経済なんでも研究会

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円相場は 上がる or 下がる?(下)

2023-12-15 07:33:42 | 円相場
◇ 140円を超える円高は企業に打撃 = 円相場を決める最大の要因は、日米間の金利差。その金利差は、両国の金融政策で決まる。たとえばアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)は13日、政策金利の据え置きを決定した。その結果、市場では「来年3月の利下げ」観測が有力となり、金利水準には下げ圧力が加わっている。一方、日銀は18-19日に政策決定会合を開く。仮にそこでゼロ金利政策からの離脱を決めれば、日米間の金利差は縮まり円相場は上昇する可能性が高い。

こうしてみると、年内は円高の公算が大きそうだ。しかし為替相場を決定する要因は、ほかにも沢山ある。たとえば低成長率、貿易赤字など。為替相場は一国の経済的な強さを反映するものだと考えれば、いまの日本円は弱くならざるをえない。またパー券問題で揺れる政局も、円にとっては売り要因だ。したがって年内に限っても、円相場の行くえを確実に予測することは困難である。

民間の経済調査機関は、いま24年末の円相場を予想して発表している。たとえば米ゴールドマン・サックスは150円、大和証券は123円など。だが今年末の数値さえ予測が困難なのに、1年先の相場が判るはずもない。各調査機関はお客に聞かれた場合に備えて、こうした数値を計算し発表している。もちろん理由も付けてはいるが、その不確かさについてはその調査機関がいちばんよく知っているのではないか。

それよりも日経新聞が主要77社の4-9月期について調べたところ「増益の47%が円安によるものだった」という結果の方が、ずっと役に立つ。なぜ急激な円高で株価が急落したかが判るからだ。また主要103社の想定レートは140-141円が36社で、いちばん多い。このため円相場が140円を超えて円高になると、大半の企業が円安による利益を失う。それだけ株価を押し下げる圧力も強まることになる。

        ≪14日の日経平均 = 下げ -240.10円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫   

円相場は 上がる or 下がる?(上)

2023-12-14 07:39:03 | 円相場
◇ 突然の円高で、株価は大幅安 = 円相場の動きが、相当に荒っぽい。11月半ばには1ドル=151円台にまで下落したが、今月7日には141円台に急上昇。株価は大幅に下落した。その後はまた145-146円台に値を下げ、株価も反発。だがFRBが13日、金利据え置きの決定をしたことで、142円台に上昇した。円相場は企業の業績を左右するし、輸入物価を変動させる。これから円相場は上がるのか下がるのか。非常に気になるところだが、専門家の間でも見方は割れているようだ。

円相場が150円まで下落した原因は、いろいろある。しかし最大の要因は、日米間の金利差が拡大したこと。FRBは昨年春から金融引き締めに転換、政策金利をゼロから5.25%にまで引き上げた。ところが日銀はこの間、ゼロ金利を死守。たとえば期間10年の長期金利は、アメリカの方が4%以上も高くなった。資金は金利の高い方へ流れるから、ドルが買われ円が売られたわけだ。

急激に円高となった原因は、日米間の金利差が縮小したこと。アメリカではインフレ収束の兆しが出て、FRBは来年3月にも利下げに転じるという観測が強まった。一方、日銀もゼロ金利政策からの離脱を試みるのではないかという見方が強まり、日米間の金利差がいくぶん縮小した。ところが、そうした見方は行き過ぎだという考え方が出現して、円相場は145円近辺にまで下落したことになる。

専門家の間では「超円安の時代は終わった」という見方が強い。しかし今後の見通しについては「日米間の金利差はさらに縮小するから、円は上昇に向かう」という予想。反対に「金利差はほとんど縮小せず、円は下落に向かう」という予想。この2つが拮抗しているように思われる。どちらが正しいかは、まだ判定不能。FRBと日銀の政策を注視して行くしかない。

                      (続きは明日)

        ≪13日の日経平均 = 上げ +82.65円≫

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 

崖っぷちの 岸田内閣 : パー券不正処理

2023-12-12 07:32:17 | 政治
◇ リクルート事件と重なる政権崩壊の構図 = 自民党5派閥によるパーティー券収入の不正処理事件。岸田首相は自らが派閥を離脱、また派閥によるパーティーの開催を禁止するなど、防戦に必死となっている。しかし1000万円以上の裏金を作ったといわれる松野官房長官と高木国会対策委員長の更迭は避けられない情勢。政治資金規正法の違反者は10人以上にのぼるとみられ、自民党内では国会終了後に検察が誰に対して事情聴取を行うかに最大の関心を寄せている。

