温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

流山市 南柏天然温泉 すみれ

2021年03月13日 | 東京都・埼玉県・千葉県
千葉県東葛地域には、古東京湾の置き土産と称すべき化石海水型の温泉が点在しています。いままで拙ブログでは、つい遠方の温泉を優先するあまり東葛地域を含む首都圏の温泉をあまり取り上げてこなかったので、今後少しずつ紹介してゆくつもりですが、今回はそのはじめとして、2021年2月11日に千葉県流山市の水戸街道沿いで新規開業したばかりの、自家源泉を所有する温泉スーパー銭湯「すみれ」を取り上げます。拙ブログはいつも1年遅れの内容ばかりですが、久しぶりに新規開業の温泉を取り上げますので、首都圏の温泉、新規施設、そして取材後2週間以内という3つの意味で珍しい記事になりそうです。


私の自宅から路線バスで小田急線某駅へ向かい、そこから千代田線・常磐線直通の準急に乗車。1時間20分ほど同じ電車に乗り続けて温泉最寄り駅の南柏駅に到着です。小田急線の駅から千代田線を経由して柏・我孫子・取手といった常磐線の駅へ向かう電車が出ていることは、普段から十二分に認識しているつもりですが、実際に乗り通す機会はあまりなく、生活圏・文化圏・経済圏が全く違うエリアに乗り換えなしで行けちゃうことに、今更ながら驚いてしまいました。


南柏駅の北口から常磐線の線路沿いを北小金駅に向かって歩きます。普段から「怒ってるの?」と勘違いされるほど早歩きの私の足で、駅から約10分後に「歩行者入口」の看板を発見。私が訪ねた2月末の時点で、まだロードサイド店(中古車販売店や家電量販店)は工事中であり、交通整理のおじさんが赤い棒を左右に揺らしていましたが、正直それほど混乱するような状況でもなく、諸々の法令で仕方なくおじさんを配置したような状況でした。


ちなみに車で向かう場合、水戸街道沿いに上画像のような大きな看板が立っているので、国道6号を漠然と走っているだけでも目的地へたどり着くことができるでしょう。

このあたりの区画は以前、倉庫かそれに近い性質の建物だったようですが、千葉県を地盤とする建築・不動産会社の株式会社新昭和が開発を行い、ショッピングセンターやロードサイド店を開業させようとしています。今回開業した「すみれ」も新昭和による開発のひとつであり、実際の運営は温泉スーパー銭湯の運営実績を有する株式会社楽久屋に任されているようです。


立派な看板がお出迎え。
駐車場の収容台数は184台という多さ!


建物の外観。ちょっと地味ですけど、土壁のような塗装を採用することで温泉らしい印象を与えようとしているのかも。


開業して1~2週間しか経っていないため、全館どこもピッカピカ。歴史ある老舗の温泉も良いですが、真新しい温泉スーパー銭湯も良いもんですね。さて今年オープンしたばかりのこちらの施設は入館方法も最新式。まず靴を下足用ロッカーに収めるのですが、そのカギがついているリストバンドに丸いICタグも取付られており、入退館や館内サービスの精算など、このICで一括管理しています。ICタグで精算を管理する方式ならば比較的多くの施設で以前から採用されていますが、こちらの施設が他とちょっと違うのは、入館・退館の手続きをセルフで行うという点。入口の自動ドアを入りますと、目の前に自動受付機が2台設置されていますので、所定の位置にICタグをタッチさせ、利用する料金プランや人数、岩盤浴利用の有無、レンタル品利用の有無など、画面の指示に従いながら入館手続きを進めてゆくのです。機器に慣れない人だと戸惑うかもしれませんが、おそらく近くにスタッフの方がいらっしゃるかと思いますので、もし戸惑ったらスタッフに声を掛けてみましょう。なお精算は退館時に行います。私の訪問時はまだ精算機がクレジットカード対応しておらず、支払いは現金のみでした。いずれカードも対応できるものと思われます。


