どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

むかしの詩集とフォト日記(2) 「鼻」

2010-11-04 00:31:19 | ポエム

       残照 



      「鼻」



  天保七年の秋の夜

  西空に鼻が垂れ下がった

  二つの黒い鼻孔を眼のようにひらき

  飢饉にくたびれた百姓たちの寝顔を覗き込んだ



  腹の空くような風が吹くと

  ピーッと障子を突き抜ける赤子の泣き声がした



  おっかあはホウキ星の夢を見た

  赤い箒で座敷を掃くと

  家中に火がついた



  抱きつかれて親父は眼が覚めた

  小便に表へ出ると

  軒先の糸瓜がぶらぶら揺れた



  おらのヘチマはずいぶん痩せた

  領主様のヘチマは米を食って元気じゃ

  袴など取らずとも鼻でわかる



  天保の秋の夜

  西空に鼻が垂れ下がった

  神様の糸瓜も

  あんなにお痩せ申したんだべか








コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« むかしの詩集とフォト日記(... | トップ | むかしの詩集とフォト日記(... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ヘチマが痩せた理由 (知恵熱おやじ)
2010-11-05 04:11:03
天保の夜の西空に垂れ下がった鼻!

シュールだなー。でもフォークロアでもあるなあー

オラのヘチマは搾り取られて痩せた

はっははは・・・うーん大変だ

物悲しくも巨きく、なんかおかし味がいいですね。

返信する
コメントに感謝 (窪庭忠男)
2010-11-07 21:33:58

(知恵熱おやじ)様、コメントありがとうございました。浅間方面に出かけていて、お礼が遅くなりました。

ところで、ジャワ島のムラビ火山が噴火し、噴煙が上空を覆って飛行機も飛べない事態のようですね。
天明・天保の飢饉も火山噴火による日照不足が原因だったようです。
災難をフォローする態勢は、現代の方が少しマシのようですが・・・・。
返信する

コメントを投稿

ポエム」カテゴリの最新記事