檸檬
(季節の花300)より
女の子が爆発した
なんという絵空事か
こんな空想をしたのは 誰だ
悲嘆と嘔吐を一緒くたにして
世界を腰砕けさせようというのか
梶井基次郎の檸檬は 手榴弾だ
青春の甘い想念に驚いたものだが
女の子には甘える親もない
目には砂漠の色を浮かべ
絶望の影さえ よぎることがない
女の子が また爆発した
なんという空間だ
宇宙はいつ歪んだのか
アラーよ教えてくれ
時はそっけない素粒子の集まりなのか
湿気のある思想たちよ
ウェットな土壌に文字は健在か
かの国のレモンは乾いている
身体に果実を巻いた女の子は
哲学の崩壊を遂行しつつある
ベールは 真実を隠すため?
敬虔な広場には 虚構が忍び寄る
あらわな瞳は 何を運んだのか
陽炎のように揺らめく 女の子の影
痩せこけた二本の足に 地球が乗っている
煙とともに立ち昇る十歳の記憶
アラーよ この者をどこへ召しますか
虚構のできごとは 虚空へ撒きますか
時空の裂け目へと導きますか
メビウスの輪に血痕一滴垂らしますか
ああ すべては絵空事だよね
空に描いた戯画なんだよね
花火だってドドンと爆ぜるんだもの
女の子が爆発したって
この世の芯が吹き飛んだわけじゃないよね
* 梶井基次郎の『檸檬』は、青空文庫で読めます。
レモンと手榴弾の形は
色が違うだけでよく似てますね^^
女の子は
初詣で見かけた女の子のイメージでしょうか?
それとも銀河の小さな星のことでしょうか?
いや違う地球のことですね
いろいろと想像が膨らみます
新年早々エンジン全開のtadaoxさま
素晴らしい年になりそうな予感です
ありがとうございました
怒りも絶望さえも超えた詩人のやるせなさがひりひりと伝わってきて字面を追うのも辛いイメージの奔流
それでも事実に向き合って美しい言葉にしようとした詩人の意志の力に、ただ黙然
そうか「痩せこけた二本の足に 地球が乗っている」のか
日本の地下活動も、世界の世情も、活動期に入ったようですね。
レモンは形も中身も何かの象徴物。
八百屋の店先にも、丸善の本の上にも、アスリートの手の中にも、ステーキの皿の横にも・・・・。
コメントありがとうございました。
こうして日々の挨拶を交わせる国の人は幸せなんでしょうね。
紛争がどんどん身近なものになって、ついには言葉を発することができなくなる時代だけはいやです。
かつて我が国の人々も、口をつぐむという経験をしたはずですから・・・・。
コントありがとうございました。