経済なんでも研究会

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地球温暖化は防げない! : COP28 (下)

2023-12-22 07:28:51 | 環境
◇ 芳しくない日本の評判 = COP28の会場で、日本の評判はあまりよくない。口先ばかりで実行が伴わない国、という評価である。たとえば岸田首相は演説で「日本はCO₂排出対策を講じていない石炭火力発電所の新設はしない」と力説した。だが、いま稼働している石炭火力発電所を削減するのかどうかについては、全く触れていない。また「再生可能エネルギーを30年までに3倍に拡大する」ことに賛同したが、日本政府の計画だと2倍にも届かない。

「気候行動ネットワーク」という国際環境NGOが、毎年COP28に合わせて‟化石賞”を出している。地球温暖化対策に後ろ向きな国に与える不名誉な賞だ。日本はことしも受賞、これで4回目である。彼らからみると、日本はG7(先進主要7か国)のなかで唯一のダメな国。そのくせ日本企業は新興国に対して、温暖化対策の製品や技術を売りまくる。まず日本国内で使ったらどうだと、批判しているわけだ。

日本の電源構成をみてみよう。22年度の場合、火力は全体の72.7%、このうち石炭は30.8%を占める。再生エネルギーは21.7%、原子力は5.6%に過ぎない。そして30年度の目標は火力が41.0%、うち石炭が19%。再生エネルギーは36-38%、原子力は20-22%となっている。つまり政府の計画では、30年の再生エネルギーは1.7倍にしかならない。それなのに国際会議では「3倍」に賛同しているのだ。

産油国や新興国までが参加したCOP28では、化石燃料の廃止で合意できなかった。しかしG7はアメリカとフランスが主導して「石炭火力発電を禁止する有志連合」を立ち上げた。しかし日本は、ここにも参加しなかった。こういう日本の姿勢をみて、海外諸国がどのように感じるか。不思議なことに、COP28を取材した日本のマスコミはこんな日本の評判をほとんど伝えてこなかった。

        ≪21日の日経平均 = 下げ -535.47円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

地球温暖化は防げない! : COP28 (上)

2023-12-21 07:30:09 | 環境
◇ やっとのことで曖昧すぎる合意 = 地球の温暖化を食い止めようと、世界の国々がUAE(アラブ首長国連邦)の首都ドバイに集まった。COP28と呼ばれる第28回国連気候変動枠組み締結国会議である。だが、そこでまとまった成果文書をみると「およそ10年間で、化石燃料からの脱却を加速する」「再生可能エネルギーを30年までに、現状の3倍に拡大する」という合意だけ。「脱却を加速する」とは、なんと曖昧な表現だろう。再生可能エネルギー3倍も、すでに別の会議で決まった内容の引き写しだった。

当初の原案では「化石燃料の段階的な廃止を目指す」と書いてあった。だがサウジアラビアが強硬に‟廃止”に反対、産油国の多くも同調したため、こんな意味不明の表現になってしまった。欧米諸国は‟廃止”を主張したが、産油国のなかには「化石燃料そのものの表記に反対」の声も出て譲らず。島しょ国も原案の修正に抗議したが、結局は議長国の調停案を受け入れざるをえなかった。

それでもマスコミの約半数は、好意的な評価を下している。というのも会議の途中では‟化石燃料”の語句が全く抜け落ちたり、10年という期限の設定も危うくなっていたからである。それが‟脱却を加速”で、なんとかまとまった。だから評価できるという解釈も成り立つのかもしれない。しかし地球温暖化の阻止という目標からみると、この程度の合意ではほとんど効果が期待できないのではないだろうか。

地球の気温上昇を産業革命以前の1.5度以内に収めないと、状況は加速度的に悪化する。だが現実はすでに1.1度も上昇しており、これが洪水や干ばつなどの異常気象を惹き起こしている。それなのに世界の石炭使用量は、まだ増加中。再生可能エネルギーを3倍にすると言っても、そのための具体的な計画はない。そこへ‟脱却を加速”で、地球温暖化が止められるとはどうしても考えられない。

                        (続きは明日)

        ≪20日の日経平均 = 上げ +456.55円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

対照的だった ‟短観”と‟毎勤”

2023-12-19 07:57:11 | 景気
◇ 賃上げが物価高を超えるのは難しい = 日銀が発表した12月の短観(企業短期経済観測調査)は、明るく輝いてみえた。大企業・製造業の業況判断指数は3期連続の上昇でプラス12。大企業・非製造業はプラス30で、なんと32年ぶりの高さ。これまでマイナスに沈んでいた中小企業・製造業もプラス1となり、ようやく水面上に顔を出した。要するに、企業の景気は非常によろしい。

