温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

老神温泉 吟松亭あわしま

2018年06月08日 | 群馬県
 
前回記事に引き続き群馬県北毛の温泉を巡ります前回記事の白根温泉から国道120号を沼田方面に戻ると、沿道随一の温泉地である老神温泉に辿り着きます。拙ブログでも何度か取り上げていますが、今回は当地屈指の規模を誇る「吟松亭あわしま」に立ち寄り、日帰り入浴を楽しんでまいりました。
当地の温泉宿の多くは川と並行に伸びる細い道に沿って建ち並んでいますが、こちらのお宿はそこから国道側へ坂を上がった温泉街を見下ろす高い場所に位置しており、付近には旅館案内所や市営無料駐車場などがあります。


 
私が駐車場へ車を停めた際にたまたま玄関から出てきたスタッフの方に「日帰り入浴は大丈夫ですか?」と尋ねたところ、笑顔で快く受け入れてくださいました。
フロントで湯銭納め、とても広いロビーを進み、まずはエレベータで下のフロアへ。


 
そして萌黄色の暖簾の先に延びる階段で更に下ります。


 
下りきった先には、いまどき珍しいレトロなゲームの数々が置かれたゲームコーナーが、ピコピコと電子音を鳴らしながら、お客さんが遊んでくれるのを待っていました。



ゲームコーナーの隣には小さな休憩スペースが設けられ、お水のサービスが用意されていました。後で湯上がりに使わせていただくことにしましょう。



通路の突き当りがお風呂の入り口。浴室は2つあって、どうやら時間による男女入れ替えのようです。私の訪問時は、左側の浴室に青い暖簾が掛かっていました。広くてきれいで使い勝手の良い脱衣室を抜けて浴室へ。


 
私は冬に訪れたため、浴室は湯気が篭り気味でした。見にくくてごめんなさい。とはいえ室内左側の大きな窓から降り注ぐ陽光のおかげで、室内は明るく、気持ち良く使えました。室内右側等に洗い場が配置され、計9基のシャワー付きカランが取り付けられています。シャワーから出てくるお湯はおそらく真湯です。


 
内湯の浴槽は(目測で)2m×4mほどの大きさ。縁には木材が採用され、浴槽内はタイル貼りです。奥の湯口から温泉が注がれ、窓下の溝へオーバーフローしていました。浴槽の大きさに対してお湯の投入量がやや少ないように見受けられたのですが、湯加減はちょうどよく、しかも内湯は掛け流しですので、私はこの浴槽でゆっくり湯浴みを楽しませていただきました。


 
日本庭園風に設えられているこの露天は、冒頭で申し上げたようにこちらのお宿は温泉街を見下ろす高い場所にあるため、入浴しながら楽しめる眺めもなかなか。眼下を流れる片品川やその向かいに聳える山々を眺めながら、開放的な環境でゆったり寛げます。季節により楽しめる景色も変わってくるのでしょうね。私は冬に訪れましたから、向かい側の山は雪化粧をしていました。


 
露天の浴槽は岩風呂。10人は同時に入れそうな大きさがあります。部分的に東屋で護られていますから、多少の雨なら凌げるかと思います。岩積みの湯口から注がれているお湯に触れてみると、熱いお湯と適温のお湯の2筋が湯口の中で合わさっているように感じられました。館内表示によれば、内湯は掛け流しですが露天は循環されているそうですから、湯口から出てくる2種類の温度のお湯は、どちらかが循環湯で、もう一方は新鮮源泉のお湯なのでしょう。
なお露天ゾーンには離れのサウナ小屋も設けられているのですが、今回は利用しませんでした。

こちらのお風呂に引かれているお湯は、老神温泉の8号泉と10号泉のブレンド。無色透明で湯の花などは見られず、老神の別源泉で得られるようなイオウ感も乏しいのですが、その一方で、ゴムボールのような匂いやおが屑のような香りがほのかに嗅ぎ取れ、わずかに金気のような感覚も得られました。ただし、こうした知覚的特徴は内湯で確認できたのであり、露天ではあまり感じ取れません。なお塩素系薬剤による消毒を実施しているそうですが、私の入浴時は特に気になりませんでした。浴感に関しては弱ツルスベといったところで、言い換えれば癖のないアッサリとしたタイプと表現できましょうか。



