どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

むかしの詩集とフォト日記(1) 「風葬」

2010-10-31 22:43:50 | ポエム

       (百舌鳥の早にえ)



      「風葬」



  それは夕暮れ前のことだった

  向こうの丘から畑を越えて

  木枯らしがずうっと吹きつづけていた



  空の色は薄かった

  林が枯れを深めていた



  鳥はまだ帰ってこない

  梢が冬の声で鳴いていた



  お祖母ちゃんを送っていった日に似ている

  西へ向かって行列が影のようだった



  軽くなりたいと思ったのはあの時だろうか

  雑木の枝に小さな体を横たえたのは・・・・



  鴉がきたので逃げ帰ったのだが

  あわてて何かを置き忘れてしまった



  いつも胸がすうすうするので

  探しに来たいと思ってはいたのだ


 





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4 コメント

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木枯らしに背中を押されて (知恵熱おやじ)
2010-11-01 16:28:08
何歳で生涯を閉じることになろうとも、人は誰でもまだ何か遣り残したことがあるようなあるいは忘れ物があったような想いが残るのでしょうね。

去りゆく者にも残された者にも・・・

とても身に沁みるような詩です。

私は若いときから、背中から追い立てられるような木枯らしの季節が好きでした。
怠け者の自分が叱咤されるようで。

百舌のはやにえ写真と風葬・・・絶妙のコンビネーションでその季節の肌触りを伝えてきます。

窪庭さんがもともと詩人だったことを改めて思い知らされました。
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山頭火の後ろ姿が・・・・ (窪庭忠男)
2010-11-02 01:23:28

(知恵熱おやじ)様、「木枯らしの季節が好き」とのコメントに接し、劇画『山頭火』の一場面を思い出しました。
コントラストの強い画面に、まだ若さの残る主人公の内面がヒリヒリと感じられて、今でも目に焼きついています。
返信する
素晴らしい詩文 (丑の戯言)
2010-11-02 11:36:19

季節感が凝縮された詩文ですね。
知恵熱おやじさんがおっしゃ。ょうに、
「もともと詩人だったこと」を再認識しました。

「お祖母ちゃんを送っていった日」も、くどくど表現せず、冬の到来を思わせるなんて……。
前文と締めくくりの中間で、ぎゅっと引き締めています。

こうした詩文を小生も書きたいと思うのですが、くどくどと説明してしまうようで、まだ勇気が出ません。
おおいに刺激してください。

返信する
詩と写真の遠距離恋愛? (窪庭忠男)
2010-11-03 00:05:02

(丑の戯言)様、コメントありがとうございます。
貴ブログに横溢する詩情を知る者としては、ご謙遜に過ぎると思いますが、それはそれとして順次<詩文と写真の響きあい>を探ってみたいと考えています。
それが新しい創造につながると信じて・・・・。
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