一方、厚生労働省が発表した10月の毎月勤労統計は、うす暗くよどんでみえた。1人当たりの実質賃金は、前年比で2.3%の減少。これでマイナスは19か月連続となった。現金給与総額は27万9172円で、前年比1.5%増加している。しかし物価が3%以上も上昇したため、実質でみるとマイナスになってしまう。要するに、家計は非常に苦しい。

企業の景気がよくなった原因は、いろいろ考えられる。たとえば企業努力による新製品の開発や新市場の開拓など。だが一般的にみて、円安や値上げの恩恵に浴している部分も少なくない。その半面、家計は円安と値上げによる物価上昇で、19か月間も実質的な収入を減らしている。要するに、円安と値上げは最終的にすべて家計が負担していると言ってもいい。

景気のいい企業がもっと賃上げをすれば、実質賃金がプラスになる。すると消費が増えて、企業の利益がさらに増える。これが岸田首相が言う‟経済の好循環”だ。しかし、その実現はかなり難しそう。人手不足で賃上げは進むかもしれないが、企業は人件費の増加分を値上げでカバーしようとする。だから物価も上がってしまう。家計の実質収入が恒常的にプラスになる可能性は、ないに等しいのではないか。

        ≪19日の日経平均 = 上げ +460.41円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2023-12-18 06:56:37 | 株価
◇ ダウ平均は史上最高値を更新中 = ダウ平均は先週1057ドルの大幅な値上がり。先々週から7日間の連騰で、終り値は3万7305ドル。水曜日からは3日続けて史上最高値を更新した。FRBが政策金利の据え置きを決定、来年には利下げが始まることがほぼ確実に。にもかかわらず、小売り売上高などが予想以上に堅調。この調子なら、いわゆる‟軟着陸”の可能性が高まった。市場には安心感が広がっている。

日経平均は先週663円の値上がり。先々週の大幅な下げを、半分ぐらい取り戻した。ニューヨークの盛況は追い風になったが、円高の進行が重荷に。アメリカの金利が低下したために、円の対ドル相場は1週間で3円近く上昇した。加えて自民党のパー券不正処理事件。特に外国人投資家は、政局の混乱を嫌気している。

いまのニューヨーク市場は、快晴の冬空。年末にかけても、雲ひとつ見当たらない。利益確定の売りをこなしながら、さらなる高みを目指す勢いだ。一方、東京市場はどんよりした曇り空。あす19日に発表される、日銀の政策も気がかりだ。マイナス金利政策に固執すれば、ますます動きがとれなくなる。修正すれば、さらに円高が進むだろう。

今週は20日に、11月の貿易統計、訪日外国人客数。22日に、11月の消費者物価。アメリカでは18日に、12月のNAHB住宅市場指数。19日に、11月の住宅着工戸数。20日に、11月の中古住宅販売、12月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。21日に、7-9月期のGDP確定値。22日に、11月の新築住宅販売。なお19日に、植田日銀総裁が会見。

        ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

追い詰められた 日本銀行

2023-12-16 06:44:25 | 金融
◇ マイナス金利政策を止められるのか = アメリカの中央銀行であるFRBは12-13日、FOMC(公開市場委員会)を開いて「政策金利を5.25%のまま据え置く」ことを決めた。またFOMC参加者による金利の見通しでは「24年は少なくとも3回の利下げ」が見込まれることも公表。さらにパウエル議長は会見で「政策金利はピークに近い可能性がある」と言明した。こうしたことから、市場は「引き締め時代は終わり。来年は5-6回の利下げも」という空気に包まれている。

市場は直ちに反応した。ニューヨーク債券市場では、10年もの国債の利回りが4.0%に低落。株式市場では、ダウ平均が3万7000ドルを突破して、1年11か月ぶりに史上最高値を更新した。SP500、ナスダックも年初来高値を付けている。一方、円の対ドル相場は141円台に急上昇。1日で3円以上も値上がりしている。当然ながら、日経平均は大きく値下がりした。

こうした状況のもと、日銀は18-19日に政策決定会合を開く。そこでの注目点は、長いことマイナスに抑え込んできた短期金利の上昇を認めるかどうか。いわゆるマイナス金利政策を解除するかどうかである。中国に続いて、アメリカやヨーロッパの景気も下降する可能性が大きい。そうなったときに日本が金利を引き上げることは、きわめて難しいに違いない。とすればマイナス金利の停止は、日銀にとって今回が最後のチャンスになるかもしれない。

アメリカの金利が下がるときに日本が金利を上げれば、円高が進むことはほぼ確実。企業の業績が下降し、株価も低迷するかもしれない。日銀はそれが怖ろしくて、これまでマイナス金利からの脱出が出来なかった。今回は勇気を奮って、最後のチャンスを活かせるのだろうか。決断できなければ、まだまだマイナス金利が続く。決断できれば、‟金利のある世界”への正常な第一歩を踏み出せる。

        ≪15日の日経平均 = 上げ +284.30円≫

        【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】       

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