館内には貸切風呂もあり、別料金で利用可能のようですが、私は利用しておりません。なおこの貸切風呂は掛け流しと循環の併用とのこと。また最上階には露天風呂が備わった客室もあるようですが、そちらのお風呂は循環なんだそうです。

大きくて綺麗なお風呂であり、しかも四季折々に姿を変える露天も広々していますから、酔狂人だらけの温泉マニアはともかく、一般的な観光客にはもってこいかと思います。


8号泉
単純硫黄温泉 35.8℃ pH6.7 50.7L/min(動力揚湯) 溶存物質0.42g/kg 成分総計0.44g/kg
Na+:83.9mg(68.57mval%), Ca++:27.3mg(25.56mval%),
Cl-:69.9mg(36.71mmval%), SO4--:111mg(42.93mval%), HCO3-:51.9mg(15.84mval%), HS-:0.7mg,
H2SiO3:61.0mg, H2S:1.5mg,
(平成28年7月7日)

10号泉
単純温泉 53.3℃ pH8.0 256L/min(動力揚湯) 溶存物質0.52g/kg 成分総計0.53g/kg
Na+:126mg(77.93mval%), Ca++:26.8mg(19.06mval%),
Cl-:105mg(42.40mmval%), SO4--:133mg(39.60mval%), HCO3-:51.9mg(12.18mval%), HS-:1.4mg,
H2SiO3:59.8mg, H2S:0.2mg,
(平成28年7月7日)

8号泉・10号泉の混合
単純温泉 52.7℃ p7.5 湧出量測定せず 溶存物質0.54g/kg 成分総計0.54g/kg
Na+:132mg(79.79mval%), Ca++:25.7mg(17.80mval%),
Cl-:115mg(44.67mmval%), SO4--:140mg(40.42mval%), HCO3-:42.8mg(9.71mval%),
H2SiO3:61.8mg,
(平成28年7月7日)

加水なし、冬季のみ加温あり、露天風呂のみ循環あり、塩素系薬剤を使用

群馬県沼田市利根町老神603
0278-56-2311
ホームページ

日帰り入浴時間13:00~18:00?(正しい時間はお宿へ直接ご確認願います)
1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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片品温泉 旅館うめや

2018年06月05日 | 群馬県
 
武尊山の東麓に位置する片品温泉は、様々な規模の宿泊施設が営業しており、近隣にスポーツ施設も整っているため、季節に応じたスポーツを楽しむレジャー客をはじめ、スポーツ関係の合宿などでも多く使われています。当地の人気を支えている要素の一つに温泉も含まれているかと思われますが、今回はそんな片品温泉のお湯に入るべく、国道沿いの温泉旅館「うめや」で日帰り入浴を楽しんでまいりました。
道路に面して立っている看板に書かれた「源泉元湯」というワードが、温泉マニアの心をくすぐってくれます。国道に沿って平屋の本屋、その奥に鉄筋の客室棟が建ち並んでいるようです。


 
お宿の公式サイトに日帰り入浴が可能である旨が記載されていたので、そのことを信じ本屋の帳場を訪ねると、きちんと対応してくださいました。浴室は帳場の斜め前です。浴室出入口付近の壁には、加水加温循環消毒を行っていない旨が掲示されていました。ますますお湯への期待が膨らみます。


 
浴室は男女別の内湯のみ。後背に立っていた宿泊棟の規模から想像するに、さぞ大きなお風呂なのだろうと想像していたのですが、豈図らんや、脱衣室は数人入ると身動きがとれなくなりそうなほどコンパクトで、浴室自体も小規模旅館を思わせるような可愛らしいサイズでした。また、正面の浴槽上は大きな窓が設けられているのですが、駐車場に面しているため、窓には保温効果を兼ねた目隠しのフィルムが貼られており、お風呂の内側から外の景色眺めることはできません。窓から外光は入り込んできますが、このフォルムのため少々の閉塞感は否めません。
しかしながら、このお風呂はどうやら明確な意図があって小さな構造にしているようなのです。詳しくは後程触れます。


