どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム21 『ホタルブクロの秘密』

2013-06-02 02:24:18 | ポエム

 

      ホタルブクロ

      (城跡ほっつき歩記)より

 

 

ある晩 南の空から星が降った

星は砕けて 奥山に散った

散った欠片は 蛍になった

蛍は秘密のメッセージを携えて 花に隠れた

 

宙(そら)からの啓示は 「怖れよ」だった

何も知らない花々は 受粉の構えでほほ笑んだ

蛍をかくまった花は 下を向いた

ホタルブクロは 憂いを帯びて蒼ざめた

 

村人の生活は 木の実を採り獣を捕ること

欲張った男は 鹿を追って崖から転落した

その夜 ホタルブクロが点った

夢の中で 全員がメッセージの一部を理解した

 

「山の命は 等しく敬え」

山の民は 頭蓋にひびく音声を記憶した

翌朝村人は 口々に噂しあった

天狗が現れた日の 下駄の音にも似ていた、と

 

山の神を怖れ 空に満つるものを畏れよ

樹木の霊を敬い 草や花を愛でよ

すべからく命を尊び 運命に謙虚であれ

宙の波動に同調し 蛍のように光を点滅させよ

 

ホタルブクロのメッセージを 読み解く人が現れた

砕け散った隕石に 時空のすべてが記されている、と

耳を澄ませば 内耳に届く声

目を見開けば 宇宙の果ての像

 

「怖れよ」の神韻に 「畏れています」と手を合わせる

 

 

  


コメント (6)    この記事についてブログを書く
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6 コメント

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神秘的なホタルブクロ (くりたえいじ)
2013-06-02 11:45:26
ホタルブクロというのは、なんて神秘的な姿なんだろうか、と感じさせますね。

この詩人も同様だったようで、素敵な詩作を試みてくれました。
「そうだ、そうだ !」と同調したくなる箇所がたくさんありますね。
というより、ホタルブクロを眺めつつ湧き出てくる言の葉がなんとも素晴らしい。
夢幻でありながら、現実の花々、または人々の囁きにも感じられます。

この花を撮影した人も、一種の詩人に違いありませんね。
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恥ずかしながら (小頭@和平)
2013-06-02 21:51:57
今晩は、塚越です。

自然に対する畏敬の念。
人間もまたその一部を構成している存在。

食料の三割以上が廃棄されているという現状。
生きるために必要な分だけ採る。

当たり前の自然の摂理。
宇宙の存在から見れば、ほんのささやかな人類の営み。

と、勝手ながら様々な想像の輪が広がりました。
いつも、ご紹介頂き御礼申し上げます。
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思いは同じようで・・・・ (窪庭忠男)
2013-06-02 22:41:44
(くりたえいじ)様、ぼくも好きな花の一つです。
いつも行く山小屋の近くにホタルブクロの咲く場所があって、散歩の途中で足を止めしみじみ眺めたものです。

今回、塚越さんの「植物図鑑」にホタルブクロを発見し、日頃感じていた感興を詩にしてみました。
うれしいコメントを戴きありがとうございました。
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自然に接して感じること (窪庭忠男)
2013-06-02 23:05:57
(小頭&和平)様、今回もお世話になります。
ちょうど今の時期、ホタルブクロが最も生き生きとするのではないでしょうか。

普段から野の花をさがし、レンズを向けておられる塚越さんには、画像を通して自然の美しさを教えていただいております。
これからも思いがけない発見を期待しております。
コメントありがとうございました。


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なんと! (知恵熱おやじ)
2013-06-04 20:24:59
「その夜 ホタルブクロが点った」

なんと神秘なフレーズだ。痺れたましたねエー。
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あっ! (窪庭忠男)
2013-06-05 01:32:02
(知恵熱おやじ)様、コメントありがとうございます。
うまく言えませんが、「あっ!」と思いました。
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