温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

赤倉温泉 滝の湯

2020年03月10日 | 新潟県

前回記事では妙高山の麓に湧き上杉謙信の隠し湯としても知られる関温泉で宿泊したことを述べましたが、その翌朝、私は路線バスに乗って近所の赤倉温泉へ立ち寄り、何軒かお風呂をハシゴすることにしました。まず訪ねたのは、当地のランドマーク的存在である公衆浴場「野天風呂 滝の湯」です。温泉街の北側を東西に延びる真っ直ぐな坂道を上がった奥に位置しており、無料で利用できる足湯公園の近くです。赤倉温泉の開湯170周年を記念して1986年に開業したんだそうです。私はいままで2度利用したことがあるのですが、最後の訪問から10年近く経過しているので、薄く霞んでしまった記憶を掘り起こすべく再訪することにしました。なお拙ブログでご紹介するのは今回が初めてです。

階段を上がり、受付横の券売機で料金を支払います。受付周りは昭和の公営プールみたいな雰囲気ですが、受付スタッフの方は作務衣を着ており、まるで旅館のように丁寧な対応をしてくださいました。お疲れ気味のハード面を人的要素のソフト面でカバーする努力に思わず心が温まります。


吹きさらしの通路に男女別の入口があり、階段を上がった2階には休憩室が用意されています。脱衣室は昭和の香りがする懐かしい作りで、私が子供の頃によく通った市営プールを思い出させてくれました。


こちらの施設には夏季限定営業のプールも併設されているのですが、私が訪れたのは秋でしたから、既にクローズされていました。上述のようにいままで私は数度訪れているのですが、いずれも夏以外のため、このウォータースライダーが使われているところを見たことが無く、岩の間から雑草が茂るプールを見て、本当に夏になったら営業しているのだろうかという疑問が頭をもたげてしまいました。


お風呂は露天風呂のみ。巨大な岩が屹立する中で、淡く青白い色を帯びたお湯が池の如く湛えられています。20人近く入っても全く問題無さそうな大きなキャパシティを擁していますが、訪問時の利用客は私一人だけでしたので、この広大な湯船を独占しながら思いっきりノビノビとさせていただきました。圧倒的な開放感の中で何物にも邪魔されることなく湯浴みする快楽を得たいからこそ、わざわざ遠方まで足を伸ばすわけであり、それが達成されたときの爽快感たるや言葉には言い表せません。
なおこちらの施設に内湯は無く、寒い時期には湯温も下がってしまうため、冬季には施設まるごと休業するそうです。建物の壁側にシャワーが付いた混合水栓が3つ並んでいますので、ここで体を洗いましょう。私の訪問時、シャワーの水圧が強すぎたため使用に難儀したのですが、これはいつものことなのでしょうか。


上画像のように、脱衣室から出てすぐのところには、温泉のお湯が溜められた小さな湯枡がありますので、3つしかないシャワーが全て埋まっていたら、ここで掛け湯しても良いでしょう。


メインの浴槽である大きな湯の池の手前には、小さな浴槽もあるのですが、こちらのお湯は熱すぎて入ることができませんでした。


赤倉温泉といえば温泉ソムリエ発祥の地。私はあまり御縁がないのですが、この民間資格を通じて積極的に温泉ファンとの交流を図っている方も多いかと思います。お風呂のまわりにはこのソムリエによる説明書きがあちこちに立てかけられていました。そもそもは立札だったのでしょうけど、風雨で支柱が倒されてしまったのかな。


滝の湯という名前の通り、お湯は大きな岩の上から滝のように落とされています。訪問日は風が強かったためか、落ち葉の類いが湯面にたくさん浮いていました。その一方で露天風呂を囲む植栽の周りを見ますと、根元から折れて放置されている照明器具が目につきました。また奥には木のベンチも設けられているのですが、こちらも木材がやや腐食しており、全体的な老朽劣化が気になってしまいました。豪雪地帯に開業して30年以上が経過しているため、どうしてもいろんなところが草臥れてしまうのでしょう。仕方ありません。

でもお湯が良ければ問題なし。先述したように湯船には淡く青白みを帯びたお湯が張られており、湯中では白い湯の花が浮遊していました。湯加減は私の体感で約40℃。体への負担が少なく、いつまでも長湯できる優しいコンディションです。お湯からは軟式テニスボール的なゴム臭やゴム風味、甘味、そしてほろ苦みが感じられました。そして湯の中に浸かるとサラサラとした軽やかな感触とキシキシ引っかかる浴感が混在して得られました。カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉という泉質は、一見するとどこにでもありそうに思われますが、実はかなり珍しいタイプではないでしょうか。それゆえお湯から得られる浴感も一種独特です。なお湯使いに関しては、一度源泉から注がれたお湯を冷ましたものと、50℃近い源泉そのままのお湯の両者をブレンドする「循環併用かけ流し方式」を採用し、加水などは一切行っていないとのこと。
高原の清らかな空気のもと、お風呂から漂う湯の香を楽しみながら、ゆっくりのんびりと湯浴みを楽しませていただきました。


温泉が大好きな方ならご存知の通り、赤倉温泉の源泉は妙高山の中腹にある北地獄谷にあり、そこから延々と温泉街まで引湯して各施設へ配湯しています。上画像がその源泉施設。引湯の歴史は大変古く、なんと200年以上前の江戸時代にまで遡るんだとか。日本人が温泉に掛ける情熱って、昔からただならぬものがありますね。


カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉 50.2℃ pH6.6 湧出量測定不能(自然湧出) 溶存物質1262mg/kg 成分総計1321mg/kg
Na+:79.0mg(24.02mval%), Mg++:43.0mg(24.72mval%), Ca++:129.4mg(45.11mval%),
SO4--:327.3mg(48.64mval%), HCO3-:354.7mg(41.50mval%),
H2SiO3:243.1mg, CO2:59.4mg,
(平成27年8月4日)
一度源泉から注がれたお湯を冷ましたものと、50℃近い源泉そのままのお湯の両者をブレンドする「循環併用かけ流し方式」を採用。加水なし。

新潟県妙高市赤倉11
0255-87-2958
赤倉温泉観光協会ホームページ

9:00~17:00(木曜は16:00まで) 4月下旬~11月上旬営業(冬季休業) 
500円
ドライヤーあり、ロッカー有料(100円)

私の好み:★★+0.5
コメント
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