土筆とスギナ
(季節の花300)より
あの人は湘南に住んで
江の島の海を満喫していたな
えぼし(烏帽子)岩まで遠泳したり
こっそり素潜り漁をしたとも言っていた
漁業を営む人にとっても
漁業権をうんぬんするほどとは思えず
1、2匹モリで突いたのだろうが
遊び心を抑えられなかった口ぶりが懐かしい
杓子定規な生き方ではなく
呑み助特有のだらしなさもあったが
そこが魅力なのだと憧れをいだいた
多くの人に愛されたのも郁子なるかなと
海の男というだけではなく
山里にも親しい友がいたらしく
春になるとツクシ狩りに呼ばれるんだと
自慢げに話してくれたものだ
とどのつまり網の上でツクシをあぶり
たまり醤油につけて酒の肴にする目的だが
土筆パーティーと呼ぶ呼び名が羨ましくて
彼らの酒盛りに参加した気分になったものだ
家の近くの土手でふとツクシをみつけ
今は亡き友人の口ひげを懐かしむ
焼いた土筆に醤油をつけて口に運ぶと
髭もないのにプーンと香る胞子が唇を擽るのだ
自然を愛し、音楽を愛し、人を愛し、飄々と生きた・・・ときに気のおけない仲間でふらりと小さな旅に出たねー
いい時代だった
ときどき思い出しては、佳き人生だったなあと羨ましく思うと同時に、平々凡々ながら我らが日々も佳き哉と反芻するところです。