ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

ドン.シーゲル「中国決死行」

2008年10月20日 | 映画


DVDにはいっていたもう一つの映画、「中国決死行」
の方はどうだったかというと、これは結構面白い。
「ドン.シーゲル」という監督は、改めて、上質なアク
ション映画を撮る監督であると認識した。
また比べてしまうが、昨日もやっていた「ミッションイン
ポッシブル」の「ジョン.ウー」とはものが違う。
間違いなく、「ジョン.ウー」の方が受けるとは思うが。
それにしても、今時のアクション映画というのは、金
がかかっていて、映像も凝っていてしかも無闇にアク
ション場面が多い。
だから「アクション映画」なのだ、と言われそうだが、
ちょっと違うのではないか、と思う。
それらは、お金をかけたテーマパークのアトラクション
以上には見えないのだ。

「中国決死行」は、日本未公開だったらしいが、さも
ありなんと思わせるスター不在の映画である。
殆ど知らない役者だが、唯一「リー.ストラスバーグ」
という名前だけは知っていた。
が、今でも誰が、という程度の認識である。
1953年の映画ということだから、日本もこれから、
高度成長に向かって太平洋戦争のことは忘れて、とい
う時代であったろう。
だから、この手の映画が公開されなかった、というよ
りは、やはりスターのいない映画というのが大きな理
由であったと思う。
内容は、日本蔑視でもなければ、アメリカバンザイで
もない。
むしろ、中国に対する皮肉が一番印象的であった。
この時代にこういう演出をしたというのは、只者では
ない。

事実に基づいた話である、とあったが、全く聞いたこ
とはない。
それはどっちでもいい。
アクション映画として面白ければ。
戦争末期、中国に潜入しているアメリカ部隊に、墜落
した飛行機に乗っていた日本軍の大佐を捕まえろとい
う命令が下る。
その大佐を捕まえるまでの色々が、映画の中身である。
つきものの戦闘場面は、数分の銃撃戦があるくらいで、
派手なものを期待すると、完全に裏切られる。
考えてみれば、戦争映画の範疇で、これだけ戦闘場面
がなかったら、観客が喜ぶはずもない。
やはり、興行的には期待できない映画として日本で公
開されるはずもなかったのだ。
かといって、アメリカバンザイでもないし、日本以上
に単純明快さを求めるアメリカだから、本国でも同じ
ように受ける要素はないと言える。
しかし、しつこさのない歯切れのよい演出は、観てい
ても心地よい。
誰かの映画に似ていると思ったのだが、思い出した、
「サミュエル.フラー」の作品と同じテイストがある。
どちらも低予算で、スター映画ではないし、共通点は
多い。
B級映画の巨匠「サミュエル.フラー」と同じく、い
い意味でB級バンザイの監督「ドン.シーゲル」であっ
た。
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