この今回のパー券事件は、1988年に起きたリクルート事件と酷似している。リクルート事件は当時の江副社長が上場前の未公開株を、政治家や財界人などにばら撒いた贈収賄事件。宮沢蔵相ら数人の閣僚が辞任、竹下内閣の支持率は20%を割り込んだ。結局、竹下首相は89年4月に退陣、そのあと7月の参院選で自民党は大敗。野党に政権を奪われることになる。

ただ当時の検察は、政治家については藤波官房長官ともう1人の議員を起訴しただけ。すべてを立件すれば大混乱に陥るし、2人でも有罪に持ち込めば社会的制裁は達成されると判断したようだ。しかし今回も検察が、同様の判断を下すかどうかは判らない。裏金が1000万円でも10万円でも、規正法に違反した犯罪であることに変わりはないからだ。

岸田首相は「自民党が一致結束して対応しなければならない重要な課題」と述べている。ところが、この発言はリクルート事件に際して竹下首相が発した文言とそっくり。その時点で竹下内閣の支持率は19%にまで落ちている。岸田内閣の支持率は、どうなるのだろうか。とにかく、いまは検察の動きと、それが政局に与える影響に注目が集中している状態だ。

        ≪12日の日経平均 = 上げ +51.90円≫

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2023-12-11 07:28:24 | 株価
◇ 円高と政局不安で大幅安の日経平均 = ダウ平均は先週2ドルの小幅な値上がり。前半は下げたが、後半は上げて‟行って来い”の形となった。それでも終り値はことしの最高値を更新している。市場はこれまでFRBの利上げが遠のくという理由で、景気の減速を歓迎してきた。ところが景気の下降で企業の業績が悪化する心配も、しだいに強まってきている。先週の株価は、そのせめぎ合いなのかもしれない。

日経平均は先週1124円の大幅な値下がり。終り値は3万2300円にまで低下した。水曜日には大きく反発したものの、あとは大きく値を下げている。円高の進行が最大の要因。それに米中両国の景気減速、自民党のパー券不正処理問題による政局不安が重なった。内需株を買う動きもみられたが、大勢は売りムード。特に海外投資家は、政局を重視しているようだ。

FRBは12-13日に政策決定会合を開く。金利を据え置くことは、ほぼ確実。そのあとは景気の動向、いわゆる‟軟着陸”の可能性に注目が集まるだろう。一方、東京市場を取り巻く環境は変化しそうにない。円高はどこまで進むのか。また政局不安は、一大事にまで発展するのか。いずれにしても、秋晴れとはなりそうにない。

今週は11日に、10-12月期の法人企業景気予測調査。12日に、11月の企業物価。13日に、12月の日銀短観。14日に、10月の機械受注。15日に、10月の第3次産業活動指数。アメリカでは12日に、11月の消費者物価。13日に、11月の生産者物価。14日に、11月の小売り売上高。15日に、11月の工業生産。また中国が15日に、11月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。なお13日に、パウエルFRB議長が会見。

        ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
  

≪番外編 +3≫

2023-12-08 07:13:03 | なし
◇ マネー経済圏の急膨張がすべて 

・病室の天井を見つめながら、こう考えた。最近の世界経済で、最も大きな変化を遂げた事象は何だっただろうか。戦争の勃発が招いた物価の高騰、ゼロ金利から金融引き締めへ、AI(人工知能)の発展、米中の経済摩擦、宇宙開発競争・・・。いろいろあるが、極め付きは「マネー経済圏の急膨張」だったのではないか。

・モノやサービスを産み出すことで形成される実体経済。その裏には必ず金融経済が存在していた。だが、その大きさは実体経済の大きさに見合った規模。それが各国中央銀行の量的金融緩和で、爆発的に膨張した。FRBは最大9兆ドル、ECBは9兆ユーロ、そして日銀も750兆円の資金を市場に放出した。

・実体経済はそんなに大量の資金を必要としなかったから、放出された資金は市場に溜まる。それが株価や商品に向かって、値を上げた。そんなとき戦争が起こってインフレが加速。欧米の中央銀行は慌てて金融引き締めに転換するが、まだ資金の吸収が十分でないから、インフレは収まらない。政策転換のチャンスを逸した日本は、いま何とか転換しようと苦慮しているところだ。

        ≪8日の日経平均 = 下げ -550.45円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   

Zenback

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