我が家の隣人の外国人が
何を思ったか9月頃トマトの種を播いた
市場ではそろそろ品薄になる時期で
露地栽培のトマトは撤収の最中だろう
ちょっと外人さん
今ごろ種からというのは遅過ぎませんか
言葉が出てこないので
胸の内だけの思いである
ところが何週間か過ぎると
トマトの種がビッシリと芽吹く
早く間引い . . . 本文を読む
シャボン玉液をストローの先につけて静かに吹く
ふくらむ 膨らむ 大きくなる
ジャガイモのように二つ三つ引っ付いて
親子のように夕方の空を昇っていく
子どもは夢中になって次々にシャボン玉を飛ばす
表面に「夢」と書きたいところだが
いくら界面活性剤が入っていても
それはできない相談だ
いいさ 字を書くことはできなくても
空高くで弾けたとき思いを届けてく . . . 本文を読む
男郎花の姿は艶やかでありながら
末枯れ行く野原にすっくと立った雄々しさも
夕闇の中でも目立つ白い顔
名女形の坂東玉三郎を連想する
もちろん周囲の女郎花(おみなえし)は
黄色い声を張り上げてもてはやすが
しょせん君らとは付き合えないと
おとこえしは独自の世界を生きている
奥さんはもらわないの?
揶揄する声にも動じることはない
仲間は少なくても自然な . . . 本文を読む
白湯はむくみ(浮腫)の原因などと
たわけた説が出回ったととがある
ちょっと待ったは縁台将棋
白湯は大昔から健康長寿の源と・・・・
江戸時代の殿様が鷹狩の帰路に農家に立ち寄り
白湯をふるまわれて甘露甘露
茶を飲めない民百姓の日常は
たしかに白湯を飲むしかない
だがソレデイイノダ赤塚不二夫
トキワ荘でも白湯は湯冷まし回し . . . 本文を読む
2011.3.11の東日本大震災から12年2か月
あの時 石巻にもに水の壁が出来た
その6年も前に病を押して
指一本でキーボードを叩き
自意識の壁に挑んだ『自分自身への審問』
図らずも死者との壁を予感しようとは
辺見庸よ あなたは今何を思う
五体が朽ちても魂だけは残っているはず
あなたには沈黙の壁は存在しない
もう一 . . . 本文を読む
絶望の海に青い月が昇る
海霧が後退し混沌の海が明らかになる
人間は何万年もかけて蠢いてきたが
遂にまた絶望の海を目前にしている
もっと賢く進化すると夢見て来たのに
手にしたのは究極の鉄器だった
火と石斧に歓喜の涙を浮かべ
踊り狂った記憶はまだ能皮質にあるのに
月は嵐の予感に震えている
海霧は跡形もなく消え去ったというのに
ますます濃くなる原始の海 . . . 本文を読む
藤原新也の犬にたじろいだのはいつのことだったか
ほんとうに『メメントモリ』のなかだろうか
人間は犬に食われるほど自由だと呟いた男の
年老いた今をNHKのドキュメンタリーで再確認した
しかしニコンの望遠レンズを手動でブラしながら
鉄砲百合を撮っていたのは藤原新也の幻だ
黄色い息をはきながら死にゆくものの気配を嗅ぐ犬
それを己が食われるが如 . . . 本文を読む
どこかに笑顔が落ちていないかな
拾い屋のゲンさんは地面を見回す
タバコの吸い殻がたくさん落ちていた時代は去り
今はバス停の辺りにチラホラ
かがんで拾うのは街の美化のため
誰に頼まれたわけでもない単なるボランティア
ここまで生きてきて社会への恩返し
求めるのは街角に転がっている笑顔だけ
先月はとびきりの笑顔に出会ったなあ
ゲンさんは思わず思い出し笑い . . . 本文を読む
お亀蔦
(ウェブ画像)より
おかめ ひょっとこ お神楽の
たれ目の出番と期待をしたら
あなたの名前は お亀さん
お亀蔦とはびっくりこん
たしかに形はカメのよう
水底にひしめく子亀の群れが
うようよ泳ぐ暗い池
言われてみれば うなずくばかり
ちょっと待ったと異議申し立て
頬ふくらますお多福さん
おかめとお多福の間には
深 . . . 本文を読む
(ポピー)
(画像は「季節の花300」)より
さあ ポピーたちよ
いっせいに歌おう
丘の上 ひなげしの花で
うらなう あの人の心
橙色も 黄色も 白も
みんな思い切り口を開けて
アグネスチャン風に歌おう
青い空まで届くような高い声で
今日もひとりなんてショゲルなよ
みんなが 丘いちめんに広がって
来る 来ない 帰る 帰らな . . . 本文を読む
雪だるま
(ウェブ画像)より
森に囲まれた山間の村の昼下がり
雪だるまが陽光を浴びていた
朝まで降った雪がやんで
家を抜け出した少年が作ったものだ
雪だるまは身を寄せ合い
仲良さそうにしている
それなのにどこか寒々しい
後ろ姿にはどんな意味があるのだろうか
通りかかった主婦がそれを眺め
コウち . . . 本文を読む
いかだ
(ウェブ画像)より
つらい出来事が
ことばの筏に乗って
流れていく
つらい出来事って
なんですか
誰の身に起きたことですか
ぼくの事かも知れないし
あなたの事かも知れない
生きている総ての人かもしれない
ことばの筏に乗って
どこへ流れていくんですか
流れはゆるやかですか
ゆるや . . . 本文を読む
はじめに イソップ物語の一つを思いだしてください。
<あるところに、ひとりの王さまがいました。
王さまはいつも深い帽子をすっぽりとかぶり、人前で取ることはなかった。
なぜかというと、王さまの耳はロバの耳だったのです。
他の人に見せるわけにはいきませんでした。
その秘密を知っているのは、王さまの髪を切っている理髪師のみ。
もちろん王さまから口止めをされているので、理髪師は誰にもしゃべるこ . . . 本文を読む
オーロラ
(ウェブ画像)より
この光の源には
想像もつかない怪物がいるに違いない
潜めるように息を吐き
蛇の舌のようにあたりを探るのだろう
おまえは岩山か
おまえは冷え切ったみずうみか
よしよし表向きは
おとなしくしているようだな
雲も月も凍えた地球を
オーロラとともに診てくれない . . . 本文を読む
(2018・12・23使用画像)再掲
一度思い込んだら 梃子でも動かぬという顔だな
その意味では なかなか男らしいよ君は
今年も凄かったが 来年はもっと暴れるらしいね
まるで どこかの大統領みたいじゃないか
ぼくの前に道はない ぼくの前に道はできる
人でも秩序でも なぎ倒して見せる
ごつごつの岩に食い込んだ 木の根っ . . . 本文を読む