温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

世継のかなぼう 

2024年08月02日 | 京都府・大阪府・滋賀県
(2023年5月訪問)
全国的に地獄釜のような猛暑が続いておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。
暑い日に熱い風呂へ入るのも乙ですが、やはりこんな陽気が続けば清涼感が欲しくなるもの。そこで今回は滋賀県米原市の世継地区に湧く「かなぼう」と称される鉱泉群を取り上げます。米原市の琵琶湖沿岸に位置する世継地区には、随所で金気を含んだ冷鉱泉が湧出しており、各湧出ポイントには水場が設けられ、古くから地域の方々が野菜や農機具を洗う水として古くから使われています。「かなぼう」はあくまで農業や生活の水場として使われる鉱泉であり、入浴するためのものではありませんが、その清涼感や独特の知覚的特徴に惹かれたマニアがしばしば訪ねて、地域の生活に密着した鉱泉が湧く景色に心を潤しています。
そこで私も世継の「かなぼう」を巡ることで、都会の生活に疲れて枯れ切ったメンタルに少しでも潤いをもたらすことにしました。


世継地区を訪ねる場合、JR北陸本線の坂田駅前にある駐車場か、あるいは県道2号(さざなみ街道)に面した「道の駅 近江母の郷」で車を停めて、歩いて現地へ向かうのが一般的かもしれませんが、私はJR米原駅東口にある観光案内所で借りたレンタサイクルを利用して、各鉱泉を巡りました。
世継の集落に入ると、上画像のようなイラストマップが大きな看板となって立っています。現地へ行かれた方はまずこのマップの看板を見つけてスマホで撮ることをおすすめします。


私のように米原駅前の観光案内所へ立ち寄れば、同じマップを入手できます。しかも裏面には・・・


イラストマップではなく、一般的な地図に「かなぼう」の各水場がマッピングされていますから、実際に当地を巡るのであればこちらの単色刷りの地図が見やすいかと思います。

話を一旦イラストマップに戻します。
世継集落には七夕伝説があるらしく、マップ上ではその言い伝えや伝説ゆかりの地がイラスト等とともに紹介されているのですが・・・


我々鉱泉マニアとしては、マップの左下に注目。
そこには通し番号とともに「世継のかなぼう」の各水場が図示されており、地図上にその番号が付せられているのです。これは便利ですね。ということで、早速1番目から巡ってみましょう。

(1)

集落の中央、十字路の角にある「かなぼう」です。1番とナンバリングするだけあって、たしかに見つけやすい立地です。


別の角度から撮ってみました、道路の角に面しているので、内輪差を考えずにハンドルを切ったら脱輪してこの水槽に落ちちゃいそう。


鉱泉は円筒形の投入口から四角い枠へ落とされ、更に地面を掘って作った水槽へ注がれています。
水槽はかなり大きく、人によっては入ってしまいそうな感じですが、私はそんな度胸も無く、そもそも集落の方々の目がありますから、ただ見学して鉱泉に触れただけで済ませました。


鉱泉の温度は17.5℃。水温は年間を通じて大体この前後数度で安定しているようです。夏はひんやり、冬はあったか、といったところでしょうか。この鉱泉を口に含んでみますとたしかに金気がしっかり主張するほか、カルシウム感も含まれており、触れた感じは少々キシキシしていて、やや重めの鉱泉といったところ。金気が多いので飲泉には適さないでしょう(飲めるでしょうけど美味しくない)。なお「かなぼう」の鉱泉は当地の南東に聳える霊仙山を源としているんだとか。


(2)

こちらは集落の中、イラストマップではタバコ屋の横とされています。たしかに商店らしき建物が目の前にありますが、いまでもご商売やっていらっしゃるのかしら。


コンクリの桝は金気の影響で全体的に黄色いですね。縁に置かれたタワシが、この鉱泉の用途を物語っています。


角度を変えて撮ってみました。湧出量はかなり多く、ドバドバと湧出しては捨てられています。


こちらの「かなぼう」には、このような説明プレートが設置されています。


水温は18.2℃でした。場所によって多少異なるのですね。


(3)

こちらは(2)の「かなぼう」の脇を東へ伸びる路地に入り、道なりに左へ曲がった先にあります。


逆側から撮ってみました。デッキブラシが数本立て掛けられていますね。


注ぎ口の様子。


水温は(1)と同じく17.5℃でした。


(4)

こちらは(1)~(3)からはちょっと南へ離れた民家の軒先です。5月に訪ねたので、周囲の菖蒲が綺麗でした。


ひとつひとつの桝が他より大きく、水槽も比較的大きいのですが、洗い場の水場は(1)より浅い造りです。
注ぎ口の蓋の上には柄杓が置かれていました。


水温は18.2℃でした。


(5)

さて、集落から外れた耕作地の中へとやってまいりました。5番の「かなぼう」です。彼方に聳える山は伊吹山かしら。


こちらの「かなぼう」も場所柄、農機具の洗浄に使われているようです。


よく見ると、お芋がいくつか転がっていますね。ここでサツマイモを泥を落としたのかな。


水温は(1)や(3)と同じ17.5℃。冬でもこの水温ならば水仕事も苦なくできますね。


(番外1)

さてここからは、イラストマップで案内されていない「かなぼう」です。
「道の駅 近江母の郷」内にもこのような「かなぼう」があります。道の駅の内部にあるためか、オブジェのような形状をしており農村の生活感が全くないのですが、たらいやデッキブラシが置かれていることから、この「かなぼう」も何かの洗浄に使われているものと思われます。


斜め後ろから撮ってみました。ご覧の通り見通しの良い場所にあり、道の駅に立ち寄った方なら、大抵の場合は目に入るのではないでしょうか。


真上から見た様子。中央の穴から鉱泉が噴き上がっています。もちろん自噴(だと思います)。


こちらは集落の「かなぼう」より若干高めの19.0℃でした。


(番外2)

さて、最後です。
「道の駅 近江母の郷」から世継の集落へ戻った田園風景の中にある「天の川沿岸土地改良区揚水機場」付近。
一見するとただの畑に見える上画像の景色にも「かなぼう」があるのです。


雨水桝が隆起して出っ張ったようなこのコンクリの躯体からも「かなぼう」の鉱泉がコンコンと湧出しています。


蓋で閉じられているので気づきにくいのですが、よく見ると内部は他の水場と同じように黄色く染まっていました。


水温は17.5℃。(1)(3)(5)の各水場と同じ水温です。金気を多く含む鉱泉の特徴も他と同じでした。

今回紹介した世継の「かなぼう」はいずれも入浴できない冷鉱泉ですが、ひとつの集落に集中して湧出しており、古くから地域の生活に密着して使われてきたのみならず、どの湧出点においても湧出温度や知覚的特徴がみな共通しているという、様々な特徴を兼ね備えた実に興味深い鉱泉群でした。
温泉ファンでしたら一見の価値ありです。

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