どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム122 『草夾竹桃の源氏名は』

2016-05-26 00:58:39 | ポエム

 

     草夾竹桃

    (城跡ほっつき歩記)より

 

 

あたしゃ昔 「おいらんそう」と呼ばれていたのさ

そうだよ あの花魁だよ

吉原の花形 江戸文化の徒花さ

善も悪も呑み込んだ 人間社会の源氏名なんだ

 

戦後十年が過ぎた頃 売春防止法が施行された

人権無視や女性蔑視 これらが改められたお陰で

花魁草の名も 使われなくなった

草夾竹桃とは唐突すぎて 未だに尻がこそばゆい

 

まあ 昔話はこれぐらい

それより あたしの美しさはどうなのさ

十七歳の頃の香しさが 匂ってくるようじゃないか

自画自賛だって? ハイその通りでありんすよ

 

女学校の教室は 顔を見合わせクスクス笑い

<清少納言こそしたり顔にいみじうはべりける人さばかりさかしらだち、

真名書き散らしてはべるほどもよく見れば、まだいと足らぬこと多かり>

紫式部日記の辛辣さに 我が身のサガを見る思い

 

あたしゃ女学生の身で すべてわかっていたよ

美しい花には すべてがあるって

フロックス・バニキュラータだって同じなのさ

花びらの真ん中の ピンクの濃さに気付かなかったかい

 

この世に花がある限り 生物すべてが満たされる

政治も経済も みんな花たちに任せるがいい

適度にまろやかで 適度にいじわるな

青い地球のまわる音が 聞こえてきそうな気がしないかい

  

  


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2 コメント

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学名「フロックス=炎」は見事! (tadaox)
2016-05-27 01:20:43
塚越様、いつもお世話になっております。

学名フロックスが「ギリシャ語で炎」を意味するものとは、知りませんでした。
なるほど、和名の草夾竹桃よりぴったりですね。

今年も猛暑が予想されていますが、こんなに可愛い花が身近にあれば、なんとか頑張れそうな気もします。
画像使用ありがとうございました。
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盛夏の炎 (塚越和夫)
2016-05-26 09:18:02
こんにちは。

今年も暑い季節が近づいてきました。

画像のものは千葉県野田市内の城跡付近で半ば自生していたものです。

梅雨明け頃から初秋にかけて人家近くや畑の端などで見かけることが多いと思われます。

木本の夾竹桃、百日紅などと並んで猛暑に負けず咲き誇る姿は疎ましくも羨ましい存在感があり、旺盛な生命力を感じさせてくれます。

学名のフロックスは「ギリシャ語の炎」だそうで、道理で熱気を感じるような次第でした。
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