経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

爆弾を抱え込んだ 中国経済 (下)

2019-07-19 08:04:11 | 中国
◇ 「危ない銀行のリスト」が出回る = 中国社会科学院の調査によると、中国の債務総額はことし3月末でGDPの248.8%にのぼった。この比率から逆算してみると、実額は約225兆元(3500兆円)に達する。内訳は約6割が企業による債務、あと政府と家計が2割ずつを占めている。いずれの部門でも過去最大の水準、しかもなお急膨張中だ。金融機関の貸出額は、ことし1-6月だけで10兆元も増加した。

債務が最も大きい企業部門のGDP比率は156.9だった。そのうちの68%を国有企業が占めている。また上場企業の総負債額は、ことし3月末時点で38兆元となっている。ところが経済成長の鈍化で、最近はこの債務が企業経営にとっては重荷となってきた。社債の債務不履行は18年に1200億元、ことし1-3月にも600億元が発生している。

中国の景気対策は、ほとんどが地方政府の借金によって賄われている。このため地方政府の債務総額も、合計40兆元を超えたという見方が強い。また家計の債務は、ほとんどが住宅ローン。最近の住宅価格の値下がりで負担感が増し、個人消費を圧迫し始めたとみられている。

問題なのは、こうした過剰債務の不良債権化だ。金融機関の不良債権は18年末で2兆元。特に中小銀行の経営が危ぶまれている。内モンゴル自治区の包商銀行が倒産したこともあって、一部の地域では「危ない銀行のリスト」が出回り始めたという。人民銀行は中小銀行向けに3000億元の融資ワクを設けるなど対策に乗り出しているが、銀行の連鎖倒産が起きると金融不安が表面化する。政府が景気対策を進めれば、過剰債務が増えてしまう。と言って成長率が6%を下回ると、不良債権が激増し、金融不安という爆弾が暴発しかねない。

       ≪18日の日経平均 = 下げ -422.94円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

爆弾を抱え込んだ 中国経済 (上)

2019-07-18 08:26:35 | 中国
◇ 自動車と不動産が苦境に = 中国経済の成長鈍化が止まらない。国家統計局が15日発表した4-6月期のGDP実質成長率は、前期より0.2ポイント低下して6.2%となった。リーマン・ショック直後の不況時を下回る水準で、中国が四半期ごとのGDPを公表するようになった1992年以来の最低。習政権が目標としている6.0-6.5%の範囲内には収まっているが、これ以上減速すると「20年のGDPを10年の2倍にする」という公約は実現が難しくなる。

同時に発表された経済指標も、総じてよくない。鉱工業生産は1-6月間で前年比6.0%の増加。1-3月間の6.5%から減退した。特に自動車と半導体の減産が大きい。設備・インフラ・不動産投資を合計した固定資産投資は、1-6月間で5.8%の増加。これも1-3月間の6.3%増から、はっきり減少している。小売り売上高だけは1-6月間が8.4%の増加で、1-3月間の8.3%増をやや上回った。

輸出も1-6月間では1.3%の減少。1-3月間の1.4%増加からマイナスに転じている。ただ貿易統計をみると、少し奇妙な動きに気付く。貿易戦争の影響で1-6月間の対アメリカ輸出は8.1%の減少だった。しかし全体の輸出は0.1%増えている。これはベトナムなど東南アジア向けの輸出が急増したため。アメリカに向けた迂回輸出の疑いも、否定はできなそうだ。

新車の販売台数は18年に前年比2.8%の減少となったが、ことし1-3月期も11%の減少だった。また不動産もバブルがはじけ、北京や上海の住宅価格は4-9%下落している。100社を超す自動車メーカーの淘汰が始まっており、不動産業者の倒産も少なくない。自動車と不動産の立ち直りには時間がかかるから、成長率の鈍化はまだ続きそうだ。政府は対策に懸命だが、やり方を間違うと抱え込んだ“過剰債務”という爆弾が爆発しかねない。

                                (続きは明日)

       ≪17日の日経平均 = 下げ -66.07円≫

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

置き去りにされた 日本株

2019-07-17 09:55:41 | 株価
◇ なぜ株価の戻りが遅いのか = ニューヨーク市場ではダウ平均株価が2万7000ドル台に載せ、連日のように史上最高値を更新している。イギリス、フランス、ドイツの株価も、7月に入って年初来高値を更新した。置いて行かれたのが日本株。昨年末からの株価上昇率をみると、アメリカが15.6%、ヨーロッパが16.3%の値上がり。成長率の鈍化が心配される中国でさえ20.5%の上昇。こうしたなかで、日経平均株価の上昇率は8.4%にとどまっている。

