「盗人に取り残されし窓の月」
この句の出典は生涯寺を持たなかった良寛禅師の作に拠る。
句意は「盗人はモノにばかり目が行って窓にかかる美しい月は盗んで行かなかったよ」といったところだろうか。
子供にも親しまれている良寛さんは生活に不可欠の茶碗ぐらいしか持っていなかったが泥棒はその茶碗まで盗っていった。
そんなものまで盗むほど世情は困窮しているのだろうか。
良寛さんは自分のことより世の中のことを心配している。
それはさておき、禅僧良寛の作は人々の心を掴んでいたのだろう。
すでに歌枕として定着していたのかもしれない。
芭蕉は良寛の意を受けて「盗り残されし窓の月」の句を残した。
貧しい人からもモノを取っていく盗人を咎めるのではなく、盗んでいけなかった窓の月の美しさに禅の神髄を感じ取っていた。
良寛といい芭蕉といい、先人の心の在り方は素晴らしい。
因みに「月」は秋の季語で月を詠んだ名作は秋に集中している。
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