枝振りのいい松を裏山から切り出し、庭に門松として飾る。縄をない注連縄を作り神棚に供える。座敷周りには縄を張り、所々に幣やミカンをつるす。これらは正月を迎える演出家としての父の役目である。子らは、その作業を心躍る気持ちで観ていた。そして大晦日には、上段の間でそろって父の挨拶の後、母手作りのお節を食べる。新しい足袋と下駄が父から配られ元旦を迎える。
こうして一家の祭事を取り仕切る父の姿を頼もしく観ていた頃が懐かしい。そのころの父の齢を遙かに超えたが、孫にお年玉をあげるくらいしか正月の出番がない、、、。