前回記事「湯の瀬温泉 湯の瀬旅館 その2(内風呂)」の続編です。
その1ではお部屋や食事、その2では24時間入れる内湯の様子を取り上げました。そして最後となる今回(その3)では、「湯の瀬温泉 湯の瀬旅館」の目玉である巨大な露天風呂をご紹介します。大変長らくお待たせいたしました。ようやく当地の象徴的存在の登場です。湯の瀬温泉で巨大露天風呂を紹介しないだなんて、ニューヨークで自由の女神を、ロンドンでビックベンを、北京で紫禁城を無視するようなもの。でも美味しいお食事や湯量豊富な内風呂を邪険に扱うわけにはいかなかったので、結果的に最後になってしまいました。勿体ぶってごめんなさい。とはいえ、真打ちは殿(しんがり)で高座へ上がるものですから、私個人としてはこうした順序をとることで巨大露天風呂に敬意を払っているつもりなのです。
巨大露天風呂は階段で2階に上がり、長い廊下をどんどん進んだドン詰まりにあります。山間に建てられたこちらのお宿は、奥に長い建物自体が地形の傾斜に沿っており、2階の廊下は途中でステップを挟みながら奥へ行くに従い勾配を登るような構造になっていますので、その先にある露天風呂も旅館の敷地内でも比較的高い位置に設けられていることが推測されます。
前回記事(その2)で取り上げた1階内風呂は24時間入浴可能ですが、この大露天風呂は入浴時間が限られており、夜は通常20時にクローズされます。闇夜に広いお風呂を開けるのは安全上宜しくないという考えによるものだそうです。しかしながら、連休などの繁忙期になると利用時間が延び、私が訪ねた秋の連休では22時まで延長されていました。こちらの脱衣室は1階内風呂の3倍近い広さが確保されているので、ノビノビ着替えることができます。また1階同様にアメニティー類がたくさん用意されているほか、ドライヤーや扇風機などの備え付けもあり、使い勝手良好です。
脱衣室を抜けた先には、いきなり露天風呂が広がっているわけではなく、まずは体を綺麗にする内湯がお客さんを出迎えます。1階のお風呂とは色調こそ違うものの、タイル貼りの実用的な設えであり、広さもこちらの方が若干広い程度で双方とも似たような感じのお風呂と言って差し支えないでしょう。つまりこちらのお宿には男女別の内湯が2種類あるのです。浴室内にはシャワー付き混合水栓が3つ並んでいるほか、1階内風呂と同様に黒い石材で縁取られたタイル貼りの浴槽が設けられ、滾々と注がれる温泉のお湯がその縁から惜しげもなく溢れ出ていました。浴槽の大きさは1階内風呂より一回り大きかったような気がします。
浴室で体を洗ってから奥の引き戸を開けると、そこには大きなドーム状のテントに覆われた巨大露天風呂がお湯を湛えていました。その大きさは、幅約13メートル、奥行約23メートル、深さ1.2メートルとのこと。学校のプールに匹敵する大きさです。人間ですらその大きさに驚いてしまうこと必至ですが、もし小動物がこの露天風呂に対峙したらどんな気持ちになるのでしょうか。「井の中の蛙大海を知らず」と言いますが、夏にカエルくんが迷ってこの露天風呂に入り込んでしまったら、それこそ日本海に飛び込んでしまったかのような錯覚に陥るのでしょうか。いや、その前にゆでガエルになってしまうのかもしれませんが…。
逆の方からこの巨大露天風呂を捉えてみました。奥に行くへ従い徐々に狭まってゆく形状をしており、海のごとく大量のお湯を湛えるお風呂全体が、まるで海洋を進む船体のようなスタイルをしているのであります。
なお脱衣室や内湯は男女別ですが、この露天風呂は混浴です。しかしながら女湯側の一部には囲いがされており、女性でも露天風呂に入れるよう配慮されています。また湯浴み着を着用しての入浴も可能です。
宿の説明の寄れば深さ1.2メートルとのことですが、私が実際に入った感覚によれば、奥に向かって左側が深く、右に向かって徐々に浅くなり、右側の槽内側面にはステップが設けられていました。1.2メートルという深さは、泳げる人にとっては大したことありませんが、泳げない人にとっては多少の恐怖を覚えるかもしれません。従いまして泳げない金槌さんがこのお風呂に入る場合は、できるだけ右側を目指すようにしましょう。あるいは上画像のように浮き輪も用意されていますので、これにつかまって入浴するのもよいかもしれません。私は水泳が大好きなので全く怖くありませんでしたが、それでもこの浮き輪を使い、プカプカ浮いて浮力を感じながらのんびりと気持ち良く湯浴みさせていただきました。
浴槽自体は岩風呂であり、ゴツゴツとした大きな岩が屹立しながら並べられています。岩とお湯が接する湯面より上の表面には、温泉成分の白い析出がビッシリと付着していました。溶存物質389.7mg/kgと比較的薄いタイプのお湯でありながら、これだけしっかり析出が付着するんですね。なかなか興味深い現象です。
