千里山ブラウズ

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まくわうり

2008-09-03 14:12:52 | 千里山花物語り

 梶井基次郎の小説『檸檬』を気取ったわけではないのですが、この本の上に乗せた黄色い果実は昔懐かしい「まくわうり」です。阪急千里山マーケット内の「とらや」さんに夕飯の買い物に行くと、見覚えのあるこの果実(或いは野菜というのか)が一個100円でたくさん売られていました。子供の頃にまだ自分の家の畑でメロン(しかもブリンスメロン)が栽培されていなかった頃に、この「まくわうり」は「まっかうり」と言われて僕らの大好物だったのです。少し瓜の青臭さが残る独特の芳香のなかに仄かな甘味が感じられ、特に果肉の中央にある種をくるむ柔らかい芯の部分が甘味が強かったのを憶えています。いつの間にかおそらく西洋種の豊熟なメロンに押されて、その姿は田舎に帰った時でもめったに見られなくなっていました。
 レジのご主人が近くの初老の男性を指さし、「この人が持って来てくれるんよ。」と言われた方を見ると、前歯が無くなった日焼けした顔で満面で微笑まれています。
「お父さんが作られているのですか?」
「そうよ、亀岡から持ってきてるんよ。」横には茄子やオクラの袋も一緒に盛られているのに気が付きました。
「子供の頃に良く親父が取ってきて食べさせてくれました。もっとはっきりした縞模様があったように思います。でも本当に懐かしいです! 」
「ほうで。」とおじさんは飄々と笑っています。
 帰って夕飯の後で2つに割り半分食べてみると、想像していたよりも甘味が少なく物足りなく感じました。でも昔はそんなものだったのかも知れません。今は果物も糖度を競う傾向がありますので、それに現代人の舌が慣らされていつの間にか仄かな味わいを忘れ去ってしまっているのかも。明日もう半分をお腹の空いた食前に食べてみる積もりです。