 
浴槽前の左右に洗い場があり、シャワー付きカランが計5基設置されています。


 
浴槽は横に細長く、奥行1.5m弱×幅4mほど。浴槽内部の手前と奥の両方にステップが設けられています。ここに張られているお湯は透明ながら淡いエメラルドグリーンを帯びており、泉質こそ異なりますが、その色彩の美しさは青森県の新屋温泉や長野県志賀高原の熊の湯を彷彿とさせます。


 
浴槽中央の湯口よりお湯が投入され、縁から少しずつオーバーフローしていました。お湯の投入量に比べて溢れ出る量が少ないように見えたのですが、浴槽内に穴が開いていたので、もしかしたらこの穴がオーバーフロー管につながっているのかもしれません。なお私が訪れた冬の某日、湯船には大きな柑橘類が二つプカプカと浮かんでいました。

エメラルドグリーンのお湯に鼻を近づけると硫化水素の匂いが嗅ぎ取れます。また湯中には硫黄を含む温泉でよくみられる黒い塊のような湯の花が浮遊しています。湯口のお湯を口に含むと、しっかりとしたタマゴ味とタマゴ臭が得られ、しかも苦く、唇など口の粘膜がビリビリ痺れました。なかなか個性の強いお湯です。炭酸イオン26.1mgという目を惹く数値の影響なのか、湯中ではツルツルスベスベの滑らかな浴感に包まれ、ちょっとぬるめの湯加減と相まって、いつまでも長湯したくなりました。分析書によれば湧出温度は約48℃らしいので、冬季に非加温のまま浴槽へ注ぐとぬるくなってしまうのかもしれませんが、私個人としては長湯仕様のぬるいセッティングも好きなので、このままでも良いかなと思ってしまいます。

館内の説明によれば、お風呂を内湯に限定しているのは、お湯の質を落とさないため。露天は外気に触れるやいなやお湯が劣化してしまうので、劣化しにくい内湯だけにしているんだそうです。ということは、浴室の比較的コンパクトな構造も、お湯のクオリティ維持を第一に考えた結果なのかもしれません。それだけお湯を大切にしているんですね。ただ、浴槽の容量に対して源泉投入量がやや少ないように感じられたのが気になるところ。もちろん調整できるのでしょうけど、もし少ないままで多くのお客さんを迎えた場合、お湯の鈍りがちょっと心配です。

とはいえ、無色透明の硫酸塩泉が主流な北毛エリアで、これだけはっきりと色を帯び、且つアルカリ性・炭酸イオン、そしてイオウのテイストが強く表れているお湯に入れるのは、非常にありがたいことです。当地で湯めぐりをしている時、ちょっとアクセントを加えたい場合に是非お勧めしたい一湯でした。


釈迦の湯2号
アルカリ性単純硫黄温泉 48.3℃ pH9.04 160L/min(動力揚湯) 溶存物質量記載なし
Na+:78.8mg(94.39mval%),
Cl-:50.0mg(36.04mval%), SO4--:21.8mg(11.62mval%), HCO3-:51.9mg(21.81mval%), CO3-:26.1mg(22.32mval%), HS-:3.0mg,
H2SiO3:73.0mg,
(平成12年6月26日)

群馬県利根郡片品村土出122
0278-58-7337
ホームページ

日帰り入浴時間不明
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5










コメント (1)
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白根温泉 加羅倉館

2018年06月01日 | 群馬県
 
前回記事に引き続き、群馬県北毛の温泉を巡ります。前回記事の幡谷温泉から国道120号線を北東へ進み、片品村の中心部を抜けて丸沼高原方面を目指すと、その手前に白根温泉という小さな温泉地があります。沿道にはそば処を兼ねた大きな露天風呂の入浴施設が営業しており、敷地が広くて看板なども目立っているため、白根温泉で入浴したい観光客の多くはこの露天風呂を利用する傾向にあるようですが、そこからちょっと丸沼高原側へ上がっていったところには昭和5年の老舗温泉旅館「加羅倉館」があり、こちらでも日帰り入浴が可能なので、今回はそのお宿でお湯に浸からせていただきました。拙ブログでは初登場ですが、私がこちらを訪れるのは十数年ぶり。実は、こちらのお風呂は私が温泉巡りに興味を持ち始めたきっかけになった一湯なのですが、詳しくはまた後程本文中で。