繰り返しますがこの露天風呂は小中学校のプールと比肩するほどの広さを有しており、そこへお湯を張っていますので、いくら湯量が豊富でも湯加減にムラができてしまいます。そこでこのお風呂では複数箇所に湯口が設けられていました。それでも手前側が比較的熱く(適温に近く)奥がぬるめでしたので、好みの湯加減にお風呂の中を移動すると良いでしょう。
お湯は無色透明でほぼ無味無臭です。前回記事でも申し上げましたが、アルカリ性でありながら硫酸塩が比較的多く、それゆえに岩の表面を白い析出が覆っているものと思われます。またアルカリ性単純泉にもかかわらずツルツルスベスベといったような浴感ではなく、少々の引っかかりを感じるアッサリした浴感であることも特徴のひとつであり、これも温泉に含まれる硫酸塩の影響であろうかと推測されます。無色透明の硫酸塩泉は、その没個性な見た目とは裏腹にパワフルな温浴効果を発揮しますが、アル単なのに硫酸塩泉っぽいこのお湯でも同様に力強い温まりが得られ、露天の奥のぬるいゾーンで長湯していても、湯上がり後には不思議なほど体の芯から強力にあたたまりました。
あ、そうそう申し忘れましたが、内風呂・露天共に100%源泉完全掛け流しの湯使いです。素晴らしいですね。
プールのような巨大露天風呂に浸かって、他ではなかなか体験できない湯浴みを楽しむのはもちろん、日本海の海の幸に舌鼓を打つこともでき、非常に充実した時間を過ごせました。
人里離れた山奥の温泉で、非日常の世界を存分に楽しむことができるこちらのお宿。温泉ファンなら一度はこの巨大露天に入ってみたいと思うはずですが、宿泊しないと入浴することができませんので、庄内地方をご旅行の際は是非宿泊なさってみてはいかがでしょうか。
佐藤2号源泉
アルカリ性単純温泉 48.1℃ pH9.3 掘削動力揚湯 溶存物質389.7mg/kg 成分総計389.7mg/kg
Na+:55.1mg(45.98mval%), Ca++:55.9mg(53.45mval%),
Cl-:10.7mg, SO4--:222.5mg(89.04mval%), HCO3-:6.8mg, CO3--:4.2mg,
(平成27年1月23日)
山形県鶴岡市戸沢字神子谷103-2
0235-45-2737
ホームページ
日帰り入浴不可
宿泊プランについては公式サイトか電話でご確認ください。
私の好み:★★★
その1ではお部屋や食事、その2では24時間入れる内湯の様子を取り上げました。そして最後となる今回(その3)では、「湯の瀬温泉 湯の瀬旅館」の目玉である巨大な露天風呂をご紹介します。大変長らくお待たせいたしました。ようやく当地の象徴的存在の登場です。湯の瀬温泉で巨大露天風呂を紹介しないだなんて、ニューヨークで自由の女神を、ロンドンでビックベンを、北京で紫禁城を無視するようなもの。でも美味しいお食事や湯量豊富な内風呂を邪険に扱うわけにはいかなかったので、結果的に最後になってしまいました。勿体ぶってごめんなさい。とはいえ、真打ちは殿(しんがり)で高座へ上がるものですから、私個人としてはこうした順序をとることで巨大露天風呂に敬意を払っているつもりなのです。
巨大露天風呂は階段で2階に上がり、長い廊下をどんどん進んだドン詰まりにあります。山間に建てられたこちらのお宿は、奥に長い建物自体が地形の傾斜に沿っており、2階の廊下は途中でステップを挟みながら奥へ行くに従い勾配を登るような構造になっていますので、その先にある露天風呂も旅館の敷地内でも比較的高い位置に設けられていることが推測されます。
前回記事(その2)で取り上げた1階内風呂は24時間入浴可能ですが、この大露天風呂は入浴時間が限られており、夜は通常20時にクローズされます。闇夜に広いお風呂を開けるのは安全上宜しくないという考えによるものだそうです。しかしながら、連休などの繁忙期になると利用時間が延び、私が訪ねた秋の連休では22時まで延長されていました。こちらの脱衣室は1階内風呂の3倍近い広さが確保されているので、ノビノビ着替えることができます。また1階同様にアメニティー類がたくさん用意されているほか、ドライヤーや扇風機などの備え付けもあり、使い勝手良好です。
脱衣室を抜けた先には、いきなり露天風呂が広がっているわけではなく、まずは体を綺麗にする内湯がお客さんを出迎えます。1階のお風呂とは色調こそ違うものの、タイル貼りの実用的な設えであり、広さもこちらの方が若干広い程度で双方とも似たような感じのお風呂と言って差し支えないでしょう。つまりこちらのお宿には男女別の内湯が2種類あるのです。浴室内にはシャワー付き混合水栓が3つ並んでいるほか、1階内風呂と同様に黒い石材で縁取られたタイル貼りの浴槽が設けられ、滾々と注がれる温泉のお湯がその縁から惜しげもなく溢れ出ていました。浴槽の大きさは1階内風呂より一回り大きかったような気がします。