入館操作を済ませて、いざ館内へ。まずは物販コーナーを通過し・・・


食事処の前を曲がって・・・


マッサージや休憩スペース「ゆったり広場」、そして岩盤浴(別料金。上述の受付機で選択)の前を通り過ぎます。
広い休憩ペースにはテレビ付きソファー、ハンモック、そしてたくさんの漫画本など、今時のスーパー銭湯には欠かせない要素が満載。一方、私は今回岩盤浴を利用しなかったのですが、趣向の異なる4種類の部屋に分かれているらしく、また専用の休憩室も利用できるなど色々充実しているようです。
近年開業する温浴施設は、テレビ付きソファーの他、ビーズクッションやハンモック、漫画本の大量蔵書、そして岩盤浴と、お風呂以外のリラクゼーションに関して共通する特徴を兼ね備えていますね。


岩盤浴エリアの先にある階段(もしくはエレベータ)で2階へ上がると、ようやくお風呂にたどり着きます。
脱衣室は広くて明るく清潔感に溢れていますが、ロッカーややが固まった形で設置されているため、混雑時は他のお客さんとの干渉しやすくなります。一方、ドレッサールームは広く、ドライヤーもたくさん用意されているので、ストレスなく身支度を整えることができるでしょう。

そして温泉マニア的な観点で気になったのが、脱衣室をはじめとした館内に温泉分析表の掲示が無いこと。後述するように露天風呂にはそれらしきものが掲出されているのですが、素人が訳も分からず抄出したような数値や用語ばかりで、主要なイオンの数値など肝心なデータが記されていないため、個人的にはちょっと不満です。もっとも、そんなデータを気にして入浴する客なんてほとんどいないでしょうけど、一応温泉法では施設内の見やすい場所に分析表を掲出する規定があるので、できればその通りにしていただきたいものです(他の温泉浴場でも運営実績のある会社が関わっているんですし…)。

以下、浴場内の画像は公式サイトからお借りしました。

今時の新しい浴場ですから内湯は明るく開放的でノビノビとした入浴環境が確保されています。
入って右側に配置されている洗い場にはシャワー付きカランが約30か所設けられ、全てに仕切り板がついているので、隣客との干渉を気にせず利用できます。シャワーの圧力も最適。もちろんシャンプー類完備。しかも各地の温泉によくある馬油やアロエといった安物の業務用リンスインシャンプーではなく、「ラ・アンジュラグ ヴェール」というちょっぴり品質の良いものが備え付けられていました。

洗い場と反対の左側には、オートロウリューの高温サウナや、泥塩を塗るミストサウナ、水風呂、そして真湯のマッサージ風呂、シルク風呂など、非温泉ながらもバラエティー豊かな温浴設備がまとまっています。お湯の中に微細な気泡を放つことでお湯が白く見えるシルク風呂も最近の温浴施設ではよく設置されていますね。

なお内湯の温泉浴槽は洗い場と同じ右側の窓際に配置された「ぬくもりの湯」ひとつのみ。しっかり循環濾過されており、後述する露天風呂のお湯と比べて色が薄く透明度が高いため、マニア受けはあまり良くないでしょうけど一般の方には十分くつろげるかと思います。

露天風呂には自家源泉を活かした浴槽が3種あります。


最も大きな温泉浴槽「くつろぎ湯」は、後述する「あつ湯」から流れてくるお湯を受けると同時に、循環湯か新鮮源泉のいずれかを供給することで、万人受けする適温が保たれています。なお「あつ湯」のお湯よりわずかに透明度が高く、しかも赤みが若干強いように見えました(酸化が進むためでしょうか)。


