花粉の魔境
今年は花粉の飛散量が昨年の十倍もあるだろうと予想されている。
昨夏の記録的な暑さでスギやヒノキの花穂が異常に生育したのが原因らしいが、花粉の時期になると悪夢のように思い出すことがある。
もう十年も前になるだろうか、中央本線の四方津(しおつ)という駅に降り立って付近の山道を少し散策してみようとしたときのことである。
桂川に沿った狭い畑道を歩いていると、近くの保育園から出てきた十五名ほどの幼児と引率の保母さんに出会ったのだが、全員が大きなマスクをしているのに驚かされたのだ。
「えっ、なに?」
いぶかしく思い首をひねりながら先へ進んだ。
ところが、杉林が迫る暗い山道に入るころになるとどうも様子がおかしい。目が痒くなり、くしゃみを連発し、頬っぺたがカーッと熱くなってただ事じゃないことに気づいたのだ。
この時すでに自分が花粉アレルギーであることを知っていたのだが、あまりにも急激な症状の発現に恐れをなし、あわてて引き返す破目になった。
『コモ四方津』傾斜エレベーターで評判になった町。・・・・四方津駅北側から銀色の索道で運ばれる理想郷とは反対の町道を選んだ罰か。
思いなおして四方津駅から上野原駅方面に戻る道をたどると、中央本線を横切って旧甲州街道に出る。
地形的に駅舎のほうが低い位置にあるから、国道へはゆるゆると登っていく感覚である。
振り返ると古い駅舎の島式ホームを挟む形で、上り下り二線の線路が延びているのが確認できる。
狭い旧街道を歩き出すと、左手には崖と斜面、右手には家並み越しに下方の川が見下ろせる。
旧甲州街道を行きかうトラックが風を巻き起こして走り去る。
いったん発症した花粉症は、そのつど反応する。くしゃみ鼻水鼻づまり、目蓋は下がり耳の穴まで痒くてしょうがない。
耳たぶでさえ霜焼けになったように疼き、発熱している。
何のことはない、舗装道路に溜まった花粉が舞い上がり舞い落ち、逃げ場のないまま繰り返し再生産しているのだ。
対岸に目をやると、当然のことながら山並みが続いている。
桂川はいわばU字谷の底にあって、国道も民家もやや駆け上がりにあるとはいえ谷の中である。
花粉は日に日に量を増し、今日の分、昨日の分、一昨日の分、一週間前の分まで合算して人間を苦しめる。
いやいや陣馬高原のサルだって、目やにと痒さに閉口しているかも知れない。
ああ、なんという悪夢。
一駅歩いて上野原駅に着く手前にあったコンビニに飛び込むと、三人いた店員さんが皆マスクをしている。
「いやあ、このラインは花粉が濃いねえ・・・・」
よくよく参った声を出したもんだから、店員の一人が目に笑いを浮かべながら、「皆さんそうおっしゃいます」
『コモ四方津』はよくぞ高台に街並みを造ったものだ。
傾斜エレベーターは朝夕のラッシュ時のみ運行されると聞いたが、多少不便でも住人は別天地で優雅な生活を送っているに違いない。
花粉の魔境などという奴は、風評被害をもたらすものとして槍玉に挙げられかねないが、一昔前にそんなことがあったということを思い出したので、思わず反応した次第。
劇症アレルギー男の見た夢として忘れていただきたい。
花粉アレルギーを持つ身にとっては、またも試練のシーズンがやってくる。その一端を覗かせてくれましたが、「理想郷」とか「傾斜エレベーター」は結局、住環境には必ずしも素敵なものではなかったようですね。
それにしましても、戦後、日本各地に杉の植林を奨励し後押しした当時の国の責任は、どのように受け止めてよいのやら。
花粉症がいつまで経っても治らない小生なので、この季節になると、忘れようにも忘れられません。
しかし、お金持ちがどんなにお金をかけても治癒しないところが、せめても慰めと申しましょうか。
こっちは多摩とか秩父の方から、もろに吹き付けてきそうでびびってるんですよ。
というわけで、せめてもの慰めに縋ってやり過ごすことにします。
こんな日本に誰がした。
林野庁も植物学者たちもみな専門家のクセして、植林計画を立てるときこういう悲惨な結果を予想出来なかったのだろうか?
地域それぞれの自然の植生よりも、経済効率という人間のご都合ばかりに目がくらんだのだろうが、許せないね。責任者出て来い。
私はまだそれほどひどくないのですが、わが家族は全員ひどい花粉症で季節になると大変です。
わが故郷の北海道は幸い花粉症の原因になる樹が少なく、内地(本州のこと)ほど花粉症が騒がれません。
場所によっては花粉症最盛期に「花粉症を避ける内地のツアー」を受け入れているところさえあります。
一種の転地療養でしょうか。
花粉症などという現象は外国にもあるのだろうか。日本だけのことなのかな。
誰か知っていたら教えて。
知恵熱おやじ
自然豊かな土地のほうが花粉症の危険が高いとは、なんか哀しいですね。
誰がこんな日本にしたんだ。
林野庁や植物学者は植林計画を立てる際、こういう事態を想定できなかったのだろうか。
もしそうだとすれば、専門家として能無しということになる。
経済性だけに目がいって、人間に対する想像力がかけていたのだろう。いや、山の猿や動物だって大迷惑している。
おい、責任者出て来い!顔見せろ。
でてきた何か下手な弁解でも言ってみろよ。
私はたいしたことないが、我が家は全員この季節花粉症で大変なんです。
知恵熱おやじ
自然豊かな土地のほうが花粉症の危険が高いとは、なんか哀しいですね。
誰がこんな日本にしたんだ。
林野庁や植物学者は植林計画を立てる際、こういう事態を想定できなかったのだろうか。
もしそうだとすれば、専門家として能無しということになる。
経済性だけに目がいって、人間に対する想像力がかけていたのだろう。いや、山の猿や動物だって大迷惑している。
おい、責任者出て来い!顔見せろ。
でてきた何か下手な弁解でも言ってみろよ。
私はたいしたことないが、我が家は全員この季節花粉症で大変なんです。
知恵熱おやじ
でも、北の大地はさほどでないというのは、やはり北海道は日本離れした国なのでしょう。
外国ではどうでしょうか?
あたしは一時、花粉シーズンになると、渡米しましたが、アラ不思議、機中、鼻ぐずぐずだったのに、彼の地に着いた途端、すっきりしたものです。
アメリカにも花粉症はあるらしく、それは杉の木から発するものではなさそうです。ブタクサという草花が危険だと聞いたことはありますが。
それにしも日本以外の国で、国策だか利益追求だかで、将来、害となる植林事業をしゃにむに進めたところはないでしょう。
自然に逆らうと、必ず反撃があるものですよ。