まずは駐車場に車を止め、赤い橋で国道と並行して流れる川を渡ってお宿の本館へお邪魔します。そして帳場で湯銭を支払い緑色の入浴券を購入します。


 
券を入手したら国道に戻り、道路の向かい側に建つ浴舎へ。


 
浴舎は無人なんですね。本館の帳場で湯銭を支払った際に券が手渡されたのは、支払い済であることを証明するためなのでしょう。玄関を入り、廊下を進んで階段を下りた先に暖簾がさがっていました。


 
以前訪問した時の更衣室は古臭かった印象があるのですが、その後リニューアルしたらしく、久しぶりに訪れてみると、足元にカーペットが敷かれた室内は明るくて広く、白く塗装された壁に絵画が飾られ、各種設備も整えられて、綺麗で使いやすい環境が整えられていました。


 
お風呂は内湯のみですが、天井が高くて広く、明かり採りの窓のおかげで明るい浴室は、室内とは思えないような開放感が得られます。この広々とした浴場は、以前訪問した時の記憶と同じまま。変わらぬ姿にホッとしました。また私が訪れたのは冬の只中でしたが、天井付近に設けられた窓により換気環境が良いため、冬のお風呂にありがちな湯気籠りがなく、快適に利用することができました。


 
白いタイル貼りの室内。壁に沿って洗い場が設けられており、シャワーからは温泉が吐出されます。



浴槽は(目測で)3.5m四方のタイル貼り。後述する金属製の筒から、無色透明で綺麗に澄み切ったお湯が大量に注がれ、縁からふんだんに溢れ出ています。湯温調整のために加水されているものの、れっきとした放流式の湯使いであり、その様は実に豪快。私の拙い文章や画像では伝えきれないのがとても残念です。
なお、白根温泉は川に沿って上下に施設並んでおり、冒頭で申し上げたそば処を兼ねた大きな露天風呂は「下の湯」と呼ばれているようですが、それに対して川上に位置するこちらは「上の湯」なんだそうです。


 

「加羅倉館」のお風呂で印象的なのがこの湯口です。太いステンレスの筒から滝のようにドバドバと室内に音を轟かせながら落ちてゆく太い湯筋は、シンプルながら非常に迫力があり、しかも以前訪問した時には金属筒の下部に白い析出がびっしりこびりついていたため、まだ湯巡りを始めて間もなかった当時の私は、湯量や析出の多さなどビジュアル的な迫力に圧倒されたものです。その後、各地の温泉を巡ってこれが決して珍しくないことを知るのですが、今回改めて訪問して湯口と対峙してみると、やはりこの湯筒から出てくるお湯の量に心が惹かれ、湯めぐりを始めた当時の初心を思い出しました。

無色透明でクリアなお湯からは、ほんのりタマゴ味と香りが感じられるほか、ゴムボールのようなイオウ感が少々、そして若干の甘みが含まれているようでした。泉質名こそ単純泉であり、加水も行われているようですが、それでも北毛によく見られる無色透明の硫酸塩泉的な特徴がよく現れており、決して単純ではない奥深いお湯であることが五感を通して伝わってきます。また僅かながらアルカリ性に傾いているためか、ツルツルスベスベの滑らかな浴感も実に心地よく、また良好な鮮度感、絶妙な湯加減など、様々なポジティヴファクターが相俟って、とても入り心地の良いお風呂が出来上がっていました。露天ではないためお湯が良い状態で保たれているのも嬉しいところです。

シンプルで奇を衒っていないからこそ、お湯と真っ直ぐに向き合えるんですね。再訪して良かったと心から思える素敵なお風呂でした。


上の湯1号
単純温泉 61.5℃ pH7.8 蒸発残留物0.63g/kg 成分総計0.69g/kg
Na+:174mg, Ca++:29.0mg,
Cl-:92.9mg, SO4--:234mg, HCO3-:75.8mg,
H2SiO3:68.3mg,
(平成18年6月2日)
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし

群馬県利根郡片品村東小川4653-21
0278-58-2251
ホームページ

日帰り入浴時間不明
430円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

コメント (3)
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