温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯田湯本温泉 大正館

2020年04月02日 | 岩手県

前回に引き続き、岩手県西和賀町の湯田温泉峡をめぐります。前回記事で取り上げた湯田温泉を出た頃には、既に日が暮れていたので、寄り道せずにその日の晩の宿へ向かうことにしました。この日お世話になったのは、当温泉峡の中心である湯田温泉の老舗宿「大正館」です。かの有名な正岡子規も投宿したことで知られているこの老舗宿は、温泉街のちょうど真ん中に位置しており、目の前には温泉街を見守る薬泉観音が鎮座しています。

私は自分の車で伺ったのですが、女将さんは私が車を停めてから玄関の戸を開けるまで、ずっと玄関で待っていてくださいました。


この晩私が通されたのは2階の一室。6畳に広縁が付いた和室で、室内にはテレビと冷蔵庫、そしてエアコンが備え付けられています。また長期滞在客のため広縁には立派な物干し竿も用意されています。その一方、洗面台やトイレなどの水回りは廊下にある共用のものを使用します。昔ながらのお宿だからかWifiは使えず、それどころか私の携帯(au)の電波が弱くてちょっと難儀しました。総じて備品は簡素ですし、建物自体も相当古いのですが、しっかり清掃が行き届いていますから、通信環境に目を瞑れば問題なく過ごすことができるかと思います。


お食事は1階の大広間でいただきます。お膳には出来立て熱々のお料理が次々と並べられました。ネギたっぷりの肉豆腐、刺身、つぶ貝の和え物、茶碗蒸しなどなど、家庭的ながら品数が多く美味しいので大満足です。


こちらは朝食です。煮魚・卵料理・茄子など朝から充実したラインナップ。しっかり食べてその日の鋭気を養いました。
品数豊富で美味しい2食がついたこちらのお宿、なんと1泊2食付で5980円(2019年秋の時点)という驚きのコストパフォーマンス!! あまりにお安いので、何だか申し訳なくなっちゃいます。しかも後述する掛け流しの温泉付きなのですから恐れ入ります。


さて、肝心のお風呂へ向かいましょう。お風呂は1階の玄関奥、階段の手前に位置しています。
脱衣室の照明は自分で点灯させます。室内には棚や籠の他、洗濯機が2台置かれており、また壁際ではポンプがむき出しの状態で設置されていました。なおロッカーはありません。


お風呂は男女別の内湯のみです。客室同様に相当年季が入っていますが、お手入れはしっかりされており、明るくて気持ち良く入れます。


右手前には洗い場があり、シャワー付き混合水栓が1つと、水と湯の蛇口がひとつずつ設けられています。カランから出るお湯はボイラーのお湯かな。


その反対側(左側)は物置空間と使われていない空の小浴槽が並んでいます。小浴槽にお湯を注いでいたと思われる蛇口には白い析出がコンモリと付着していました。マニアとしては温泉成分がビジュアル的にわかるこのような析出を見るとつい興奮してしまうのですが、このお風呂において、この程度で喜んでいてはいけないのです。


その場で見上げると、貯湯槽と思しき巨大なコンクリの矩形タンクや、そこから伸びる配管の表面が、白くてザラザラトゲトゲした夥しい析出によって分厚く覆われていたのです。白い析出のオバケを目にして私はびっくり仰天し、目を輝かせてしまいました。事情を知らない人がその時の私を見たら、さぞ不気味に思うでしょうね。


タイル貼りの浴槽は(目測で)1.5m×1.8m。おおよそ3人サイズでしょうか。基本的に外来入浴を受け付けておらず、宿泊者のみで利用するお風呂ですから、この程度の大きさでも十分と言えましょう。


小さい湯船ながらも温泉の投入口は2本設けられています。手前側には長い柄でコックを開閉するタイプの湯口があるのですが、私の利用時、こちらのお湯は止まっていました。


一方、窓側の壁から出ている湯口からは熱々の温泉が注がれていました。こちらでは塩ビ管の先に小さな穴を開けたPETボトルが括りつけられており、ジョウロの蓮口みたいな形でお湯をシャワー状に撒布することにより、加水することなくお湯の温度を適温へ下げているようでした。そういえばお風呂の窓も開けられていましたが、これも加水しないでお湯の温度を下げるための工夫だったのかもしれません。
このような措置のおかげで浴槽の温泉は絶妙な湯加減に維持されており、しかも薄まっていないので、実にすばらしい状態で湯浴みすることができました。湯守りの方のご配慮には心から感謝です。

お湯は無色澄明で清らかに澄み切っています。上述のように外来入浴は無いため、お湯の状態は極めて良く、大変フレッシュです。お湯からは芒硝臭が少々感じられ、無色透明の硫酸塩泉らしいピリっとした感覚と力強い温まりがしっかり得られました。そしてサラスベの軽やかな感覚と少々引っかかりが混在する浴感が肌に伝わってきました。なお分析表に記載されていた硫化水素臭は、入浴時には全く感じられませんでした。とても良いお湯だったため、1泊だけにもかかわらず、滞在中は何度もお風呂に入ってしまいました。

古風な造りのお宿ですが、お湯の質は良く、その上コストパフォーマンスが抜群ですので、みちのくを旅する人にとっては心強い味方と言えるでしょう。おすすめです。


第6号泉
Na-硫酸塩・塩化物温泉 95.0℃ pH7.6 500L/min(動力揚湯) 溶存物質1.566g/kg 成分総計1.571g/kg 
Na+:390.4mg(80.40mval%), Ca++:71.4mg(16.86mval%),
F-:6.5mg, Cl-:303.1mg(39.49mval%), SO4--:563.5mg(54.18mval%), HCO3-:62.0mg,
H2SiO3:145.2mg, CO2:5.3mg,
(平成27年2月4日)
加温加水循環消毒なし
(ただし気温の高い期間のみ加水あり)

岩手県和賀郡西和賀町湯本30地割24
0197-84-2624
西和賀町観光協会公式サイト内紹介ページ

日帰り入浴なし(宿泊のみ)

私の好み:★★★
コメント (3)
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