神奈川県川崎市多摩区桝形の生田緑地内に白を基調とした川崎市市立美術館「岡本太郎美術館」(Taro Okamoto Museum of Art,Kawasaki)はある。芸術家「岡本太郎」氏より川崎市に寄贈された作品1779点を所蔵・展示している美術館で岡本太郎の死後3年後の1999年に開館した。延床面積4993㎡の館内には岡本太郎の芸術作品、著作、パフォーマンス、フィールドワーク等の軌跡を伝える展示環境備え、芸術活動の分野や内容、作品の特徴や形状、時代ごとの傾向など、独自の空間によって構成されている。各ゾーンでは作品を映像・グラフィックで見せる空間構成され、照明効果・映像の演出がなされており従来の美術館の鑑賞するものではなく岡本太郎の世界を体験できる展示空間となっている。今までの来館者数1,449,010人。太郎氏といえば大阪万博の「太陽の塔」が有名だが、右に水が流れる石段を上っていくと「大地に深く根ざした巨木のたくましさ」、「ゆたかでふくよかな母のやさしさ」、「天空に向かって燃えさかる永遠の生命」をテーマとして製作された全高45mのシンボルタワー「母の塔」が聳え立ってている。そばに「カフェテリアTARO」もあり美術館全景を眺めここで寛ぐのもいい。(1901)
上野恩賜公園内の一角に一昨年ユネスコ第40回世界遺産委員会はフランス政府が日本を含む7か国と共同で推薦していた「ル・コルビュジエの建築作品」の一つとして世界文化遺産となった「国立西洋美術館」はある。この建物はル・コルビュジエが日本に残した唯一の建築作品でピロティー、スロープ、自然光を利用した照明などル・コルビュジエの建築的な特徴がよく表現され日本の戦後建築に大きな影響を与えた顕著な建造物である。ピロティーとなっている1階の正面入口から建物の中心となるメインホールに入るとスロープで2階の展示スペースへのぼり、回遊できる設計となっている。当館はル・コルビュジエが長年追求してきた「無限に成長する美術館」構想を実現した美術館の一つである。館内も素晴らしいがさらに前庭にオーギュスト・ロダンの作品「考える人」、「カレーの市民」、「アダム」、「エヴァ(イブ)」、「地獄の門」とエミール=アントワーヌ・ブールデルの「弓をひくヘラクレス」などの凄い彫刻作品がひと際目を惹く。(1812)
鎌倉市雪ノ下に長い板塀が目を惹く大豪邸、「川喜多長政・かしこ夫妻」の旧邸宅に鎌倉市が映画文化の発展を期して2010年に開館した「川喜多映画記念館」はある。建物は平屋建ての和風建築で数奇屋造りを表現し、板塀もかつての面影をそのまま復元した。記念館前の庭園内には遊歩道が設けられ古都鎌倉の環境に見事に調和している。その庭園は今、色とりどりの「アジサイ」で彩られいかにも古都鎌倉らしい雰囲気を醸し出している。館としては映画資料の展示、閲覧、映画上映はもちろん、講演、講座を行っている。かつて旧川喜多宅は映画人交流の場でありアラン・ドロン、ミレーユ・ダルク、田中絹代、今日出海、笠智衆など多くの人が訪れている。(1806)
町田野津田町にユトリロ・ロダンの作品ばかりを展示している「西山美術館」(ナック会長西山由之氏個人所有)ある。入り口にはどっしりとした寺院の山門のような黒門を入ると約6千坪の敷地にまず入口前には色とりどりの銘石を配した5階建ての美術館がある。1階が受付、2階、3階が「ロダン・銘石館」、4階と5階が「ユトリロ館」である。彫刻はロダンの作品52点、絵画はユトリロの作品76点を展示している。作品は音声ガイドを聞きながらゆっくり鑑賞できる。1点1点どれも有名なフランスの作品ばかりで見応えがある。以前訪れたフランスの美術館を思い出したがこれが個人コレクションとは驚きであった。美術館の右横には新しくできた「開運神社」がある。美術館背後や周囲にはつつじ、梅、松、桜など130種、300本が植栽され、和の庭園や、裏には畑地の奥には自由の女神像を配した滝がある。2階の喫茶店では40万円のマイセンの器で美味しいコーヒーを頂きしばし優雅な気分浸る。(1806)
東急大井町線上野毛駅そばの世田谷上野毛の閑静な住宅街の一角に東急電鉄の元会長・五島慶太翁が半生をかけて蒐集した古写経、貴重な美術品など数々の所蔵品を公開する目的で昭和35年(1960)に開館(設立)された「五島美術館」はある。王朝貴族の建築様式である寝殿造の意匠を随所に取り入れた本館建物も素晴らしいが今日は慶太翁が日課として散策したという「庭園」にお邪魔した。敷地は庭園を含めると約6000坪。多摩川が武蔵野台地を浸食してできた国分寺崖線の傾斜部に位置することから庭園内は起伏に富んでいる。武蔵野の雑木林が多摩川に向って高低差30mあるという深く傾斜する庭園には「大日如来」や「六地蔵」、「石仏」、「石燈籠」が巧みに配置されている。東屋のそばに「上野毛のコブシ」や各所に「ツツジ」、「枝垂桜」などが多彩な花を咲せ四季を彩る。散策路には「春山荘門」、蓬菜池傍に「赤門」、庭園中央には明治時代に建てられた茶室「古経楼」、慶太翁が古材を使用して作らせたという立礼席「冨士見亭」がある。紅葉がまだ残る庭園は美しく見応えがあった。(1612)