経済なんでも研究会

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困惑する経済界 : 中間選挙

2022-11-11 07:23:33 | アメリカ
困惑する経済界 : 中間選挙
2022-11-11-Fri CATEGORY: 政治・経済
◇ 共和党を支持していいのか? = 中間選挙の開票が進んだ9日、ダウ平均株価は650ドル近くも値を下げた。圧勝すると予測された下院で、共和党が意外な苦戦を強いられた。だから株価は下落した--というのが一般的な見方である。たしかに、この解説は当を得ている。しかし、それだけではない。歴史的に、経済界=共和党と考えられてきたが、近年は共和党の本質が大きく変わった。今後も共和党を支持して行くのが正しいのか、多くの経済人が頭を悩まし始めている。

たとえば共和党が上下両院で過半数を占めると、国債の発行が規制され大規模な財政支出が抑えられる。このことは金利の上昇を妨げるから、景気にとっても好ましい。多くの金融関係者はこう考える。また大企業や高所得者に対する増税も、議会を通りにくくなるだろう。この辺までは、従来と同じ共和党だと言える。

しかし最近の共和党は、もっと暴れるようになった。たとえば11年には連邦政府の債務上限問題がこじれ、国債が格下げされた。こんなことは困る。またトランプ政権は、当時しばしばFRBに圧力を加えた。もし現状でそんなことが起きると、FRBの引き締め政策が中途半端になりインフレが止まらなくなる。それも困る。

また全体として、中国に対する姿勢は共和党の方が厳しい。米中関係のさらなる悪化は、決して望ましくない。中国製品に対する輸入関税を引き上げれば、国内の物価がまた上がる。その一方、共和党の幹部のなかには「ウクライナ支援の縮小」を唱える人もいる。そんなことをすれば、EUとの関係が再びぎくしゃくしかねない。

最も排除しなければならないのは、2年前の大統領選挙時に起きた群衆の議会占拠のような事件。アメリカという国の評価を落とし、分断を深め、民主主義を危うくした。この事件に、トランプ前大統領の影響力が関与したことは確かだろう。こういう状況だから、共和党を無条件で維持するわけにはいかない。といって民主党に鞍替えすることは論外。では、どうする。その悩みが、株価動向にも表れていたのではないか。

        ≪10日の日経平均 = 下げ -270.33円≫

        ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

カギを握るのは 共和党反トランプ派

2022-11-10 08:04:11 | アメリカ
◇ バイデン大統領に思わぬ味方? = アメリカの中間選挙。下院は共和党がやや優勢、上院は伯仲。再集計や再選挙まであって手間取っており、最終結果が確定するまでには時間がかかりそう。それでも上下両院で、共和党が過半数を獲得する可能性はまだ消えていない。そうなればバイデン大統領が議会に提出する法案や予算それに人事案件は、上院でも下院でも足を引っ張られかねない。これからの2年間は政治が停滞するだろう。--新聞やテレビが伝える解説だ。

だが今回は、趣きをやや異にしている。それは共和党の内部も分裂していること。まだ主流はトランプ派が握っているが、反トランプ派の議員も少なくない。これら反トランプ派の議員は、たとえば移民受け入れ、人工妊娠中絶、銃規制、地球温暖化対策、医療制度改革、ウクライナ支援などの重要な政策で、トランプ派とは一線を画している。

このため共和党員ではあっても、問題によってはバイデン大統領の政策を支持する可能性もなくはない。特にトランプ前大統領が2年後に再出馬すると発表すれば、共和党内でもトランプ氏に対する警戒感が増大するだろう。すると党内の反トランプ派は、勢いを増すに違いない。その程度によって、アメリカの政治は大きく変わる可能性がある。

ただ残念なことに、いまの時点では今回の選挙で反トランプ派の議員がどのくらい当選したのか判らない。と同時に、トランプ氏が応援したトランプ派の当選者もまだ不明。これが判明すると、2年後にトランプ氏が再選される確率を占うこともできる。いずれにしても「民主・共和党間での大分裂、そのなかでの共和党の分裂」というアメリカの政治構造に変わりはない。

        ≪9日の日経平均 = 下げ -155.68円≫

        ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

韓国にも抜かれた 日本の賃金水準

2022-11-09 07:51:45 | 賃金
◇ 上がらない原因を究明すべし = 厚生労働省は8日、9月の毎月勤労統計を発表した。それによると、1人当たりの実質賃金は前年比1.3%の減少。これで6か月連続の減少となった。名目賃金である現金給与総額は27万5787円。前年比では2.1%増加したが、物価の上昇率がこれを上回ったため、実質賃金は目減りした。なお現金給与総額の内訳は、正社員が35万7039円、パート労働者が9万9939円だった。

