どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

どうぶつ・ティータイム(196) 『北軽井沢裏道さんぽ』

2016-09-26 02:39:16 | ドライブ

 

      サルビア越しの浅間山

 

  やっと晴れ間が見えた。

  ここ1,2ヶ月は太陽の姿を拝んでいないような気がしていたが、ともかく今日は青空を見ることができて幸せな気分だった。

  天気予報を頼りに金曜日の午後から出かけてきて、やっと日曜日に巡り会えた青空である。

  考えてみれば、庶民の幸せなんてこんな程度でも満足するのだから、安いもんである。

  はやる心を落ち着かせて、ちょっとクルマを出してみた。

  いつもの野菜販売所で野菜を仕入れながらという、実用の行動でもある。

  駐車位置にきっちり停めて、しっかり前方を見やると、真っ赤なサルビア越しに秋夏双方の雲を戴いた浅間山が雄大に裾野を広げていた。

 

     すすき越しの白根山

 

  いやあ、いい景色だなあと声を上げ、反射的に後ろの草津白根の方角を振り返ると、なんとこちらはススキ越しに秋の風情。

  もたもたしているうちに早くも冬の足音が聞こえてきそうで、心が急くような不安感に陥った。

  帰るときは水ドメしていこうか、いやいや流石にまだ大丈夫だろうなどと、余分な心配をする始末だった。

 

     噴煙を思わせる浅間の雲

 

  昨日あたりから、軽井沢では各国の経済相が集まって経済サミットなるものが行われているらしいが、どんどん観光客のクルマが上がってくるところを見ると、大した規制はないらしい。

  少しばかり用事もあるので軽井沢へ行ってみようかと思ったが、何年か前に見た中規模噴火を思い出させるような雲の形に、どうやら今日はよしとけと言われたような気がしたので断念した。

 

     嬬恋村の野菜運搬車

 

  それで思いついたのが、北軽井沢のみならず嬬恋村に入り込んでのドライブ散歩だった。

  さっそく農道に入ってみると、いきなり野菜を運ぶトラクターに出くわした。

  荷物の中身はわからないが、たぶんキャベツじゃないだろうかと想像した。

  今頃はいろいろな作物の収穫が最盛期なはずで、とうもろこしも出荷を急いでいるはずだからなかなか断定はできない。

 

     嬬恋村の鬱蒼たるトウモロコシ畑

 

  もう少し先へ行ってみると、案の定とうもろこし畑が頭上から覆いかぶさるように迫ってきた。

  もしかしたら、この茂り具合は家畜の飼料用かもしれないと思い直した。

  人間様の食するとうもろこしは、もうちょっと背が低く柔らかい色をしているのではないか。

  よくは分からないが、経験がそのような囁きを送ってよこすのだ。

 

   

     廃業久しいリゾートホテル

 

  そのままクルマを走らせると、噂に聞いていたホーンテッド・マンションが出現した。

  日本流に言えば、幽霊屋敷。何十年も前に倒産して、そのまま買い手もつかずに朽ちていくばかりの、リゾートホテルらしい。

  さらに行くと、この物件の玄関が現れる。

 

     廃業ホテルの玄関

  

  この暗い入口の奥にフロントがあって、今でも「いらっしゃいませ」と声がしていそうで、昼間でも不気味な感じがする。

  それにしても、玄関の車寄せと思しきあたりにある物体はなんなのだろう。

  角度を変えて覗き込んでみると、どうやら放置されたままの外車のようだ。

 

     放置されたままのロールスロイス

 

  こわごわ確かめてみると、やはり埃がかかったまま何十年もそこに居座るロールスロイスのように見えた。

  それにしても人間のやることは恐ろしい。

  経費がかかると思えば、かつて栄華を極めたモノたちを放置しておくのだ。

  ホテルの建物にも、ロールスロイスにも輝かしい命があったろうに、それらを供養することなく見捨ててしまうのだ。

  南無阿弥陀仏。アーメン。

  心の中で成仏を願うのだった。

 

     北軽井沢「絹糸の湯」

 

  気分を変えて、数年前に開湯したばかりの立ち寄り湯に向かった。

  「絹糸の湯」は施設が洒落ていて、初めての印象はグッドだった。

  窓の外には露天風呂が見えて、つかの間の晴れ間に出てこいやと誘っている。

 

  

     露天風呂

 

  土日は混むようだが、たまたま人が途絶えた隙にパチリと収めた。

  この石は浅間の溶岩かな?

  地下1000メートルから湧出しているとのことで、足腰の痛みや捻挫、内臓疾患、病後の回復などに効果があると表示されていた。

 

  

     別の角度から

 

  最後に浸かった温泉がとてもよかった。

  草津も応徳温泉もよかったが、こんなに近いところにできた「絹糸の湯」は、これからのお気に入りになりそうだ。

  あてどもない北軽井沢裏道さんぽだったが、その気でうろつけばまだまだ見所がたくさん散らばっていそうな小ドライブだった。

 

     (おわり)

 

 

 

 

 

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2 コメント

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気分↑↑でした (tadaox)
2016-09-27 16:16:54
(知恵熱おやじ)様、お付き合いいただいてありがとうございます。
半年ぶりにのんびりしてきました。
天候不順だと行動が制限されていて、今回やっとでした。

フラフラ歩いていると、普段は森の中に隠されて見えなかったリゾート地の歴史が、風景ばかりではないワクワク感とともに現れてきて、気分↑↑の一日でした。
(これ、だれかの歌のタイトルでしたっけ?)

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架空の北軽便乗散歩を (知恵熱おやじ)
2016-09-26 20:30:41
窪庭さんのつぶやきと写真に勝手に便乗して、妄想を楽しませていただきました。

妄想の中身は明かしませんが、ともかく浅間の煙と雲の重なりを見て行動を決めるなんて、すっかり北軽の自然と体が特に考えることもなく反応して行動につながっていくんですねー。

その窪庭さんについてお化けホテルを覗き露天風呂まで・・・・満喫させてもらいました。

この夏小生はどこにもいかず都内で飲んだくれていただけの夏で、なんか貧しい感じだけど・・・おかげで妄想の中では北軽を歩いちゃった。

ありがとう!
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