「くつろぎ湯」と隣接している「あつ湯」は、源泉100%かけ流しを標榜している浴槽。自家源泉を加温した上、加水や循環など行うことなく浴槽へ供給しているようです。「くつろぎ湯」へお湯を落とす構造上、ちょっと熱めの湯加減に設定しているのかもしれませんが、とはいえ私の体感では両者に大きな温度差は無かったような気がします。
「あつ湯」の湯口から出てくるお湯は(私の体感で)48℃前後。その湯口付近を触ると、オレンジ色の澱が指に付着しました。「あつ湯」浴槽のお湯はやや緑色を帯びた黄土色を呈しながら弱く濁っていますが、同じ東葛地域の他の化石海水型温泉よりも濁り方が薄く、最も濁っているこの浴槽においても底がしっかり目視できる程度です。こうした薄さは味覚面にも表れており、湯口から出てくるお湯をテイスティングしてみますと、はっきりと塩辛いのですが、でも強烈に塩辛い温泉が多い柏界隈のお湯の中では比較的マイルドでした。この他、いかにも化石海水型の温泉らしい弱い金気味と匂い、出汁味、臭素臭、そしてヨード臭が感じられました。なお消毒処理が行われているはずですが、消毒らしさは特に気になりません。湯中では食塩泉的なツルスベの滑らか浴感と少々の引っ掛かり浴感が混在しながら肌に伝わってきました。濃い食塩泉ですので当然ながら非常に力強く火照り、まだまだ寒い2月末でも湯上がりはしばらく外套要らずで過ごせました。

この他、露天ゾーンには寝ころび湯で温泉(循環)が使われています。
自家源泉を使った浴槽が3つあり、しかも1つは温泉をかけ流しているのですから、かけ流し浴槽に人気が集中するかと思いきや、訪問時に最も人気を集めていたのは、温泉を使っていない「ファイテン炭酸泉」というお風呂でした。私は利用していないので何とも言えませんが、どうやらファイテンの装置で処理した水を温めて炭酸風呂にしているようです。入り心地が良いのか、あるいはテレビが設けられているからなのか、この炭酸風呂はお客さんで常に賑わっており、一方で温泉かけ流しは誰もいない時間もあり、せっかくの自家源泉が手持ち無沙汰状態でした。我々マニアが考えるほど世間はかけ流しの温泉にあまり関心が無いのかもしれません。

さて更衣室のところでも申し上げましたが、館内に分析表の掲示が見当たりません。その代わり、内湯温泉浴槽や露天風呂の傍に説明看板が立っているのですが、温泉素人の担当者が訳も分からず関係書類から文言や数値を適当に拾い上げ、誰も推敲しないまま看板業者に発注しちゃったのではないかと思われるほど拙い内容なので、これをどう捉えたらよいか困ってしまいました。例えば「「泉質はナトリウム塩化物泉」は「熱の湯」と呼ばれ・・・」といったように「は」を重複させて不全な言葉遣いになっていたり、あるいは「重炭酸そうだ」という今時使わない表現が用いられていたり、微量な成分の記載があるのに主成分であるNa+やCl-の数値は表記されていなかったりと、ツッコミどころが満載でした。分析表の原本は必ず所有しているはずですし、せっかく良いお湯なのですから、是非とも掲出をお願いしたいところです。

いろいろと辛口な指摘が多くなってしまいましたが、これも偏に良い温泉施設であるからこその愛情や期待の表れですから、もし関係者の方がご覧になっていましたら、どうか気を悪くなさらず、前向きに評価している利用客の声として受け止めてくださいますと幸甚です。

使い勝手が良く、施設もバラエティーに富み、その上自家源泉をかけ流しているという、利用価値の高い温泉スーパー銭湯でした。近いうちに再訪するかと思います。


含よう素-ナトリウム-塩化物温泉
(本文で述べた理由により分析表の転載できず)

千葉県流山市向小金1丁目272-8
04-7197-5226
ホームページ

7:00~24:00(最終入館23:00) 3・6・9・12月の第3木曜定休
平日780円、土日祝900円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

コメント (7)
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