り入浴500円
7:00~22:00
(貸切風呂は10:00~22:00、平日1500円・土日祝2000円 / 60min)
私の好み:★★+0.5
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