残照
「鼻」
天保七年の秋の夜
西空に鼻が垂れ下がった
二つの黒い鼻孔を眼のようにひらき
飢饉にくたびれた百姓たちの寝顔を覗き込んだ
腹の空くような風が吹くと
ピーッと障子を突き抜ける赤子の泣き声がした
おっかあはホウキ星の夢を見た
赤い箒で座敷を掃くと
家中に火がついた
抱きつかれて親父は眼が覚めた
小便に表へ出ると
軒先の糸瓜がぶらぶら揺れた
おらのヘチマはずいぶん痩せた
領主様のヘチマは米を食って元気じゃ
袴など取らずとも鼻でわかる
天保の秋の夜
西空に鼻が垂れ下がった
神様の糸瓜も
あんなにお痩せ申したんだべか
シュールだなー。でもフォークロアでもあるなあー
オラのヘチマは搾り取られて痩せた
はっははは・・・うーん大変だ
物悲しくも巨きく、なんかおかし味がいいですね。
(知恵熱おやじ)様、コメントありがとうございました。浅間方面に出かけていて、お礼が遅くなりました。
ところで、ジャワ島のムラビ火山が噴火し、噴煙が上空を覆って飛行機も飛べない事態のようですね。
天明・天保の飢饉も火山噴火による日照不足が原因だったようです。
災難をフォローする態勢は、現代の方が少しマシのようですが・・・・。