紅葉の志賀草津高原ルートをゆく(5)<山ノ内町>
292号を進んで行くと、かなり前方で立体交差になっているのが見て取れた。
標識から、下を通るのが403号であることがわかった。しかも左へ行けば小布施ではないか。
「決定!」
胸の内で叫んで側道を降りた。
降りてみると、憶えのある風景が飛び込んできた。頭上を通る国道のための橋桁が、妙な圧迫感をともなって語りかけてくるのだ。
それもそのはず、一週間前に野沢温泉に向かったとき見上げた構造物だ。
この前は、この立体交差をくぐった先で千曲川を渡ったのだ。
道理で親しげなわけだ。仲間を装ってカツアゲする上級生のように、腕をまわし、肩を圧してきた。
迷うことなく小布施・須坂方面に進路をとる。
お世話になった292号とはおさらばである。
葡萄、梨、林檎などの果樹園がつづく。平坦な大地が一面に広がっている。豊富な陽光と寒暖のはげしい気候が、豊かな稔りと豊かな富をもたらすのだろう。
立ち寄ったことのあるコンビニを通り過ぎると、『高井鴻山記念館』まで何キロという看板が出てきた。
「そうだ、今日はここをゆっくり観ていこう」
目的の場所まで決まった。
前回とは逆コースで、前回以上の晴天に恵まれた403号を走ることになった。
紅葉の志賀草津高原ルートは、意識の上でも完全に走り終わった。
明るすぎるほどの道の駅が、エンドマークとなった。
ドライブは続いているが、素朴な山ノ内町が記憶に残ったこともたしかだ。志賀高原のほとんどを域内に持つ、広く豊かな町なのだ。
温泉など観光スポットも多く、渋温泉の『金具屋』などという超有名旅館だってある。
山岳、高原、平野と地勢的に理想の配置になっているから、レジャー、林業、農業となんでもござれだ。
農村地帯で生産される野菜や果物を観光客に供することで、町の中の活性化が図られているのだろうし、今風に言えば「地産地消」のモデルにもなれそうだ。
山ノ内町の道の駅『北信州やまのうち』は、ひろいひろい町全体を周知させる宣伝部長だ。
そういえば、赤い羽根募金のために立っていた年配の男性は、町の役所にでも勤める役職者風に見えた。
こちらの思い込みかもしれないが、前途洋々の明るい表情が印象的だった。
写真を一枚添えて、草津からのドライブの締めくくりとする。
次回は『高井鴻山記念館』からのリポートを予定している。
(おわり)
とくにこの連載では写真の出来がよろしかったようですね。あの周辺の大気が澄んでいるためでしょうか、絵を眺めているだけで癒されるようです。
加えて、道中の観察眼が鋭く、仔細に情況などが描かれ、写真と文章の組み合わせが生きているようです。
ともかく、道々の事象や場所などの詳細な描写には感嘆します。あたしも長距離ドライブの経験はありますが、帰ったら、詳細は忘却の彼方って感じです。
次回、高井鴻山記念館での、あらためての氏に関する紹介を楽しみにします。