どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

自薦ポエム⑳ 『アースの明日』

2020-07-20 00:03:10 | ポエム

コスモスさん 何十億年も地球を見守ってくれてありがとう

ところで 今朝のアースくんは元気ですか

軍隊アリのように一列になって

耳元を通り過ぎていく足音が聴こえるのですが

コスモスさんの目には 何か見えますか

 

ああ 大陸を蛇行する大きな流れが幾筋も見えます

中国大陸にも アフリカや南米にもユーラシア大陸にも

赤黒く興奮した 軍隊アリの帯がうねっています

ときおり霞んで 何も見えなくなってしまうのは

黄砂や ハリケーンのせいかもしれません

 

コスモスさん ぼくはニッポン列島に横たわっています

長い間頭痛に苛まれて ベッドに寝たきりなのです

明け方になると決まって悪い夢が現れ 熱が上がるのです

目くらまし縞の政治家と 格子縞の教育者が現れ

鉄道線路のように まっすぐ走れと命令するのです

 

きみはアースくんのことが心配なの?

それとも きみ自身のことが?

まあ差し迫ったことを言えば きみは確かに高熱だね

足の先から頭のてっぺんまで発光しているし

胸のあたりが モヤモヤと電磁波に覆われているよ

 

コスモスさん ごめんなさい

ぼくの身は もう囚われの羊なのです

いまさら訴えても 原発の鎖は外せないのです

海溝沿いの震源ベルトが ダブルの衝撃を与えても

何も恐れることはないと嘯く村長に 身を委ねたのですから

 

きみの言葉が本音なら 潔い覚悟に敬服するよ

アースくんに話を戻すと 殺戮の兆候が絶えることはないが

弾圧する独裁が 生きながらえた例はない

軍隊アリは 軍規を解けばただの蟻なのさ

きみの弱音を アースくんは軽蔑してるかもしれないぜ

 

そうか恥ずかしい ぼくは単なる意気地なし

言葉の力を忘れていました

祈りの力を無視していました

思いの重みは 科学で実証されました

病院のベッドで  9.11ツインタワービルの崩落現場で

 

大気の乱れは止まないが アースくんは今朝も元気だよ

きみはナイジェリアの子供たちの目の輝きを見たか

ソマリアやシリア難民の 透徹した瞳の色を心に刻んだか

絶望から芽生える生命のエネルギーが 

眼窩からレーザー光となって照射しているではないか

 

コスモスさん ありがとう

地球の未来を 水晶玉に写してくれてありがとう

アースくんの鼓動が聞こえています

不整脈のように乱れることはあっても

アースくんの明日に 未来があることを信じています

 

(『アースの明日』2014/04/13より再掲)

 

 


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