ナス
(城跡ほっつき歩記)より
茄子がいななく馬になる
それがお盆の摩訶不思議
そうなる仕掛けは花の色
この世とあの世の境目を
行ったり来たりの次元超え
茄子のぬか漬け歯茎で噛めば
骨の髄まで染みわたる
いらぬ入れ歯を吐き捨てて
親をとむらう暑気払い
生きてるからこそ風も吹く
一族の肖像たしかめて
日が傾くのを待ちわびる
真菰の台座に茄子の馬
小脇に抱えていそいそと
迎えの盆は気がはやる
米と水とを用意して
我が家にみちびく墓の前
ミソハギ桔梗にオトギリソウは
昔ながらの盆の花
ほっと息つく先祖の気配
昼間の熱気が居座る寺に
薄墨色のとばりが降りる
見えない世界を旅してきたか
提灯ともしてねぎらう子らに
読経の声と風の音
この静けさをいつまでも
懸念の思いを引き裂くように
新設道路が背後をえぐる
コンビニ・ゲーセン子供らが
うろうろ出入りの夏休み
<ふるさとは遠くにありて思ふもの
詩人の嘆きが身にしみる
<よしやうらぶれて異土の乞食となるとても
帰る場所にはあらざるか
ノスタルジアは生き延びる
いななけ紫紺の茄子の馬
目に焼きつけたふる里の
野原を駆けて袈裟めくれ
いずれ先祖の仲間入り
伝えていけよ茄子の馬
* 詩の引用=室生犀星『小景異情ーその二』より
花は果実になった時、それ自体もイメージからかなり飛躍した思いがけない姿を見せてくれがちですが、詩人はさらに人間の営みをそこに重ね合わせてドラマを見せてくれます。
ところが今回の茄子は珍しくも、花のイメージと🍆の実がぴたりと一致していて!
いいですね。茄子は花も実もなすじゃ・・・と詩もズバリ日本人の集合無意識を再認識させてくれます。
🍆の花はこの花しかない・・・という🍆花
ご先祖が🍆の花に乗ってやってくるお盆・・・ですねえー。🍆大好き!
ツヤツヤではち切れんばかりの採れたて茄子。
さて、これからどう料理してやろうかとわくわくするやつ。
浅漬け、鴫焼、味噌汁の具にもいいなあ。
武者小路実篤の絵も最高じゃないですか。
だけど、やっぱりミョウバンをいれた茄子のぬか漬は格別ですね。
五臓六腑に染みわたる、ああ食いたいなあ。
文字化けした絵も、見てみたかったです。
ありがとうございました。