浴室で体を洗ってから奥の引き戸を開けると、そこには大きなドーム状のテントに覆われた巨大露天風呂がお湯を湛えていました。その大きさは、幅約13メートル、奥行約23メートル、深さ1.2メートルとのこと。学校のプールに匹敵する大きさです。人間ですらその大きさに驚いてしまうこと必至ですが、もし小動物がこの露天風呂に対峙したらどんな気持ちになるのでしょうか。「井の中の蛙大海を知らず」と言いますが、夏にカエルくんが迷ってこの露天風呂に入り込んでしまったら、それこそ日本海に飛び込んでしまったかのような錯覚に陥るのでしょうか。いや、その前にゆでガエルになってしまうのかもしれませんが…。
逆の方からこの巨大露天風呂を捉えてみました。奥に行くへ従い徐々に狭まってゆく形状をしており、海のごとく大量のお湯を湛えるお風呂全体が、まるで海洋を進む船体のようなスタイルをしているのであります。
なお脱衣室や内湯は男女別ですが、この露天風呂は混浴です。しかしながら女湯側の一部には囲いがされており、女性でも露天風呂に入れるよう配慮されています。また湯浴み着を着用しての入浴も可能です。
宿の説明の寄れば深さ1.2メートルとのことですが、私が実際に入った感覚によれば、奥に向かって左側が深く、右に向かって徐々に浅くなり、右側の槽内側面にはステップが設けられていました。1.2メートルという深さは、泳げる人にとっては大したことありませんが、泳げない人にとっては多少の恐怖を覚えるかもしれません。従いまして泳げない金槌さんがこのお風呂に入る場合は、できるだけ右側を目指すようにしましょう。あるいは上画像のように浮き輪も用意されていますので、これにつかまって入浴するのもよいかもしれません。私は水泳が大好きなので全く怖くありませんでしたが、それでもこの浮き輪を使い、プカプカ浮いて浮力を感じながらのんびりと気持ち良く湯浴みさせていただきました。
浴槽自体は岩風呂であり、ゴツゴツとした大きな岩が屹立しながら並べられています。岩とお湯が接する湯面より上の表面には、温泉成分の白い析出がビッシリと付着していました。溶存物質389.7mg/kgと比較的薄いタイプのお湯でありながら、これだけしっかり析出が付着するんですね。なかなか興味深い現象です。
繰り返しますがこの露天風呂は小中学校のプールと比肩するほどの広さを有しており、そこへお湯を張っていますので、いくら湯量が豊富でも湯加減にムラができてしまいます。そこでこのお風呂では複数箇所に湯口が設けられていました。それでも手前側が比較的熱く(適温に近く)奥がぬるめでしたので、好みの湯加減にお風呂の中を移動すると良いでしょう。
お湯は無色透明でほぼ無味無臭です。前回記事でも申し上げましたが、アルカリ性でありながら硫酸塩が比較的多く、それゆえに岩の表面を白い析出が覆っているものと思われます。またアルカリ性単純泉にもかかわらずツルツルスベスベといったような浴感ではなく、少々の引っかかりを感じるアッサリした浴感であることも特徴のひとつであり、これも温泉に含まれる硫酸塩の影響であろうかと推測されます。無色透明の硫酸塩泉は、その没個性な見た目とは裏腹にパワフルな温浴効果を発揮しますが、アル単なのに硫酸塩泉っぽいこのお湯でも同様に力強い温まりが得られ、露天の奥のぬるいゾーンで長湯していても、湯上がり後には不思議なほど体の芯から強力にあたたまりました。
あ、そうそう申し忘れましたが、内風呂・露天共に100%源泉完全掛け流しの湯使いです。素晴らしいですね。
プールのような巨大露天風呂に浸かって、他ではなかなか体験できない湯浴みを楽しむのはもちろん、日本海の海の幸に舌鼓を打つこともでき、非常に充実した時間を過ごせました。
人里離れた山奥の温泉で、非日常の世界を存分に楽しむことができるこちらのお宿。温泉ファンなら一度はこの巨大露天に入ってみたいと思うはずですが、宿泊しないと入浴することができませんので、庄内地方をご旅行の際は是非宿泊なさってみてはいかがでしょうか。
佐藤2号源泉
アルカリ性単純温泉 48.1℃ pH9.3 掘削動力揚湯 溶存物質389.7mg/kg 成分総計389.7mg/kg
Na+:55.1mg(45.98mval%), Ca++:55.9mg(53.45mval%),
Cl-:10.7mg, SO4--:222.5mg(89.04mval%), HCO3-:6.8mg, CO3--:4.2mg,
(平成27年1月23日)
山形県鶴岡市戸沢字神子谷103-2
0235-45-2737
ホームページ
日帰り入浴不可
宿泊プランについては公式サイトか電話でご確認ください。
私の好み:★★★