日本の賃金水準は、過去30年間ほとんど上がっていない。こういう国は世界でも珍しい。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、1991年の時点で日本の平均賃金は加盟国中13位だった。それが21年には24位にまで低落している。この順位はドルに換算した数字を比較しているので、最近の円安を考慮すると順位は28位にまで下がるという。

この間、多くの国の賃金水準が日本を追い越していった。最近ではお隣り韓国にも抜かれている。2001年の時点では、日本の方が2倍以上も高かった。平均賃金だけでなく、たとえば最低賃金も、韓国の方が高くなっている。韓国の最低賃金は時給9160ウォン(約962円)で、日本は961円。さらに大学卒の初任給でみても、両国の差はなくなっている。

こうした状況下で、岸田内閣は企業に対して、賃上げを要請するだけ。賃上げした企業を税制面で優遇する方針も打ち出したが、これも小手先の政策。なぜ、もっと踏み込んで「賃金が上がらない根本的な原因」を追究しようとしないのか。政府や日銀の政策に誤りはないのか。政府に「これは一大事だ」という認識がないから、そこまで突っ込めないのだろう。

        ≪8日の日経平均 = 上げ +344.47円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

2人の 中央銀行トップ

2022-11-08 07:16:20 | 金融
◇ 親切・丁寧すぎ vs 独善・メンツ第一 = 「金融引き締めを緩める時期は、いずれやって来る。来月かもしれないし、再来月かもしれない。それは経済データしだい」「金利の最終的な高さは、これまでの予想より高くなりそうだ」--FRBのパウエル議長は先週2日、政策金利の0.75%引き上げを決めたあとの記者会見でこう解説。前段はハト派的、後段はタカ派的な発言で、市場は戸惑った。

だがよく聞いてみると、パウエル議長の発言は全く論理的。金利の上げ幅は縮小するが、金利の水準そのものは従来の予想よりは高くなる。こう言っているだけだ。ただパウエル議長は、ほかにも細かい事象を取り上げて延々と説明する。だから聞く人によっては、ハト派にもタカ派にも聞こえることがある。それだけ自分の考えを親切、丁寧に知らせようとしているわけだ。

「いまの金融緩和政策を継続する」「すぐに金利の引き上げや緩和政策の出口が来るとは考えていない」--パウエル会見より12時間ほど前、日本銀行の黒田総裁も記者会見で発言していた。アメリカが金利を上げ、日本はゼロ金利に固執。金利差が開いて、円安への圧力が増大する。しかし円安については「経済にマイナスであり、望ましくない」と言うにとどまった。

FRBは一貫して「インフレの撲滅が最優先」の姿勢を鮮明にしている。では日銀は、いったい何を最優先としているのだろう。それが判然としない。円安の行き過ぎで物価が上昇、国民の生活は苦しくなっている。それなのに為替介入という小手先でごまかし、基本的な手は打たない。少なくとも円安のメリットとデメリットを計量的に比較するぐらいは、やったらどうなのか。説明がなさすぎるから、独善的でメンツ第一主義だと思われてしまう。

        ≪7日の日経平均 = 上げ +327.90円≫

        ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2022-11-07 07:47:19 | 株価
◇ 中間選挙と消費者物価 = ダウ平均は先週459ドルの値下がり。水曜日にFRBが0.75%の利上げを発表した割に、下げ幅は小さかった。終り値も3万2000ドル台を、がっちり維持している。利下げはすでに織り込んでおり、むしろ10月に14%も上げたことへの反動だったのかもしれない。なにしろ10月の月間上昇率は、1976年1月以来46年9か月ぶりの大きさだった。

日経平均は先週95円の値上がり。ニューヨーク市場が軟調でも、追随せずに頑張った。終り値では2万7000円台をキープ。こちらの10月の上昇率は6.4%だったから、反動も起きなかったようだ。ただ海外からの買い注文は少なく、国内の個人投資家が好業績の銘柄を物色買い。それに企業の自社株買いが加わった。

アメリカでは7-9月期決算の発表がヤマを越えた。純利益ベースでは、予想を上回る企業が全体の74%に達している。ただし巨大IT企業と不動産関連は完全に業績が悪化、株式も売られている。こうした陰りが、これからどこまで広がるか。そして市場がさしあたり注目するのは、8日の中間選挙と10日に発表される10月の消費者物価ということになる。

今週は8日に、9月の家計調査、毎月勤労統計、景気動向指数。9日に、10月の景気ウオッチャー調査。11日に、10月の企業物価。アメリカでは10日に、10月の消費者物価。11日に、11月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が7日に、10月の貿易統計。9日に、10月の消費者物価と生産者物価を発表する。なお8日は、アメリカの中間選挙。

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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