どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

芭蕉の名句鑑賞⑨ 『名月や』

2024-12-23 00:02:00 | 俳句

名月や 池をめぐりて 夜もすがら

 

この句は「古池や・・」とともに取り分け知られた一句である。

古池や蛙飛び込む水の音・・は春の季語であるのに対し、名月や・・は中秋の名月だから秋の季語である。

 

意味は名月の美しさに見とれて夜通し池をめぐり歩いていたら、いつの間にか東の空がほんのりと明けてきた・・ということだろう。

 

月そのものを愛でるほかに池の水面に映る月影も眺めてはため息を漏らしたのかもしれない。

 

芭蕉が学んだ俳諧は洒脱な言葉遊びで成り立っていたが「おくの細道」の旅を続けるうちに自然が見せる不易流行の姿に<わび・さび・しおり・軽み>などの理念を確立していった。

 

当時は何人かの詠み人が共同で歌仙を巻いたが〈歌仙を巻くとは、連句の発句と脇の関係を表す言葉。発句は挨拶句とも呼ばれ、時と所を盛り込んで詠み、脇は発句の句柄に密着して返事を付けるという意味。

最初は懐紙を二つに折って上半分に挨拶句、下半分に脇と呼ばれる句を書いて連句が巻かれたがキリがないので限度を設けていた。

やがて挨拶句を〈発句〉として独立させ、〈付け句〉などは省略するようになった。

現在の俳句の誕生である。

 

芭蕉は俳諧の出だから歌仙を巻くのを好んだらしいが、陸奥から大垣に至る150日の旅の間に芭蕉を慕って寄り集まった弟子たちも不易流行の理念に傾倒して形式的にも〈俳句〉が出来上がった。

近代文学にまで昇華させた芭蕉たちの功績は、特筆すべきものであろう。

 

 

 

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (yamasa)
2024-12-24 02:40:23
こんばんは。
「名月や 池をめぐりて 夜もすがら」
こうしてみると、素晴らしい俳句が多いですね。
自然や風景を見る力や感性が一般の人とは違うのかなっと思ってしまいます。
素晴らしいです。
返信する
Unknown (クリン)
2024-12-24 19:13:07
誕生以来17音の中に限りない宇宙ともいえる世界が広がり始めましたよね💎⤴
今回のまとめ方もさすがくぼにわさまですっ🐻🍀✨✨✨
※歌仙を巻く、という語句を目にすると、なんとなく和菓子みたいだと思ってしまうお菓子好きクリンより🐻💛
返信する
重層的で奥が深い (tadaox)
2024-12-24 23:22:54
>yamasa さんへ
>こんばんは。... への返信

自然や風景を見る力や感性が一般の人とは違うのかなっと思ってしまいます。
素晴らしいです。

そうですよね。
ぼくも芭蕉の自然や風景を見る力や感性が一般の人とは違うのかなっと思っています。
なぜそうなのか、いつも理由を考えてしまいます。
現在に至るまでにたくさんの優れた俳句作家〈俳人〉が生まれましたが、一味ちがうんですよね。
とにかく重層的で奥が深いんですよね。
ありがとうございました。
返信する
17音の中に宇宙が・・ (tadaox)
2024-12-25 00:18:10
>クリン さんへ
>誕生以来17音の中に限りない宇宙ともいえる世界が広がり始めましたよね💎⤴... への返信

クリンさんのおっしゃる通り、芭蕉の俳句には17音の中に限りない宇宙ともいえる世界がありますね。
連句を愛し歌仙を巻くことを好んだ芭蕉がその過程で確立した形式が俳句なんですね。
<連句>という形式がかったるくなり<発句>を最重要視した。
<付け句>も知的ゲームの一翼を担っていたが芭蕉たち連句仲間も共通の認識を持ったのではないだろうか。
本文で「昇華」と書いたのは短期間で<不易流行>以外のいらざるものを振り落としていったと思ったからです。
またまた思い込み病が始まったったかな?

前回、迷惑メールの対処法でアドバイスいただきありがとうございました。
いろいろのケースがあって一回一回内容を吟味する必要があって悩ましいです。
返信する
俳句の誕生 (ウォーク更家)
2024-12-26 07:49:09
俳句の誕生は、他の人では成しえなかった、芭蕉の独創的な発明?なのでしょうね。

俳句は、日本人の美学であるシンプル化、削りに削って、行きついた究極の形式なのでしょうか。

でも、時々思うのですが、奥の細道の紀行文が無かったら、俳句単体でどこまで理解されたろうか?、とも思ったりします・・・(-_-;)

そう思うのは、私の俳句の読み込みが足りないせいでしょうか?
返信する
Unknown (tadaox)
2024-12-26 22:35:50
>ウォーク更家 さんへ
>俳句の誕生... への返信

いやいや、さすがの明察ですね。
「奥の細道」という紀行文があったればこその俳句ですよね。
道中の間に弟子たちとやり取りしたことが俳句という形式を定着させたのではないかと思っています。
それにしても芭蕉は先人の行跡〈歌枕〉を熟知していたから余人の真似できない独創的な俳句を作ることができたんでしょうね。
返信する

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