どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

どうぶつ・ティータイム(33)

2007-12-21 00:43:25 | エッセイ

     身軽に生きたい
 
 三週間ぶりに北軽井沢へ行ってきた。
 東京での生活は最小限のもので済ますつもりなのだが、それでも足りないものが出てきて取りに行ってきたというわけである。

 長いこと生きていると、物がどんどんたまってくる。
 上手に捨てていけばいいのだが、いつかどこかで使うことがあるかもしれないと思うと、つい決心が鈍る。
 物のない時代に育ったこともあって、捨てかけた手がいつの間にか保留の分類に向かいがちなのだ。

 シンプルライフが望みなら、身の回りのものはできるだけ少ないほうがいい。
 頭でわかっていても、一気に体の垢を洗い落とすことは難しい。だから、吟味しながら捨てるしかない。
 捨てるという行為は、なかなかエネルギーがいるものだ。
 今回のように、やっぱり必要だと思うものが出てくるからなおさらである。

 誰か偉い先生が言っていた。「旅行に出るときと一緒で、スーツケース一杯の物があれば生きていける」と。
 たぶん、その通りであろう。
 物がないほうが、より工夫する心がはたらいて活性化するものだ。

 考えてみるとここ数年でさまざまなものを燃やした。
 ものを捨てる方法の一つである。
 都会ではそれができないから、山の中で枯れ枝とともに古雑誌や不要の家具を燃やし、その火力でお湯を沸かし、味噌汁や焼き芋を作っている。
 自分なりに資源の活用を図っているつもりだが、リサイクルの主旨からは外れているのかもしれない。

 捨てることで得たものもある。
『火は縦に燃える』と知ったこことも、その一つだ。
 焚き火の極意を会得すれば、生木どころか濡れた薪でも、抜いたばかりの草でも燃やすことができる。
 近頃の石油高騰を嘆きつつ、それらがなくなっても生きていけると思えるのは、なかなか気分のいいものである。

 行き帰りに浅間山を見た。
 この山は季節ごとに衣装を変えているが、見るからにすっきりしている。
 外側は変化しても中身はまったく変わらない。
 これぞシンプルライフ。日々捨て去り、同時に生み出している。
 帰路、全身を雪のマントですっぽりと覆われた浅間は、神々しいまでに輝いていた。

 

 

 
 

 

 
 

 

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5 コメント

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優雅ですね (知恵熱おやじ)
2007-12-22 08:29:59

純白の浅間山、黒っぽい樹群に飾られて美しいですね。

雪は大地の雑多なものを隠して自然をシンプルにしてくれる。
たしかにわたしたちの生活も「シンプル イズ 
ビューティフル」なんでしょうが、なかなかそうはいかないですね。

思えば子供の頃はシンプルだったナー。
そして何があろうとも、毎日が文句なしに楽しかった。

歳かねー。こんなこと想うのは。
来年もよろしく!

知恵熱おやじ
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捨てるのって難しい (丑の)
2007-12-22 11:59:21
冠雪した浅間山、神々しいですね。
ヒトの雑念なんぞ拒否しているようにも思えます。
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丑の戯言 (捨てるのって難しい(続))
2007-12-22 12:10:20

(続きを書こうとしたら切れましたので)
それで貴ブログに共感したのは、物を捨てることの問題です。どこかの女流作家が「死ぬ前までには自分の持ち物をすべて処分するつもり」と書いていたのに、当方も刺激されたものです。
ですから、そのうちどんどん捨てて減らしていこうと心に誓ったものです。でも、その後、何も進捗していません。死ぬまでまだ間がありそうだからというのが自分への言い訳です。

しかし、お説のように物は溜まるばかりなので、早く決断し、処分し、身軽になりたいものです。
それには年末というのが最適の時期ですが、もう年の瀬。となると、また翌年越しですかな。
苦々しいコメントでスイマセン!
返信する
古馴染みの (misako)
2007-12-25 16:25:55
年賀状の整理をしていて見つけましたので一言です。
15日に未来派の祝賀会に行ってきました。
一言だけと思ったのですが二言三言になりました

返信する
おめでとうございます (知恵熱おやじ)
2008-01-01 02:33:34

いつも素晴らしい小説を読ませていただいており、ありがとうございます。

こんなにレベルの高いオリジナル小説を、しかも無料で読み続けられるなんて本当に贅沢なことです。

ありがとうございます。
今年もこの調子で素晴らしい小説を連発してください。
2008.1.1 知恵熱おやじ
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