経済なんでも研究会

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OPEC の 崩壊 (下)

2020-03-13 07:37:44 | 原油
◇ 心配な信用不安の発生 = ある意味では「新型コロナ肺炎のウイルスが、OPECプラスを崩壊させた」と言えるのかもしれない。さらに原油価格の維持という唯一共通の目的を失ったOPECそのものも、事実上は崩壊したとみることが出来る。その影響は多岐にわたり、きわめて大きい。まずサウジアラビアは、脱石油構想の原資となるはずだった「サウジ・アラムコ」の株価を維持できるかどうか。これに失敗すると、この構想を推進してきた実力者のムハンマド皇太子の立場も微妙になりかねない。

OPEC内部では原油の増産競争が始まり、利害が相反する。サウジアラビアとイランの関係は現在でも険悪だが、もっと悪化するに違いない。とにかく中東情勢は不安定の度を増すことになるだろう。原油価格の低落は、一見すると日本にはプラスのように見えるが、供給源が不安定になることは決して好ましいことではない。

最大の問題は、信用不安が生じないかどうか。アメリカの中小シェール企業は、大量の社債発行によって起業している。これらの低格付け債は複雑な仕組み債券として広く売られており、倒産する企業が続出すると信用不安を起こしかねない。リーマン・ショック時と同じ構造だ。また産油国のなかには債務不履行に陥る国も出てくる可能性があり、この場合も金融不安を惹き起こす。

原油価格の急落とOPECの事実上の崩壊。専門家のなかには、これを「石油時代の終わり」と指摘する人もいる。自動車のEV化に象徴されるように、世界は確かに“脱石油”に動いている。そうした環境のなかで、取り残されているのが日本。長いこと「脱石油、脱中東」と言い続けているが、実態は少しも変わらない。もしかすると、OPECの崩壊で結果的にいちばん被害を被るのは、日本かもしれない。

       ≪12日の日経平均 = 下げ -856.43円≫

       ≪13日の日経平均は? = 下げ≫

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