どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム306 『高田松原に埋めた恋』

2021-11-29 05:31:35 | ポエム

高田松原に隠しておいた思い出は

いまも陸前高田の海を漂っているだろうか

青春の甘くしょっぱい思い出は・・・・

 

松林をなぎ倒し大地を震わせた大津波

奇跡的に生き残った一本の松は

多くの人の思いをつなぎとめたが

 

ついに力尽きてモニュメントになった

青い嘆きと灰色の苦汁をまつわりつかせ

いまも復興のシンボルと目されているが

 

三つ編みの黒髪から覗いていた少女のうなじ

毛根の周囲には透きとおるためらいが

六月の風となって鼻腔をくすぐった

 

高田松原は思い出を埋めたまま流れ去った

いくら探し続けても欠片も見つからない

大海原の潮流に乗ってどこかへ運ばれたのか

 

思い出は新たな命を生み出さないが

せめて一本松の子孫は再生してくれ

塩漬けとなった松原の跡に戻れる日に

 

多くの人の願いとともに

たくましい再生の息吹を見せてくれ

香しいうなじのように蘇ってくれ

 

(奇跡の一本松の枝の挿し木と、マツボックリからの実生は逞しく育っている)

 

 

 

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2 コメント

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奇跡の一本松 (ウォーク更家)
2021-11-30 21:12:22
三陸へ旅行に行った際に、激しい風雨の中、奇跡の一本松を見に行きました。

津波のあとには何も残らないくらいの悲惨な災害でしたが、残された被災者がみんな同じ思いで復興していくためには、人間、やはり何か目に見えるシンボルが必要なんでしょうね。
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目に見えるシンボル (tadaox)
2021-12-01 00:30:20
(ウォーク更家)様、こんばんは。
実際に見に行かれたんですね。
しかも、風雨の激しい日に・・・・。
枯死した一本松を切断し鉄筋で繋いだ松は、風雨に耐えて立ち続けていましたか。
まさに、目に見えるシンボルの役目を果たしていたんですね。
胸が熱くなります。
残された被災者が、みな同じ思いで見上げ復興を誓った・・・・シンボルとはそういうものなんですね。
また、別のプロジェクト(住友林業)が松原の再生に取り組んでいるとのことで、こちらにも心を動かされました。
返信する

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