なぜだろう。よく言われるのは、中国との関係が深いこと。米中貿易戦争もあって苦境に陥った中国経済の影響を、いちばん受けているのが日本企業だという現実。またFRBが利下げに進むと、円相場が上昇しやすい構造。さらに参院選後に本格化する日米貿易交渉。10月に予定される消費増税。こうしたなかで日本の企業業績が悪化しつつあることを、外国人投資家は特に警戒している。

もう少し基本的な問題を指摘する人も多い。たとえば人口が減少し、少子・高齢化の進行も速い。そのうえ景気が下降局面に入っても、日本の場合は財政・金融面からの対策を講じる余地がきわめて限られている。潜在成長力が落ちているうえに、有事の場合の防衛力も十分でないというわけだ。

東証の発表によると、18年度中に外国人投資家は5兆6000億円を売り越した。特に年度の後半にその勢いを強め、それが最近まで続いている。米中貿易戦争やアメリカの金融政策は、成り行きを見守るしかない。しかし世界不況の可能性が深まっている現在、日本としては景気対策をどうするのか。政府・日銀が“座して天命を待つ”姿勢だと、株価は上がらない。

       ≪16日の日経平均 = 下げ -150.65円≫

       ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

今週のポイント

2019-07-15 07:39:35 | 株価
◇ ダウ平均は2万7000ドル台を達成 = ダウ平均は先週410ドルの値上がり。とうとう2万7000ドルの大台乗せに成功した。パウエルFRB議長が「より緩和的な金融政策の必要性が高まっている」と、議会で証言したことが株価を押し上げた。この発言で、FRBが今月末の会議で利下げを決めることが確実に。市場では早くも利下げの幅と次の利下げ時期が、関心のマトになっている。

NY株は、まだ騰勢を持続するのだろうか。その行く手にみえる最大の障害物は、企業利益の縮小だろう。リフィニティブ社の調査によると、主要500社の4-6月期は0.4%の減益になる見通し。株価がこの障害物を乗り越えるためには、どうしても次の利下げが必要だ。こうして市場とFRBの心理的な駆け引きが、再び始まることになる。

東京市場は出来高も薄く、冴えない。日経平均は先週60円の値下がりだった。アメリカの金利が下がると、円は上がりやすい。中国経済の不調で、輸出が伸び悩み。原油価格も上昇してきた。そして韓国との不協和音。さらに消費増税の期限も近づいてきた。ただ参院選については、与党の勝利を織り込み済み。こうしたなかで外国人投資家も国内の個人投資家も、早めの夏休みに入ったような状態だ。

今週は17日に、6月の訪日外国人客数。18日に、6月の貿易統計。19日に、6月の消費者物価と5月の全産業活動指数。アメリカでは15日に、7月のNY連銀・製造業景況指数。16日に、6月の小売り売上高と工業生産、7月のNAHB住宅市場指数。17日に、6月の住宅着工戸数。18日に、6月のカンファレンス・ボード景気先行指数。19日に、7月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が15日に、4-6月期のGDP速報、6月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。なお21日は、参院選の投開票日。

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

瀕死の 原子力発電 (下)

2019-07-13 07:13:15 | エネルギー
◇ エネルギー計画は崩壊した = 津波対策では防潮堤のカサ上げ、テロ対策では原子炉から100㍍以上離れて監視・冷却が可能な施設を造らなければならない。この結果、13年時点では9000億円と想定されていた電力各社の安全対策費は、現在4兆8000億円にまで跳ね上がっている。当然、この費用は発電コストに加算され、電気料金に上乗せされる。つまり「発電コストがいちばん安いのは原子力」という通説は、覆されることになるわけだ。

政府は「原子力を将来にわたる基幹電源」と位置づけている。しかし現状から判断する限り、その可能性はゼロに等しい。また政府が基幹電源と位置付けている、もう1つの再生可能エネルギーも、強制買い取り制度が完全に裏目に出て、ほとんど増加していない。政府のエネルギー基本計画によると、30年には電力の20-22%を原子力で、22-24%を再生可能エネルギーで発電することになっている。だが、この計画は“絵に描いた餅”になってしまった。

原子力発電が減少し、再生可能エネルギー発電が伸びないとすると、あとは火力発電への依存を高めるしか方法がない。そうすると、石炭・原油・LNG(液化天然ガス)の輸入がさらに増大する。その結果は、輸入代金の支払いが増えて、景気にとってのマイナス要因が拡大するばかり。CO₂の排出も増え続け、地球温暖化防止に逆行せざるをえない。

日本経済にとっては、エネルギーの確保が最重要課題であることは言うまでもない。だが達成が不可能になったエネルギー計画はそのまま。折しもホルムズ海峡では緊張が高まっているが、もう何十年も言い続けられている「中東原油への依存度を下げる」ことなどなど、すっかり忘れられているようだ。責任官庁の経済産業省は、いったい何を考えているのだろうか。

       ≪12日の日経平均 = 上げ +42.37円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   

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