前回記事に引き続き、群馬県北毛の温泉を巡ります。前回記事の幡谷温泉から国道120号線を北東へ進み、片品村の中心部を抜けて丸沼高原方面を目指すと、その手前に白根温泉という小さな温泉地があります。沿道にはそば処を兼ねた大きな露天風呂の入浴施設が営業しており、敷地が広くて看板なども目立っているため、白根温泉で入浴したい観光客の多くはこの露天風呂を利用する傾向にあるようですが、そこからちょっと丸沼高原側へ上がっていったところには昭和5年の老舗温泉旅館「加羅倉館」があり、こちらでも日帰り入浴が可能なので、今回はそのお宿でお湯に浸からせていただきました。拙ブログでは初登場ですが、私がこちらを訪れるのは十数年ぶり。実は、こちらのお風呂は私が温泉巡りに興味を持ち始めたきっかけになった一湯なのですが、詳しくはまた後程本文中で。
まずは駐車場に車を止め、赤い橋で国道と並行して流れる川を渡ってお宿の本館へお邪魔します。そして帳場で湯銭を支払い緑色の入浴券を購入します。
券を入手したら国道に戻り、道路の向かい側に建つ浴舎へ。
浴舎は無人なんですね。本館の帳場で湯銭を支払った際に券が手渡されたのは、支払い済であることを証明するためなのでしょう。玄関を入り、廊下を進んで階段を下りた先に暖簾がさがっていました。
以前訪問した時の更衣室は古臭かった印象があるのですが、その後リニューアルしたらしく、久しぶりに訪れてみると、足元にカーペットが敷かれた室内は明るくて広く、白く塗装された壁に絵画が飾られ、各種設備も整えられて、綺麗で使いやすい環境が整えられていました。
お風呂は内湯のみですが、天井が高くて広く、明かり採りの窓のおかげで明るい浴室は、室内とは思えないような開放感が得られます。この広々とした浴場は、以前訪問した時の記憶と同じまま。変わらぬ姿にホッとしました。また私が訪れたのは冬の只中でしたが、天井付近に設けられた窓により換気環境が良いため、冬のお風呂にありがちな湯気籠りがなく、快適に利用することができました。
白いタイル貼りの室内。壁に沿って洗い場が設けられており、シャワーからは温泉が吐出されます。
浴槽は(目測で)3.5m四方のタイル貼り。後述する金属製の筒から、無色透明で綺麗に澄み切ったお湯が大量に注がれ、縁からふんだんに溢れ出ています。湯温調整のために加水されているものの、れっきとした放流式の湯使いであり、その様は実に豪快。私の拙い文章や画像では伝えきれないのがとても残念です。
なお、白根温泉は川に沿って上下に施設並んでおり、冒頭で申し上げたそば処を兼ねた大きな露天風呂は「下の湯」と呼ばれているようですが、それに対して川上に位置するこちらは「上の湯」なんだそうです。
「加羅倉館」のお風呂で印象的なのがこの湯口です。太いステンレスの筒から滝のようにドバドバと室内に音を轟かせながら落ちてゆく太い湯筋は、シンプルながら非常に迫力があり、しかも以前訪問した時には金属筒の下部に白い析出がびっしりこびりついていたため、まだ湯巡りを始めて間もなかった当時の私は、湯量や析出の多さなどビジュアル的な迫力に圧倒されたものです。その後、各地の温泉を巡ってこれが決して珍しくないことを知るのですが、今回改めて訪問して湯口と対峙してみると、やはりこの湯筒から出てくるお湯の量に心が惹かれ、湯めぐりを始めた当時の初心を思い出しました。
無色透明でクリアなお湯からは、ほんのりタマゴ味と香りが感じられるほか、ゴムボールのようなイオウ感が少々、そして若干の甘みが含まれているようでした。泉質名こそ単純泉であり、加水も行われているようですが、それでも北毛によく見られる無色透明の硫酸塩泉的な特徴がよく現れており、決して単純ではない奥深いお湯であることが五感を通して伝わってきます。また僅かながらアルカリ性に傾いているためか、ツルツルスベスベの滑らかな浴感も実に心地よく、また良好な鮮度感、絶妙な湯加減など、様々なポジティヴファクターが相俟って、とても入り心地の良いお風呂が出来上がっていました。露天ではないためお湯が良い状態で保たれているのも嬉しいところです。
シンプルで奇を衒っていないからこそ、お湯と真っ直ぐに向き合えるんですね。再訪して良かったと心から思える素敵なお風呂でした。
上の湯1号
単純温泉 61.5℃ pH7.8 蒸発残留物0.63g/kg 成分総計0.69g/kg
Na+:174mg, Ca++:29.0mg,
Cl-:92.9mg, SO4--:234mg, HCO3-:75.8mg,
H2SiO3:68.3mg,
(平成18年6月2日)
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし
群馬県利根郡片品村東小川4653-21
0278-58-2251
ホームページ
日帰り入浴時間不明
430円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★