壊滅的な被害をもたらした関東大震災は、大正12年(1923年〉9月1日の正午近くに発生した。
来年、ちょうど100年目を迎えるのに合わせ、一足早く当時の体験記を掘り起こし、庶民の戦きに触れることも無駄ではないと思いこの稿を起こした。
日々どこかで大地の揺れが速報され、時には震度5強程度の地震が記録されるが、われわれは地震慣れしているせいか、さほど脅威と感じていないところもある。
学者や自治体は、首都直下型地震や東南海地震の脅威に備えるよう発信し続けているが、理屈ではわかっても悲しいことに実感が伴わない。
大事なのは、個人個人が肌感覚でつかみ取る情報ではないだろうか。
前置きはこのぐらいにして、ぼくが集めた資料の中から、リアリティ―のあるものを抜粋してみたい。
① 大地震の瞬間
小説家加島昌造が、この大地震に出会ったのは、赤坂の「沖津」という待合の一間においてであった。
朝方眠りに落ち、一度目覚めて蚊帳をたたんだ後、もう一度ぐっすりと寝込んでしまった。
<ドドドド、ドドドドという響きとともに、尻の下から突き上げるような劇しい振動に身をもまれながら、枕さがりに、ずるずると、寝床ごと滑り落ちていった。地震だな、とはっきり意識した時には、蒼穹が足もとに高く仰がれ、八畳との境の簀戸は、弓のように腰を曲げていた。すさまじい物音と埃っぽい匂い・・・・。波に揺られると言いたいが、それよりはずっと邪慳な、胸倉をとって小突き回されるような動揺のなかで、素早く身を起こし、片足、板になった畳へ踏ん張って、どうやら、敷布団の滑っていくのだけは食い止めた。・・・・>
(つづく〉
明治生まれで、東京や近郊で生活していた方々は、みなさん怖い思いをしたのでしょうね。
ぼくも母から、空襲の話とセットで何回か聞かされた覚えがあります。
先の東北大地震では津波の印象が強かったですが、関東大震災では火災旋風の恐怖が強かったらしいです。
タイプが違うので、いずれも記憶にとどめておかないといけませんね。
コメントありがとうございました。