ムラサキケマン
(城跡ほっつき歩記)より
ニュルニュルと穴から顔を出すマテ貝のように
海藻とともに揺れるイソギンチャクのように
ムラサキケマンが咲きはじめる
この地球には空と海と陸があるが
空から降ってきた生命のタネを
海が育て陸にもおすそ分けしてきた
海の恩恵をうけた魚や貝や海藻たち
陸にあがって動物や植物に進化したものたちは
それぞれに親和した姿を見せるのだ
ムラサキケマンは貝の化身
マテ貝が殻を脱いだ裸身の輝きに
目を細めた木漏れ日が四月の風を贈る
ゆらゆらと海藻がそよぐ野原だから
ムラサキケマンの進化は静かに進行する
咲き乱れた後ではイソギンチャクの夢想さえ
海と陸と空がグーチョキパーで戯れる
この目に映る永遠は永遠に永遠だろうか
ムラサキケマンは宇宙の火花となるのだろうか
それとも宇宙の意識の中心に立って
華鬘の記憶をたどるのだろうか
* 紫華鬘=仏殿に飾られる華鬘(けまん)に花の咲く姿が似ているとしてつけられた名前。
日照が豊富な場所ではやや赤みが強く、日当たり良好でない場所ではやや青みがかった色合いとなります。
春先から梅雨時の初めころまでに開花しますが、夏前には結実し子孫を残すとさっさと消滅してしまいます。
まれに群生する場合もありますが、けっして一大群落を形成するようなことは少ないようです。
アルカロイド系の猛毒成分を含み、動物などからの食害を防ぎますが、その反面耐性を持つウスバシロチョウの幼虫にとってはとても大切な揺りかごとなっています。
自然界の強者でありながら、その強権をいたずらに振り回すようなことはないようです。
一方おなじケマン属の仲間でも、ヤマエンゴサクの場合には、昔から民間療法の薬草として珍重されていたりします。
およそ生き物には必ず応分の役割が備わっているという自然界のしくみに改めて感じ入ります。
翻ってヒトの営みはどうかと問われると、生態系のバランスを損なう所業の数々を目の当たりにして暗澹たる気持ちとなります。
いつも画像のご利用、ご紹介ありがとうございます。
「海と陸と空がグーチョキパー」だなんて
詩人にかかったら何でも異化されて面白くなってしまうねー
参った!
説明で毒性アリと訊いてガッカリした経験があります。
食べるようなことはしませんが、
よく見る植物に毒のあるものがあって意外に思うことがあります。
ムラサキケマンにアルカロイドが含まれているとは驚きです。
それにもまして、ウスバシロチョウの幼虫がそれを食して育つという話は、いっそう驚きです。
昆虫と植物の知恵比べに、何度感銘を受けたことか。
対立するだけでなく、突拍子もない手段で誘ったり罠にかけたりして、自分の種を残そうとする実相に、自然界の不思議を感じさせられます。
それに比べ、知恵のない人間の所業・・・・お嘆きのコメントに共感するばかりです。
今回も画像の拝借、ありがとうございました。
海と陸と空のグーチョキパーは、結論を言えば三すくみなんでしょうね。
津波、洪水、台風など人間にとっての自然災害も、大きく見れば親和のうち、宇宙規模の戯れと思うのですがいかがでしょうか。
いくら食べられてもいいように、夥しい数の子孫を残したり、刺をまとって食害を防いだり、植物の知恵には恐るべきものがあります。
そうした中、ムラサキケマンのようにアルカロイドを武器として身を守る植物はたくさんあるようですね。
言ってみれば、アルカロイドは植物にとっての伝家の宝刀、生物同士の攻防はほんとうに面白い。