温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

房総半島 入浴できない鉱泉めぐり

2024年02月12日 | 東京都・埼玉県・千葉県
(2023年9月訪問)
今回の記事は久しぶりに小ネタを取り上げます。房総半島にはマニア受けするような、入浴できないけれども興味深い鉱泉がたくさん湧出していますが、今回はその中でも比較的見つけやすく訪問も容易な2ヶ所をご紹介します。

●大多喜町某所のガス井戸
夷隅郡の大多喜町と言えば、千葉県内に地産地消の天然ガスを供給している都市ガス会社「大多喜ガス」の名称として、千葉県内では有名かと思われます。いすみ鉄道の大多喜駅前には「天然ガス記念館」もあり、また当地は房総エリアにおける天然ガス掘削発祥の地でもありますので、大多喜は天然ガスの街と言っても過言ではないでしょう。

房総エリアの地下には膨大な天然ガスが埋蔵されていますが、ガスだけで湧出することはなく、水溶性ガスとして鉱泉と一緒にメタンガスが地下から上がってきます。温泉マニアとしてはガスと一緒に存在しているこの鉱泉が目当て。


大多喜町の中心部から養老渓谷方面へ西進し、山間部の集落に入って細い路地を進んでゆくと、上画像のような、飛び石で川の対岸へ渡る長閑な場所に行き着きます。ここをちょっと下りてみると・・・


丸いトタンの屋根で覆われた井戸を発見。一定時間毎にジーっという電磁音が聞こえるので、ポンプで汲み上げているのでしょう。この井戸の中を覗いてみると・・・


ヒューム管の井戸にはタールのような黒い鉱泉が張られていました。表面には白くて細かい泡が浮いています。
ご当地の観光案内地図ではこの井戸を「ガス井戸」と称しており、おそらくはメタンガスを伴いながら、この黒い鉱泉が汲み上げられているものと思われます。この黒い鉱泉に触ってみますと、強いツルスベ感が伝わり、口に含んでみるとほろ苦味が感じられました。いわゆる黒湯の類であり、いわゆるモール泉のようなタイプの鉱泉です。でも「ガス井戸」という名前のわりには、メタンガスの存在を感じさせるような匂いを嗅ぎ取ることはできませんでした。私の鼻が悪いだけかな。


井戸内の鉱泉の水温は18.2℃。


井戸から川へちょっと下ると、井戸の水が川へ排出されている箇所があり・・・


その水を手にしてみると、この画像でもわかるほど濃い茶褐色を呈していました。
暑い日にこの鉱泉を浴びたら気持ち良いだろうなぁ。


●増間(真杉)鉱泉
続いて、南房総市の旧三芳村エリアへやってまいりました。旧三芳村の増間地区には平家の落人伝説が残ってるそうですが、この増間地区には温泉マニアが喜ぶような鉱泉の跡も残っており、いまでも鉱泉が湧き続けているんだそうです。


鬱蒼と茂る木々の奥へ入ってゆくと・・・


コンクリブロックで組まれた筒状の構造物を発見。


上部に「真杉鉱泉」と記されたこの構造物の下部には蛇口が取り付けられており、開けてみると・・・


無色透明の鉱泉が出てきました。
この鉱泉は増間鉱泉と呼ばれたり、真杉鉱泉と呼ばれたり、あるいは三杉鉱泉と称されたり、名称には何パターンかあるようです。かつて当地にはこの鉱泉で湯治をする鉱泉宿があり、皮膚疾患に効能があったそうですが、関東大震災の頃に閉鎖されてしまったようです。


蛇口直下の温度は23.2℃。湧出時の温度はわかりませんが、温泉を名乗るのであれば1.8℃足りませんね。ギリギリのところで冷鉱泉に分類されてしまいます。
上述した大多喜町の「ガス井戸」で湧く鉱泉は黒いモール泉のようなタイプでしたが、この鉱泉は無色透明で、はっきりとしたタマゴ味とタマゴ臭が感じられました。いわゆるタマゴ水です。総硫黄の量が分からないので何とも言えませんが、もし総硫黄が2.0mg以上あれば単純硫黄冷鉱泉に分類される泉質かと推測されます。この鉱泉も暑い日に浴びたらさぞ気持ち良いことでしょう。

房総エリアの鉱泉はまだまだ面白いところがたくさんありますので、また訪問する機会があれば取り上げます。

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コメント (2)
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